UV-WARS・ヨワ編#027「実技試験その3~実演~」

投稿日:2018/06/01 19:01:27 | 文字数:2,580文字 | 閲覧数:27 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

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構想だけは壮大な小説(もどき)の投稿を開始しました。
 シリーズ名を『UV-WARS』と言います。
 これは、「紫苑ヨワ」の物語。

 他に、「初音ミク」「重音テト」「歌幡メイジ」の物語があります。

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UVーWARS
第三部「紫苑ヨワ編」
第一章「ヨワ、アイドルになる決意をする」

 その27「実技試験その3~実演~」

 厳かにモモさんの声が広がった。
「10分経過しました」
 ストップウォッチから目を上げて、モモさんは変わらず微笑んでいた。
「15秒後に音楽を流します。紫苑さんは準備してください」
「はい!」
 覚悟は決まった。
 自分で決めた自分のスタート位置に足を置く。
 深呼吸をして、周囲をもう一度確認した。
 右45度前方1メートルにマコさん、左45度前方1メートルにルナさんが立っている。
 ルナさんは一度振り向いてわたしにウィンクした。さすがにモモさんとマコさんに見咎められて、ルナさんは済まなさそうに頭を下げた。
 マコさんは後ろから見ると、キリッと真剣な顔をしていた。
「5秒前です」
 モモさんのひと言で、心臓の音が途端に大きくなった。自分の心臓の音が聞こえるほど緊張している。それはマイナスではない。
「緊張と上がるのは違うと思う。緊張は味方に付けるとプラスに作用するから」
 ネルちゃんの声が聞こえた気がした。
〔ありがとう、ネルちゃん。全力が出せそう〕
 音楽が、イントロが鳴り出した。
 わたしは右膝でリズムをとった。
 ボリュームが上がったところで、練習してきた踊りを始めた。
 歌が始まると同時に後ろに飛び退いた。
 斜め後ろに下がってくるマコさんを避けることができた。
 続いて、右に一メートル跳ぶ。
 ルナさんがバク転で下がってきた。その着地点はわたしがほんの少し前まで立っていたところだ。
 よし。触ってないし、触られてない。
 サビになるまで、練習したダンスを披露した。
「ほう」
 ウタさんが表情を変えずに声を洩らしたが、わたしには聞こえなかった。
 最初のサビになる直前に、少し右足を引いた。
 今、左後ろ45度1メートル半先に、マコさんがいて、同じ間隔にルナさんがいる。
 マコさんの身体がスイングを始めた。それはサビに入った瞬間、大きな反復運動に変わった。
 わたしはタイミングを計って、その反復運動を横切った。
 息を吐く間もなく、その目の前でルナさんはトンボ返りをしていた。ちょっとでも前に出ていたら、間違いなく接触していた。
 着地の瞬間、ルナさんは少し屈んで、斜め上に飛び上がった。
〔今!〕
 そのまま直進できた。
 ポジションを確保したわたしはダンスを続けた。
 今のわたしはダンスのセンターにいるルナさんの左後ろで踊っている。マコさんはルナさんの右後ろにいる。
 次が最大の難関、間奏だ。
 サビが終わって間奏が始まると、ルナさん、マコさんの踊りが、アドリブのようにばらばらになる。
 マコさんは左右に大きく動いて、もしかすると分身の術が使えるくらいの素早いポージングで、一人を三人に錯覚させようとしてるみたいだった。
 対するルナさんの動きはジャンプを生かした大きく見える踊りで、わたしより高い身長とはいえ、踏み潰すように足が上から襲ってきた。
 身体をひねって一回転した。ギリギリでルナさんをかわしたのも束の間、マコさんが迫ってきた。
 後ろにジャンプして、マコさんもなんとかかわしたけど、間奏が終わって、曲はCメロに切り替わった。
 踊りを続けるには壁が近くて、動きが制限されるポジションに立っていた。
 予定していたのは左45度前方、二メートルのポジション。
 強引に移動したところは、マコさんの動線の上だった。
〔しまった。移動するのは転調してからだった〕
 マコさんの伸ばした右手が目の前を通過した。
 続いて回転するマコさんの身体に合わせて、その左手が襲いかかってきた。
 これを避けたら自分の踊りはできなくなる。壁際に追いやられて、立ち尽くしてしまう。
 だから。
 上手くいくとは思ってない。
 成功の可能性は低い。
 5秒、いや、3秒、2秒でいいから、マコさんの踊りに合わせて動く。マコさんの真似をする。
 決めた。この瞬間だけ、マコさんに付いていく。
 思い切り、飛んだ。
 回転しながら、マコさんが追いかけてくる。右は壁で、左はルナさんがジャンプしている。
 もう一度、思い切り跳ぶ。しかし、足に力が入らなかった。
 ぐんとマコさんが迫ってきた。正に目と鼻の先だった。
 態勢を低くして、もう一度、ジャンプした。
 危ない。マコさんの手が触れるところだった。
 このとき、ルナさんが少し離れた。
 横に一メートル飛んで、なんとかマコさんをやり過ごすことができた。
 ルナさんも徐々に離れていった。
 目標のポジションを遮るものはない。
 ちょっと遅れたけど、ポジションを確保できる。
 というのは思い込みだった。
 移動のタイミングがずれているので、二人の踊りを確認しないといけなかった。
 上からルナさんが降ってきた。
 左に避けたらルナさんにぶつかる。右に避けたら、独楽のように回るマコさんが待っていた。
 後ろに下がっていては、自分の踊りはできない。
 地を這うくらいの低さでくぐり抜けた。
 触ってはいない、と思う。
 できた。と、思うのは、まだ早かった。
 右足の踵が、何かに触れた。
 振り向いて、それは、マコさんの足だと分かった。
 とうとうやってしまった。
 気分が、モチベーションが、下降気味になってきた。
〔ネルちゃん、ごめん。わたし、ここまでだったみたい〕
 全力でいく、って言ってたのにね。
 ユアさん、エリーさん、偉そうなこと、言ってたけど、ごめんなさい。
〔最後まで足掻いて、見せましょう!〕
 エリーさんの声が聞こえた気がした。
〔そうだ。二人には伝えないといけないことがあったんだ〕
 マコさんに触れた足が重い。
 その足を引き摺るように、ポジションに立った。
転調した後のサビも後半で、もうじきアウトロが始まる。
 ここなら曲が終わるまで二人に触れることはない。
 気を取り直して、最後まで、踊り切った。
 曲が終わった。
 わたしは、二人の間、センターに立って、ポーズを決めていた。
 他にも方法はあったかもしれないけど、わたしがセンターの位置で、曲の最後を迎えるには二人に合わせて動き回るしかないと思った。 
 その結果だった。

(プロフィールはありません)

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