きっかけがあった訳でもなく
理由があった訳でもなかった
ただただ気が付いたら
手にナイフが握られて
その鈍く反射する刀身に
自分の紅が付着していた
暫く傷口を眺めていると
気付いたキミは驚いてて
笑って声をかけてみたら
頬を思い切り叩かれてた
キミは胸ぐらを掴んで
泣きながら叫んでたね
「なんでこんな事を」
「死にたいんですか」
死にたい訳じゃなかった
でも否定ができなかった
「死にたい理由があるのか」
「生きたい理由がないのか」
そうキミに問われて
静かにそれに答えた
「たった一人だけでも」
「望んでくれるのなら」
それが生きる理由になる
「なら私が望みます」
「私は望み続けます」
泣きながらキミは
そう言ってくれた
物好きだなと思いながら
想われる事に嬉しくなる
「ごめん…」と言って
キミの頬に軽く触れた
キミの肌に紅い跡をつけながら
優しく微笑みながら静かに言う
「ありがとう」
(世界が拒絶しようと、キミが望んでくれるなら)
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