未来の地球。
その世界はどんな世界なのでしょう?

今宵は未来に生きる少年のお話をしましょう。



植物は枯れ果てました。
人は醜いですね。
壊すことしかしなかった。
今止めようとしている抗争・殺戮・テロなど、当たり前なのです。
そんな世界ですからね。
町なんて言うものは形なんてありません。
ただの瓦礫の山ですよ。
崩れさってしまいました。
人の姿も減ってしまいますよね。
死んでしまわないほうが珍しいですよ。

その少年はその崩れさった町を歩いていました。
深紅の身体を揺らしながら歩いていました。
少年はさらに深く壊れていくのでしょうね。
この地球のように。



少し少年の昔話でもしましょうか。

少年はですね、幸せだったのですよ。
愛する人とともにいることができていたのです。
幸運なのか不運なのかまだまだ壊れていなかったのですよね。
街も少年の周りも。

少年とその愛する人は写真を撮って飾っていました。
素敵ですね。
愛する人との大切な思い出です。
二人は手紙を送りあっていました。
恋の気持ちを書くだけでそれはそれは幸せでしょうから。
見直すととても恥ずかしくなりますがね。

そんな二人も簡単に引き裂かれました。

愛する人が殺されたのです。

もちろんその人だけではないです。
テロでしたよ。
別のものだったかもしれませんが。
その時からでしたかね。
少年が壊れたように見え始めたのは。


今、感情など無意味なものだと思っていますよ、少年は。
もういらない、ともね。
今少年には罪と己と欲望だけがあります。
自分の欲望のために動いているようです。

その欲望とは蘇生、愛しき人を蘇らせることでした。
その思いは表に出しません、決してね。
だってそうでしょう?
現実に押し潰されてしまうでしょう?
涙は流したくないでしょうから。


世界は消えてしまうのでしょうね。
夢だけ残って。
少年は弱かったのですね。
細い声で「何故」と呟かずにはいられなかったのでしょう。
故に壊れてしまったのではないのでしょうか。

少年は同情なんて求めませんよ。
正しいことがもう存在しない世界では何の意味もないですからね。
この世にあるものはもう、人間と己の戦いだけなのです。

ガラスの奥にあるあの紙も、焦げ目のついたあの文字も、耳についたあの鉄も、少年と愛した人の
記憶。

少年は思い出を見る度、こう思います。
「これがもし、おとぎ話なら僕の望みは叶うのだろうか。」
「これがもし、夢の国ならどうして早く目を覚まさないのか。」
「これがもし、死後の世なら早く出会いの旅に出よう。」


孤独な、凛々しくも悲しい少年は、ただ逆さまに少年自身を隠して裏だけを出し続けるでしょう。

少年は戦い続けます。
先に逝った愛しき人に土産話をするために、向こうの世界で恥じないように、ね。



少年はただ、戦い続けるのです。


願=幻/ネガイハマボロシ、に気付かないためにね。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

願=幻/ネガイハマボロシ

阿達 狂様の書かれた歌詞に丹雫様が曲をつけたものを聞いていた。
気が付いたら涙が零れていた。

だから書いた。


追記:句読点に関して修正、言葉を一言付け足し。

閲覧数:227

投稿日:2009/11/25 18:05:29

文字数:1,239文字

カテゴリ:小説

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  • ku-yu

    ku-yu

    ご意見・ご感想

    阿達様

    読んでくださってありがとうございます。
    貴女の書いた歌詞ですよ、本当に素晴らしい世界でした。
    うまく表現できずに申し訳ないです。

    2009/11/24 15:56:51

  • ku-yu

    ku-yu

    ご意見・ご感想

    ありがとうございます。
    私には引用する以外でこの悲しさを伝えることが出来ませんでした。
    なので、そのままな小説にしました。

    2009/11/23 18:25:57

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