#9 足りない物、それは…
囚われていたレンは、檻から手錠付きのまま出されとある大部屋に呼び出された。そこに、頭に何かの装置を取り付けた男が立っていた。
???「ご苦労、ラボno.27。さて、鏡音レン君。君と少し話をする為にここへ連れてきた」
レン「アンタ、知ってるぞ!過去にAIの開発に大きく貢献してた天才科学者[ムージン・ラボメイカー]だろ!何故こんな廃屋でこんな無茶な研究なんかしてるんだ!!」
ムージン「おっとすまないね、それは私の偽名なのだよ。プライベートな所以外では基本その名前を使っていたものだが、まだ君には本名は教える訳にはいかない。まあそれはさておき、君から質問してみなさい。終わったらこちらの質問に答えてもらおう。聞きたい事、山ほどあるだろう…?」
これは元々レンにとっては好都合だった。限られた情報を持ち出せれば、この事件の解決、あわよくばマジカルノートに手を伸ばせるのでは…
ただ、こちらの情報を聞き出される事もある。幸いレンはまだ新人の調律員、そこまでトップシークレットな情報を持つほど権限が無い。
(いや、待てよ…)
少し頭をよぎるモノがあった。流石にそれにヒットするとは思え無いので情報を聞き出すのを先にした。
ムージン「まあ君が聞きたい事も大体分かるが、情報を交換する事に同意してくれるかい?」
レン「あぁ、受けて立とう。アンタが東洋の研究所から姿を消して約8年、何をしていた!?」
もう逃れられないぞ…
ムージン「そうか、それくらい年月も経ったものだな。まず話すべきは…」
リン「ありがとう、ここで車停めて」
ミク「ここが…」
目的の廃屋に到着した。何か変な音が微かに聞こえる。
カナタ「メロピィ、何か感じるか?」
メロピィ「んー… 機械音ばかりだね」
カナタ「とりあえず、少しづつ中に潜入してい…」
その時、レンの怒鳴る声が聞こえた。
リン「レン!!」
カナタ「あ、待て!」
もう遅かった。さっそく作戦が正面突破に変更された。
シャンラン「私達がバックアップするわ、あの子を追いかけて!」
ミク「あ、はい!」
どの道ちんたらしてる時間は無い。
…
リン「さっきはよくも… そこをどいて!!」
さっそく先程レンを攫った人型のロボに出くわした。
[カードスキル、緑の歌声M!!]
ダメージは入るようだが、やはり硬い。
ミク「やっと追いついた…」
カナタ「無茶すんな、沢山呼び寄せちまったじゃないか…」
リン「だって…」
サクマ「こんなに数が多いのか… 誰だ、製作者は!?」
サクマは周りの警備ロボを凝視する。動きが速く何かが書いてあるかが見えない。
サクマ「1体確実に倒したら教えてくれ、こんな高性能な機械作れる科学者なんて数える程だ!黒幕が炙り出せる!!」
ミク「はい!!」
最前線ではリンが突撃している。少しでも前に…
リン「そこをどけぇぇぇ!!」
[マジカルスキル、ソリッドサウンドDX!!]
リン「聞こえてる!?レン!!!」
もう何体も警備ロボを吹き飛ばしているのに自分も気づかないで、ただ、走り抜ける。
カナタ「…まずい、床がもろい!崩れる!!」
ミク「あぁ…ッ!!」
ミクも振り返る。が、もう届かない所で床板が抜け、カナタとシャンランと複数の警備ロボが落ちていってしまった。
カナタ「俺達なら大丈夫、先に行って!!」
もう迷う時間もない。ミクはきびすを返しリンを追いかける。
レン「…本当にそんな事が可能なのか?」
ムージン「もう80%事は進んでるのだ。必要な計算式、攫った人間からコピーした記憶、今やもうこの媒体全てを動かせる絶対的エネルギーさえあれば完成するのだよ、[完全なる知能]が!!」
彼は膨大なデータをスクリーンに映してレンに見せる。レンには何がどうなってるのかまでは分からないが、本体がすぐそこにあるのを見ると完成間近なのはすぐに分かる。
ムージン「そして、この研究で必要とする膨大なエネルギー、可能性があるとすれば君たち国家調律員が有する[エナジー・サイリウム]であると私は判断した」
レンは驚愕した。まさか国家調律員最高機密の兵器の情報が漏れているとは…
レン「てめぇ!!どこでアレの情報を調べたんだ!!」
ムージン「とある知り合いからもらった情報だ。奴がどう手に入れたかなど私も知らない。ともかく、君なら[あの人]からひと足早くエナジー・サイリウムの情報を聞いたんだろう?」
まさか…
ムージン「さあ、エナジー・サイリウムのありかを教えてもらおうか。拒絶するなら、こちらも手段を選ばないぞ?」
そして別のモニターでとある映像を見せた。
レン「リン!!」
先程警備ロボの波に突撃して、とうとうガス欠し捕まってしまったのだ。
レン「おい!リンに手を出すな!!」
ムージン「ならさっさと情報を吐いてもらおう。まあ、逆に彼女も情報を持ってるかもな」
レン「やめろ!!!」
ムージン「まあ焦るほどの研究では無いからな、他の侵入者を確保してからゆっくり聞こうじゃないか」
そして警備ロボを呼び、檻に戻すよう指示した。
「あのヤロウ… こっちだって奥の手があるんどからな!!」
ミク「リン。どこいったの…?」
ミクは突撃したリンを追うもはぐれてしまった。幸い、サクマと一緒に居るのでサポートしてもらってる。今はロボの警備が薄い細い通路に避難してる。
サクマ「…この警備ロボを製作したのはクラウン社か。もしかしたら最近の異変についての手掛かりも掴めそうだ」
ミク「そんな悠長にしてる暇は無いです!!早くリンを見付けないとリンも人質になるかもしれないんですよ!?」
ミクも先程のリンにつられて必死になってる。
サクマ「場所が特定出来るまでは派手に動かない程度にしないと、君もその人質になるかもしれないんだ。出来ることを慎重にやろう」
しかし、どうやって場所を… と二人が考えてると、近くを見回ってたメロピィが帰ってきた。
メロピィ「こっちだよ!!ロボの数は多いけど、大きな部屋があってそこからロボと通信してる!!」
サクマ「本当か!?」
メロピィ「カナタとシャンランさんとは合流出来なさそうだけど、回り道もあるよ!案内するよ!!」
ミク「お願い!!」
メロピィは周囲の気配を全力で探りながら、目的地への道を先導していく。
______
カナタ「う、うぅ…」
穴に落ちたと思えば、立ちあがろうとした際に酷い頭痛が走る。
カナタ「何があった…!?」
そうだ、無数のロボに辺りを囲まれて…
あれ…?
シャンラン「どうやら、カナタには本当に宿ってるようだな…」
カナタは辺りを見回す。そこには、ピクリとも動かないロボの大軍が寝そべっていた。
カナタ「何だ、これは…!?」
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