「め゛――ぢゃぁぁあああああん!!」
 城の中に入っても、カイトはまだマフラーを引っ張られ、床を叩いていた。無様である。
「ええい、喧しい!黙れ、黙れ、黙れ!非常に不快だ!」
「死活問題だがら゛っ!」
「五月蝿い!せめて連絡でもしなさいよね!驚くでしょ?」
「臨時に来ることになったから、連絡する時間はなかったんだよぅ。あ、これ、お花」
 廊下の真ん中でぱっとマフラーを離し、メイコは仁王立ちで腕を組むと、カイトをにらみつけた。苦しそうにのどを押さえてマフラーを直すと、カイトは立ち上がって簡単に用件を伝えようとした。すると、メイコはふと思い出したようにカイトが話すのを制して言った。
「あ、ありがと。…そういえば、あの金髪男の子(娘)アンタの連れ?一日にそうそう招かれざる客なんてこないものね」
「あ、そう、それ!こう、蒼い目で、ちょっと生意気で、誰にでもタメ口で、偉そうで小さい!」
「アンタ、そんなにあの子に不満があるの?…ってことは、あの子もヴァンパイアね。こっちに来なさい」
 スタスタと歩き出すメイコをみて、少しあわただしくその後をついていくカイトは、人間界に来てから格好の悪いことばかりである。背負い投げを食らわされ、マフラーを引っ張られ、暴言をはかれて何も言えずしりにしかれたようにおどおどと後ろをついていって、男としての威厳も何もない。
 そんなことを考えながら、すこししょんぼりしながらカイトはメイコの後をついていった。

 半泣きでレンはやわらかいソファに埋もれそうになりながら、
「わ、わかった、わかったからっ!と、友達になるなら、やめろ」
「いや、そう言って後でいなくなるつもりかも…。今のうちに辛さを覚えておいたほうがいいよ!さっ!」
「ぜぇっっっっっっっっったい、嫌だ。」
 ソファから抜け出し、追いかけてくるリンから逃げるべく立ち上がろうとするが、その前にレンがレンを捕まえる。
 姉に似ず童顔な少女の顔が近づき、レンはさらにソファに埋もれることになった。にやにやと悪い顔をするリンの手には、『アキバ』にでも売っていそうな、女性用のコスプレセットだった。猫耳、鈴、メイド服、尻尾。
 ここまで追い詰められると人は――レンはヴァンパイアだが――は、こんなにも冷静になれるのかというような冷静さで、レンは対応した。
「それ以上やったら、血ぃ吸いまくって殺す」
「そう怒らないでッ♪」
 一体どこでこんなものをそろえたのかはわからなかったが、兎に角、今、レンはこれまでにないくらいピンチだった。
 ついさっきまであんなにかしこまって大人しげな雰囲気だったのに、なんだ、この豹変振りは。
 そのとき、ドアを誰かがノックした。
「リン、はいるわよ」
「ち、ちょ、ちょっとまって!」
 忙しくクローゼットの一式を詰め込むと、リンは素早く扉を開いてメイコを出迎えた。
「何、どうしたの?」
「お客さん。――ほら、カイト。あの子でしょう?」
「げっ!カイト、なんでここにっ」
「何ってレンを連れ戻して来いって言われたんだよ。もう、ホント帰ってきてよ。せめて王位継承の儀だけでも!」
「それに出たらますます城から出られなくなるだろっ!絶対帰んない!」
「わがまま言うなって。…ところでさ、なんでそんなにボクにしがみついてるんだい?」
「保険と盾」
 保険と盾にされたカイトはわけがわからないというように首をかしげ、それからレンの髪を結ってやると、レンの目線に自分の目線を合わせるようにしゃがんだ。
「カイト…」
「レン」
 しばらく見つめあう二人は決して男女ではない。いうなれば男男である。
「ほんっと、帰ってきて。…怒られるんだよ…」
「泣くな!あぁ、もう!俺は絶対帰らないし、まして王位継承の儀なんて絶対、でない!」
「そういわないでよ!手ぶらで帰ったら、ぼく、殺されちゃうよ!!」
「しるかっ!」
 言うなり、レンはカイトの手を振り切って部屋を出た。
「れ、レン、どこにいくつもりさ?」
「しらん」
「えぇ?」
 ほぼカイトの話を無視してレンはすたすたと歩く。小さいなりに長い足は、素早く行こうとすれば案外早いもので、カイトはいつもより少し早く歩いた。後ろからついてくるカイトに見向きもせず、レンはどこに行くわけでもなく歩いていった。途中、カイトが何度か声をかけてきたが、全て無視して歩いていた。
 城を出て街中に入っても、レンは無言だった。
 がやがやと五月蝿い町の中の声や音。全てがうざったく思えていたが、それよりもレンに不快だったのは、時折カイトが声をかけてくることだった。
「ねぇ、レンってば」
「五月蝿い。黙れ」
「レーンー」
「黙れ、変体野郎。自重を覚えろ、自重を」
「そんな事言わないでよ。帰ろうよ」
「ふんっ」
 そっぽを向いて、レンはまた歩き出した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

遠い君 5

こんばんは、リオンです。
まず、報告をばっ!!
コラボ、立ち上げました!(ィェーィ)!!!
前に書きましたが、鏡の悪魔をアニメ化したいというコラボです。
どんな方でも大歓迎です!(おおっぴらに告知
次に、ちょっとお詫び。
前回、カイトが不憫だったのは、リオンがメイコさんの背負い投げを想像して、
おかしな笑いを浮かべながら書いたのでああなったんです。
許してください。ごめんなさい。全国のカイトファンの方々、
お許しを。
それでは、今日はこの辺で!
また明日!

閲覧数:371

投稿日:2009/12/06 22:21:24

文字数:1,995文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    その他

    こんにちは、周さん。

    コラボ、喜んで承認させていただきます♪
    つまりはアニメを作りたいから手伝ってください、ってコラボです。

    レン君はツンデレなんです。リンに対してはツンが四割、デレが六割です。
    カイトに対してはツンが九割、デレが一割です。

    では、次もよろしくお願いいたします!

    2009/12/07 16:58:13

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