嘘が突き落とす水底


黄昏時 夕暮れ 影は伸びて
三人は夢に向かい
片手を伸ばしていたね
逢魔が時 隠れて 手を繋いで
いた彼と 隣の彼女は親友で

だけどそんな都合のいい未来は続かない
私が最期に見たその景色は
動きたくても動けないこの身体と
砂利の敷き詰められた鉄のレールで

私と 二人は 離れ 離れ 交わらない
彼の 思い出の中だけで 私 息づいて
彼女は 心を 痛め 癒し それでも彼自身には
近付け ない

時の流れだけ 誰もが抗えない
痛みは風化して 消えていくから
後ろめたさは消え 遠慮は要らないから
いつか彼女は踏み出すだろう

ある日 星空の 下では
彼女が泣いていた
建前と本音の狭間に揺れて
想いの氾濫は
燻り火を噴いて
過去 未来 今も 気持ちは同じ

やがて彼女は 踏み出す いつも いつも
夢見ていた
彼の隣で 手を繋いで 未来 歩くこと
想いを 受け止め 彼は その手
しっかりと掴んだから
認めて 良いよ

そして 呪縛から 逃れて
新しい道へ進む二人を見て
微笑んでいた
彼女の優しさも 彼の優しさも
私知ってるから
ハッピーエンドだね。

その時 私は 駆けて 駆けて
引き離して
だけどその手はすり抜けてく
「近付かないでよ」

どうして 私は 消えて 消えて
あなたに触れることさえ
出来ないの

やっぱり 二人を 思う 想う
その気持ちは
嘘で塗り固められていた
偽善 欺瞞だけ
さよなら 私は 海の 底で
何も感じないように
沈んで いよう



---------



ずっと続いてきた私と彼と彼女の三人の関係。
彼と私は恋人で私と彼女は親友。
これからも三人の未来が続くと思っていた。

でもそれは夢物語。
事故。偶然が幾つにも重なった結果、私は死んだ。
あれが無ければこれが無ければと考えても結局結果は今のまま変わらない。

死んだ私は二人の周りを彷徨い続ける。
私は彼女が彼と近付きたい事を知っていた。私たち三人はそれを知っての上での関係だった。
でもその均衡は崩れてしまった。

彼女は優しいから、彼の思い出の中で生きる私を思って踏み出さない。
でも優しさや後ろめたさはいずれ風化する。
それに対して一過性の感情の起伏に対して人は冷静になれない。

時は満ちて彼女は彼に踏み出す。
彼はそれを認めて、受け止めた。
彼女が思っていた時間、我慢していた時間を考えれば誰もがそれを認めるだろう。

私は嘲笑えんで--ほほえんで、二人を祝福する。
でも私の身体は正反対な行動を起こす。
醜い顔で、必死に二人を引き離そうとした。
でも死んだ私にはすり抜けて叶わない。

二人を応援するというのは私の体裁が生み出した幻想。
私は不運な自分が悲しくて、彼を盗られることが許せなかった。

ああ、だから私は今も二人の周りを彷徨い続けているんだろう。
嘘付きの私は海の底で何も感じないように眠っていよう。
いつか、風化して何も感じなくなるその日まで。
いつか、消えてなくなるその日まで。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

嘘が突き落とす水底

閲覧数:216

投稿日:2013/02/03 23:26:34

文字数:1,266文字

カテゴリ:歌詞

クリップボードにコピーしました