<ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎 最終話 真相>

(3日目・午後6:30付近・ミクの部屋)

ミク:やっと、全て解けたわ。早くみんなを集めなくちゃ。

ミクは室内電話からスタッフルームに電話をかけた。

レン:はい、レンです。なんでしょうか?。
ミク:レンさんですか?、ミクです。ちょうど良かったです。例の件、最後まで謎が解けました。すぐに関係者全員を談話室に集めて頂けますか?、真相の発表をしたいんです。
レン:それなら、資料を全部持って、すぐに談話室へ向かって下さい!。しびれを斬らせたメイコさんが私たち以外の関係者全員を集めて、あなたをどうするか会議してます!。任を降ろされたら、もうおしまいです!。
ミク:え!!、い、急いで向かいます!!!。
レン:私もすぐに行きます!。

事態は一刻を争っていた。ミクは本物の遺言状などが入ったA4ファイル等の全資料をかき集めて鞄に入れ、そのままの格好で談話室に向かった。

(談話室)

談話室にはレンとミク以外の関係者全員がいて、ホワイトボードにはなにやら色々書き込まれていた。

メイコ:では、皆さん、話し合いの結果と当旅館の事情により、ミクさんには遺言状の解明をあきらめて貰う事にしますが、宜しいですか?。
ミリアム:でもメイコさん、今日もミクさん、うちにお団子を食べに来てましたが、何かがわかったみたいでお団子を持ってすぐに帰っていきましたが?。
メイコ:時間がかかりすぎです!。いくら難解だからって、たった1枚で三日かかっても解明できないのでは、当旅館の事情を鑑みても遅すぎます!。また他をあたるか、当旅館のスタッフ代表1名に必死で頑張って貰うか、そうしたいのですよ。
ミリアム:しかし・・・・。

???:待って下さい!、今から説明致します!。

ミリアム:ミクさん!。
メイコ:わからないからって、テキトーな事言って誤魔化そうなんて事では、ないでしょうね?。

???:ミクさんの発表の信憑性は私が保証します。ミクさんは完璧に謎を解きました。

メイコ:レン!。本当なのね!?。解りました、あなたの名にかけて、これから発表して貰うことにしますよ?。いいですか?。
レン:はい。私の名にかけてもらって構いません。
メイコ:一応言っておきますが、これからのあなたの発表結果は、とてつもなく重要な事ですから、そのつもりで。
ミク:はい。解ってます。

メイコは一番最初にミクに見せた木箱を持ってきて、紐を解いて中を開けた。中にはあの(偽物の)遺言状が入っていた。

メイコ:発表内容に虚偽がないように、皆さんにも出来る範囲で原本との照合を行って頂きます。いいですか?。

メイコ以外の全員が頷いた。

メイコ:わかりました。じゃ、ミクさん、お願いします。

ミク:はい。

遂にラストバトルが始まった。

(談話室・結果発表)

ミク:まずこの遺言状の意味不明の文章部分は“暗号”でした。それを解くトリック部分が、その上の2つの文章、『いつもは右から左へ眺めていたが、今日は、左から右へ大地を眺めてみる。“花 又や 朝 変わらん”』、『いつもは上から下に目線を動かすが、今日は下から上へ空を見上げてみる。“青い上”だ』です。
メイコ:・・・原本の記載と同じね。続けて下さい。
ミク:そして2つを繋げる謎解明のキーが“ひらがな50音表”でした。

ミクはミリアムの店で買ってきた“ひらがな50音表パズル”を取り出した。これは既に完成されているものだった。

ミク:“いつもは右から左へ“というのは、このあ段の部分を切り取った箇所を右から左に読んでみて下さい。私たちが学校で習った、”あかさたなはまやらわん“、この事です。その裏付けは、”今日は左から右へ“の部分で読んでいる箇所“花 又や 朝 変わらん”の読み仮名からわかります。

ミクはホワイトボードに“あかさたなはまやらわん”と書き、その下に“はなまたやあさかわらん”と書いた。

ミク:見てお解りの通り、1:1対応です。つまりこれは『あ段がコレと同じようになるように、行を入れ替えろ“と言うことです。これからそれを実践します。

ミクはメモに書かれたとおりの順序に、50音表パズルを入れ替えた。

ミク:同じく、2行目も入れ替えのトリックがありました。『あ行を下から上に読んで、“あおいうえ”となるように、段を入れ替えよ』ということでした。するとこうなります。

同じく、ミクはメモに書いた“暗号解析50音表”の通りに、ピースを入れ替えた。

ミク:これが下の文章の“ひらがな暗号文字を入れ替える解析50音表”となります。
メイコ:・・・・・・なるほど。そういうトリックだったのね(やるわね・・・)。
ミク:有り難う御座います(あなたが作ったものなのに・・・さすがメイコさん・・・動揺すらしない・・・)。

ミクは、原本から写し取ったメモを出した。

ミク:これから、この意味不明の文章部分のひらがなだけを、この暗号解析表を使って解読します。時間がかかりますが、見ていて下さい。
メイコ:ちょっと待って、その部分の確認はさせて貰うわよ。
ミク:お願いします。

メイコはメモの文章と原本の文章を1個1個確認していった。

メイコ:間違いないわね。じゃあ解析お願いします。

ミクは1こ1こ、どれがどれで、という風に説明して、ホワイトボードに書き込んでいった。

(30分後)

ミクはホワイトボードの文字をペンで差した。

ミク:これがひらがなだけの解析結果です。見事にひらがなは全部変換できました。しかし、これだけではまだ不十分です。“カタカナ部分”の解析が終わってないです。そこで元の暗号部分を見てみます。カタカナは全て“2文字+濁点”で構成されてます。そして、全部ピックアップして2文字の後ろを見ると、ア行の文字だけになっています。

ミクはメモに書いてあったピックアップした文字をホワイトボードに書き写し、後ろの文字全部を囲んだ。

ミク:そして前の文字の事も考えると、ある法則が浮き彫りになってきます。その法則とは、この変換50音表を使って“変換出来なかった”ひらがな文字の部分に相当しているのです。つまりカタカナの2文字は、この50音表の“X軸Y軸”を表してます。

メイコ:X軸、Y軸?。

ミク:つまり前の文字は横、X軸、つまり行の文字の事、後ろの文字は縦、Y軸、つまり段の文字の事を表してます。この座標の交わる文字が、その部分に入れる変換文字となります。濁点はあるならその変換文字に付けることになります。
メイコ:なるほど、2段構えのトリックだったということね(くっ・・・)
ミク:はい。それを踏まえて1個1個変換していくと、全てのひらがな変換文章が完成します。

ミクは1個1個変換の説明をしながら、ホワイトボードのカタカナ部分を消していき、そこに変換文字を入れていった。

ミク:これが結果として出来上がったひらがな文章です。これを私たちが知っている漢字などに変換すると、この文章が完成します。

ミクはメモに書いてあった、漢字変換後の完成文章を書き写した。

ミクとレン以外全員が歓声を上げた。

メイコ:凄い!、これでやっとこ安心して眠れます!。ではこれを書き写して、財産分与の手続きに入りま・・・
ミク:待って下さい!、まだ終わりではないです。
メイコ:え!?、だってしっかりした文章が出来上がったじゃないの!?。
ミク:そう、“しっかりしすぎている”事に気づきませんか?。
メイコ:だって、ちゃんとした遺言じゃないですか!。日本語で説明された通り、関係者全員に行き届いた財産分与だし、なにか問題でもあるの!?。
ミク:この内容なら“暗号で隠し、解けるまでお預け”にする必要ないんじゃないですか?。普通の日本語で書けばいいことです。
メイコ:あなたは“暗号を解く”ためにここにいるんです。それ以上の詮索をする必要はありません!。
ミク:この書面、そのものも一種の暗号、つまり“謎”に含まれる事でしたら。私の仕事はまだ終わらないことになります。
メイコ:謎!?、まさかとは思うけど、この遺言状が・・・例えば“偽物”だとでもいうの!?。いくら何でも失言が過ぎると思いますよ!?。

レン:メイコさん・・・・私の方から、もう伝えちゃったんですよ。私が知っている真相を・・・・もうあきらめましょうよ。
メイコ:な!!!!、何を言うの!!、真相も何も・・・・。
レン:皆さん、本当に申し訳ありませんでした。“この遺言状”は、メイコさんが作った偽物です。そして、この“遺言状の解明”はミクさんのような第三者か、謎を知っている私が解く役割を担っていた、“私とメイコさんのシナリオ“だったのです。
メイコ:!!!!、嘘よ!、何を証拠に言っているの!。レン!、あなた、そんなでっち上げ話作って!。“あなたの名にかけて“って言った以上、ちゃんと証明出来なかったらどうなるか、わかっているの!?。
レン:その意見ももっともです。だからミクさんに“本物の遺言状”を貸したんです。そうですね?、ミクさん?。
ミク:そうです。これが“本物の遺言状”です。

ミクはA4ファイルから1枚の借りていた本物の遺言状を取り出した。

ミリアム:な・・遺言状が・・・二つ!。
レオン:おいおい・・・じょーだんがきついぜ・・・。
プリマ:アイヤー、こりゃ一大事アル!。

メイコは真っ赤になって心で憤慨していた。しかし、言葉に力を込めて、出来るだけ丁寧に言葉を吐き出すことにした。

メイコ:ミクさんにレン・・・。百歩譲って“本物の遺言状”とやらがあるとしましょう。でもその内容に問題があった場合、つまりそれが“偽物の遺言状”だった場合には、それ相応の事を二人にやって貰いますよ。もう、これは冗談では済まされない事ですからね。
レン:覚悟の上です。
ミク:受けて立ちますよ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎 最終話 真相

☆オリジナル作品第3弾である、「ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎」の最終話です。
☆今回で、温泉郷の話は終わりです。メイコさんとの謎解き決戦と、最後の話になります。
☆ボカロをキャラに使っているので、どろどろにならないようにしてみました。
☆ここまでのお付き合い、有り難う御座いました!。

***

☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5

☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1

閲覧数:748

投稿日:2010/03/02 18:28:46

文字数:4,086文字

カテゴリ:小説

  • コメント11

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  • 愛夢☆ソライト

    愛夢☆ソライト

    ご意見・ご感想

    私も推理小説大好き人間なので、読み応えがあって、面白かったです!
    久しぶりに、小説で頭使いました^^;読めば読むほど、小説の中に引き込まれそうってかんじで!
    それにしても、よくこんな難しい内容書けましたね;;私は、推理小説を結構読む方ですが、こんなに、難しいと感じたのは初めてです!心の底から尊敬します><
    とか言ってると、自分の書いてる小説が下手に見えてきました‥‥。自分も、もっと小説の勉強をしなければ‥‥!

    勝手ながら、ブクマさせていただきます!

    2010/03/16 14:56:00

    • enarin

      enarin

      ソライト・ユメ様、初めまして、enarinと申します。

      一連の作品をご閲読頂き、さらにご感想まで頂きまして、まことに有り難うございます!。面白かったとのことで、とても嬉しいです!

      今のところ、この温泉郷だけが推理物になるのですが、最初に考えた”トリック”と、続けて書いていった”シナリオ”が巧くはまってくれたので、良かったと思ってます。トリック自体がちょっと難しめだったので、投稿時期にやっていた”謎解き”では、100%解答者はいらっしゃいませんでした。トリックの謎解きって、難易度を高めにすると、細かいところで”矛盾”が生じてしまうため、結構、気を使う物ですね。今回使った”50音表”、”いろは”は、既に使う”素材”が出来上がっているものだったので、それにトリックを装備させ、それを”連想させるシナリオ”を付けていき、なんとか謎解きへ導くことが出来ました。

      4000文字×平均2P×約10話程度なので、字数的にはそれほど多くない1シリーズですが、逆に詰め込むために、展開がいつも速いのが、難点といえば難点ですね。

      それと、まことに勝手ながら、私もソライト・ユメ様をユーザーブクマさせて頂きました!。

      それではこのたびの一連のご閲読、コメント、まことに有り難うございました!。

      2010/03/16 18:17:40

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    とかげ三等兵様、こんにちは!

    こちらのお返事は個人メッセにて送らせていただきました。

    ご閲覧、コメント、ありがとうございました!

    2009/06/29 08:55:35

  • とかげ三等兵

    とかげ三等兵

    ご意見・ご感想

    とてつもなく遅くなりましたが「ゆけむり旅情・きのこ温泉郷の謎」読み終わりました!
    読む前は暗号解読だけがメインだと思っていたので解読後の展開にはびっくりしました。
    前作・前々作では頼れるアネゴだったメイコさんがこんな役だったとは…!
    でも些細な行き違いで起こったお話だったのですね。誰も憎めない展開で安心しました。
    ミクさんもさっぱりしているというか、いい性格のミクさんですね(*^^*)
    ラーメン10秒って…w

    しかし暗号にはまいりました。
    1つ目はカタカナで詰まり、2つ目は自分の凡ミスで詰まり…(笑)。
    特に1つ目、座標という考えは全く浮かびませんでした。
    チャイナドレスは「中華なのにイタリアンカラー」のツッコミ待ちだと思ってましたがまさか麻雀に繋がるとはw

    随所に散りばめられた小ネタにもニヤリとさせられました。
    “め~こ人形”も“LUKAちゃん人形”も“ちゃんばらセット”も売ってるこの温泉郷が羨ましい!笑
    最後の駅弁はどれも本当にある物なのでしょうか?名前だけで美味しそうですね。
    この駅弁を食べながら電車に揺られて帰るラストも映画的で好きです。

    そしてのろのろしているうちに新作が2つも…!
    GUMIさんも登場とは期待が高まりますが、順番通りに「鏡音時空探偵社」から読んでみようと思います(小ネタを逃したら残念なのでw)。それでは~!

    2009/06/28 19:09:38

  • enarin

    enarin

    ご意見・ご感想

    nonta様、こんにちは!

    > 楽しく読ませていただきました

    有り難う御座います!。作者冥利に尽きます!

    > 結果としてミクさんの出現により遺言状の誤解が解けるという、全体を通してのプロセスも良い感じでした

    どうもです~。これはミクさんの登場そのものが偶然であった、という某推理探偵物アニメ風でした。たまたまって形を取りますので。

    > この作品に相応しい見事な終わり方でしたね

    有り難う御座います!。これまで”謎解き”部分が強すぎたので、最後はいつもの感じに戻して、最後にシメました。今回は全部現実世界のお話なので、ファンタジーやSF要素は結局、ほぼ無かったですね。

    > ミクさんの食事が単なるキャラ立ちとしてでなくストーリーの重要なポイントになっていたのも見逃せませんね

    これは半ば”ストーリー展開していた結果”とも言えるのですが、そうなりましたね。あのお団子で50音表といろはの謎が解ったわけなので。

    > 楽しい作品、ありがとうございました。

    こちらこそ!。今回は短期決戦でしたが、とりあえず終わりました。

    これまでのご閲覧、コメント、有り難う御座いました!

    2009/03/23 13:03:56

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