寒さにかじかむ手に息を吐きながら、
大量の本を別教室へと運ぶ作業。
何故か私1人だけで作業を進めていて、
いよいよ愚痴がこぼれそうだったそんな時。

図書室のドアがゆっくりと開いた。
先生が来てくれたのかと、ぱっと振り返ると
そこにいたのは蓮くんだった。

視線がばちっと合い、
刹那ののち気が付いたように顔を背けた。


「同じクラスの、黄野坂(きのさか)……だよね?」


静寂を破ったのは蓮くんだった。

黄野坂凛(きのさか りん)。
それが私の名前。

「あっ、はい」

とっさに敬語が出てしまう。
不慣れな男子との会話と、ふたりきりの状況に
鼓動が少し速くなるのが分かった。

「ぷっ、何で敬語?」

笑いながら蓮くんが続ける。

「あ、や、何ていうか……」

返答に困っていると、蓮くんの目に
詰み上がった本が留まった。

ゆっくりとこちらへ近づきながら
ふーん、とつぶやく。

「何?これ全部黄野坂が運ぶの?」

詰み上がった本に片手をぽんぽんと置き、
蓮くんが尋ねる。

私は頷きながらそうだよ、と答えた。

またもや蓮くんはふーん、とつぶやきながら
その本たちを眺めた。
そしてそのうちの何冊かを抱えて、
俺も手伝うわ、と言った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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good-bye diary Page:4

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投稿日:2017/07/05 03:32:54

文字数:524文字

カテゴリ:小説

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