白い壁。
暗い部屋。
何も変わらない。
平凡な毎日。
ただ眠るだけで、日々が過ぎていく。
退屈な日々の中で、自分の中の何かが失われていくのに、気づくこともなく、つまらない日々を繰り返していた。
けれどもいつしか、繰り返しの日々の中に君が現れた。
それから、少しづつ日々は変わっていった。本当に、少しづつ。
いつからだろう、彼のことが気になっていたのは。
最初はただ誰かに言われたから。
でも、いつからか自分の意思で…。
気がつくと、水が溢れていた。
受け止めたくても、受け止められない。
この小さな両手では抱えきれないほどの量。
こちらの動揺なんてお構いなしに、水はこぼれおち、流れていく。
救いたいのに、救えきれなかった。
ただ自分の無力さを、悔やむばかり。
『泣いてもいいんだよ』
ある日。彼の腕に包帯を巻いているとき、そう言われた。
「…どうして?」
「俺のことは気をつかわなくていい。泣きたい時は我慢せずに泣けばいい」
「……その言葉、そっくりのしつけて投げつけてやるわ」
「…」
「…」
お互いしばしの沈黙、なんとなくきまずい雰囲気。
彼は何を考えているんだろう。
最初に口を開いたのは私だった。
「はい、完成」
包帯を巻き終わった。
しかしさすが不器用な私というか…なんだかできあがりはぐちゃぐちゃだった。
「…ふっ」
「べ、別に吹かなくてもいいじゃん!」
「悪い悪い」
まるで子供扱いしているように、ムーっとふてくされる私の頭を、彼はなでる。優しく、暖かい。
私は彼の手の甲にキスをした。
この暖かさが失われるものだと、このときはまだ気づかなかった。
いつものように、彼のもとへ行く。
また、いつのものように眠っている。最初はそう思っていた。
彼が、もう目を覚まさないことに気づいたのは、もう少しあとだった。
ふと気づくと、彼は泣いていた。でもそれは私の涙がこぼれ落ちたものだった。
最初で最後の涙。
私は彼の×××にキスをした。
すべてが終わり、残るは水たまり。
まるでそれは、彼の分身。
思わず、花を一輪手向けた。
その水たまりに映る自分の顔は、なぜか幼く見えた。
ああ、昔のように、子供のように、泣けたら楽なのに。
グッと拳を握る。
その時、
『泣いてもいいんだよ』
彼の声が聞こえたような気がした…。
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