秘蜜~黒の誓い~






第三章    「漆黒ノ花嫁」





 少女の結婚式当日。



 前の日までずっと雨だったのが嘘のように、その日は見事な晴天だった。

教会にはたくさんの貴族が招待され、皆笑顔でいっぱいだ。

 その中でミクだけは、どこかぎこちない笑みを浮かべている。その日の彼女は、

実に美しかった。相変わらず黒いドレスで、頭にはベールをかぶっている。

そのうちミクは、教会の裏口から逃げるように出てきた。




 ミクは階段に腰かけると、ふっとため息をついた。

式はもう始まっている。今はミクの父親の、最初の挨拶の時間だ。




 ・・・・・・・"僕"は、そっと彼女に近づいた。

誰かいると気づいたのか、ミクは立ち上がって、壁に少し隠れてしまった。






 僕はもう少し彼女から見える位置に移動する。もう一度ミクに視線をおくると、

ミクは隠れていた壁から少し顔を出した。


 今度は目があった。


 僕は目を離さず、微笑みかける。


 ・・・・・・・・・やっと、君と同じ場所に立てる・・・・・・・・・





 教会が少し騒がしくなってきた。花嫁がいないのだから、当然の反応だ。

「・・・・・・こっち」

僕は彼女に手を差し出す。彼女も、多少戸惑ったようだが、僕の手に自分の手を重ねた。

 あの時、僕が彼女にそうしてもらったように、僕はそのまま彼女の手を握りしめた。







 「・・・・・・ミク!ミク!どこにいるんだ、ミク・・・!・・・・・・・ミク! !」

婚約者であろう男性が、偶然その場に来てしまった。彼のことは前に一度見ている

から、すぐにわかった。

「・・・・レオン・・・・・・・・」

ミクは小さくつぶやいた。もう時間がなかった。





 僕は彼女の目を見て言った。

「・・・・・・・・・・僕と一緒にくるか、彼と今ここで婚約するか・・・

 君はどっちがいい?」

いちかばちかの質問だった。でも彼女は、すぐに答えてくれた。

「・・・貴方と一緒に行く」

すばらしくいい展開だった。彼女は僕を選んでくれた。

彼女の手をもう一度強く握りしめると、僕は言った。

「行こう」

そして走り出した。


 遠くでレオンの声がしたが、二人は後ろを振り返ることなく、そのまま走り続けた。











 気が付くともう夜で、僕と彼女は宿をとってそこに泊まった。




 「貴方はいったい、誰・・・・?どうして私を、あの場から連れ出してくれたの・・・?」

彼女は最初にそう聞いた。僕は、それにどう答えればいいのか、わからなかった。

「今日はもうとりあえず寝た方がいいよ。もっと東の方へ行って、落ち着いてきたら

 話すから」

「・・・・・でも、名前くらいはいいでしょ?私はミクっていうの。貴方は?」

そうか、名前・・・・・・・そのことを忘れてた。

「あーーーえっ・・・と、僕は、・・・・・・レン・・・っていうんだ。

 そう、レン。レンだよ」

不自然なほど連呼してしまった。そっと反応をうかがってみる。

彼女は笑っていた。張りつめた空気が、一瞬にして溶かされたようだった。

「何回言うの、レンって。あはははははははっ・・・あー面白い、レン変なのー」

相変わらず明るい彼女を見て、少し安心した。それと同時に、

笑いがこみあげてくる。



 その夜は、二人でずっと笑いあっていた。








 翌朝。僕等は宿屋で地図をもらい、早くにその場所を出発した。




 列車や馬車で何時間も乗り継ぎ、僕たちはようやくシューモアという

街に到着した。この街は空気もきれいで華やかなため、観光客もたまにいたりする。



 そこで僕たちは宿をとった。昨日と違って、少しせまいが綺麗な部屋だ。

天蓋付きベッドに、レースのテーブルクロスがかかったテーブル。

ドレッサーも置いてあったし、窓からは街の風景が見渡せる。最高だった。





 さて、ここで、その夜僕がミクに話したことの真実を明かそう。





 ・・・・・・・・・・詳しくは言えないけど、僕は、君に会うまではもっとずっと

 遠いところにいた。どのくらいかって?うーん・・・想像がつかないくらい、かな。

 それはそうと、そんなある日に、あの街に来て、君を見つけたんだ。

 一目で恋しいと思った。だけど、君にはすでに婚約者がいた。

 でも僕は、君がその人のことを好きではないことを知っていたんだ。

 ・・・・・・だからあの日、僕は君の前に姿を現し、彼から君を奪った。

 とにかく・・・・・・・・・・君のことが好きだったんだ。








 僕は嘘と真を混ぜ合わせて、彼女に嘘をついた。

 僕が悪魔と契約したとき、・・・・そう、あの箱を受け取ったとき、私は・・・・・

最後にひとつだけ、ミクの記憶から天使の私を消してほしいと、頼んだのだ。

 ロンは初めこそためらったが、最終的には「成功するかわからないけど」と

言って、ミクの記憶から私を消してくれた。

 だけど、ロンは全てを消すことはできなかった。ミクの心の中には、かすかだが、

まだ私が存在している。そのうち思い出すかもしれない、とロンは言った。

それを覚悟の上、私は引き金を引いた。その瞬間、ミクは私を忘れたのだ。










 でも二人は、違う姿でもう一度出会った。

 今日この夜、僕は彼女に愛を告白し、彼女はそれに応えてくれた。




 あとはもう、夜から朝までの時間の中で、黒一色に染まるだけだ・・・・・・・・・























 朝目覚めると、すがすがしい光が部屋中に満ち溢れていた。

僕はシャツのボタンを閉めると、寝ている彼女の横顔をながめた。

 キャミソールのヒモは肩からはずれ、腕までおちている。ほうっておいたら

風邪をひきそうだと思い、僕はそっと毛布をかけてやった。その瞬間彼女の

目がピクリと反応し、やがてゆっくりと目を開けた。

「あれ・・・・・もう朝なの・・・・?」

起き上がると眠そうな顔をこすり、彼女はベッドから立ち上がる。

そして左手で髪を耳にかけた。その薬指には、白い花のついた指輪が輝いている。

僕が昨夜、あげたものだ。すぐにでも、彼女と誓いを交わしたかったのだ。



 「朝ごはん・・・どうする?向こうにパン屋あったけど、それ買って食べよっか?」

何気ない会話・・・・・・・・だったけれど、僕はこのうえなく幸せだった。

「そうだね。えーと、確か・・・銅貨八枚で足りる値段だったと思う」





 こんな幸せが、ずっと・・・・・・・・・・この先ずっと、続くものだと、思っていた。





 その日の夕方、ある人に呼び止められ、もう忘れかけていた出来事の

結末を聞かされた。

 そう、その時から、もっと注意すべきだったのだ。彼の性格は、

とうに見抜いていたはずだったのに・・・・・・・・・・・・・・・・・














 第三章 「漆黒ノ花嫁」おわり





   第四章につづく。



































































































ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

秘蜜~黒の誓い~  第三章

とうとう第三章です。

話にも進展があって、これからどんどん

ラストに持ち込んでいきます!(*^_^*)


期待していてください!!!

もし読んで、いいなーと思ったら・・・



ぜひぜひ、コメントください☆

意見でもかまわないです!


では、第四章も楽しみにwww

もっと見る

閲覧数:307

投稿日:2012/01/01 18:25:48

文字数:3,075文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました