「でかい・・・」
撮影場所は確かにここで合ってるはず。
でも・・・
「何階建て?」
でかすぎっ!!
うちの会社のビルより高さは高い!
それにデカイ!
もう一回手元の地図を見て場所を確認し、固唾を呑んで建物の中に入った。
目の前の白いドアをノックして、ドアノブに手をかけた。
「失礼しま・・・ぶっ!」
ドアが勢いよく顔面に直撃する。
「あ、ごめんなさい!!」
痛さのあまりうずくまる私の頭の上で、女の子の可愛い声が聞こえた。
「だ、だいじょぶです・・・」
「ほんとすみません!あたしってば・・・」
強く強打した鼻を押さえながら、顔を上げて女の子を見た。
長いツインテールの髪形で、大きな目は涙でいっぱいになっている。
制服姿で、高校生かな・・・
「大丈夫ですか?」
その時、声変わりを知らない高い青年の声が聞こえた。
それと同時に、私の右手がその青年に取られる。
「痛くないですか?」
「あ、はい・・・大丈夫です」
ほんとはすっごい痛いけど。
青い目と金色の髪は、日本人でないことは一目瞭然だ。
白い透き通るような肌と、少し長い金色の髪を上で束ねた容姿は、そんじょそこらの女の子も負けてしまうような愛くるしい顔立ちだった。
「それはよかった」
「え、あの」
男の子は私の前に跪き、右手の甲にキスをした。
「バカレン!!」
ぱしっ、と張り詰めた音が響く。
「いってぇ!んだよお前!!」
レン、と呼ばれた男の子は、私の右手を離し、叩かれた頭を撫でている。
「んだよ、じゃない!女の人、困ってるでしょ!!」
レン君の頭を叩いたのは、レン君とそっくりな顔立ちの、ショートヘアにカチュームをつけた女の子だった。
「女の人に媚び得るの恥ずかしいからやめてよね!」
「わぁーったよ全く・・・」
レン君は立ち上がった。
このレン君とそっくりな女の子と、ドアに私の顔面を当てたツインテールの女の子、どっかで見たような気が・・・
「鏡音リンちゃんと初音ミクちゃんだ!!」
この子達が、私以外のシンデレラモデルの子!
「あ、巡音ルカさんですか・・・?」
ツインテールの女の子、ミクちゃんは涙声で私に話しかける。
「うん!」
「やっぱり!写真で見たより全然美人~!!あ、このあたしに似た男がレン。双子なの」
ミクちゃんの前に、リンちゃんが入ってきた。
「・・・色っぽーい」
「キヨテル鼻血出すんじゃね?」
ミクちゃんはぽーっと私を見ながら、レン君は笑いながら言った。
「キヨテル?」
「そう!氷山キヨテル俺らの高校の担任!ヘタレ眼鏡!!」
眼鏡・・・
さっきの男の人の顔が浮かぶ。
まさか・・・ね。
「失礼します」
ドアをノックする音と、男性の声が聞こえた。
「ここで合ってますか・・・?」
ドアが開くと、スーツ姿の眼鏡をかけた男の人が・・・
って、え??
「痴漢の!?」
「は!?」
訊き方間違えた!!
「先生・・・?」
「キヨテル!お前・・・」
「してませんよそんな事!!」
三人は引いた目で男性を見ている。
「ごめんなさい・・・さっきはありがとうございました!氷山さんだったんですね」
「あ、はい」
氷山さんはさっきように優しく笑った。
「みなさん、準備の方お願いしまーす」
関係者だろうか。
男の人が部屋に入ってきて、私達を別の部屋に案内した。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

社内恋愛【部下の前に、女なんですッ!】 9

閲覧数:348

投稿日:2010/05/31 21:17:24

文字数:1,366文字

カテゴリ:その他

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