しんと しんと
よる がつもる
くろいもり の そのおく に
ひそ ひそ こえ が する
ある よる の こと。
森の奥に一人住まうは
亡國のお姫様
淋しさ紛らす唄の相手は
森に住まう夜啼鳥。
誰も知らない物語
密やかに紡がれ
そこでそのまま朽ちるのでしょう
遺されることもなく
「幸せで 幸せで
息が 止まってしまいそう」
彼女は謳う
遠い何処かの誰かに送る
コイノウタ。
ある日彼女は本当に
息が止まってしまったの。
美しい姿のまま
微笑みながらねむってる。
夜啼鳥ももういない。
物語は遺らない。
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