朝靄の野に立つ足先は、
鵐に濡れる露草に抱かれ悴むまゝに、
常しえに揺蕩うこころを繋ぎ閉ざす。

遥か遠く、ただ遠く広がる紫苑の空、
重なる雲は彷徨う。

あゝ風を切る鳥よ、大河を越えてゆけ。

ふわり、ふわりと浅き夢見し、
空に隠れた君を探せど、冷たき頬に現を覚え、
咽びし声に木霊すらなし。
ひとつ、ふたつと無心で数え、
時の狭間の終わりを待たん。

夕闇が匂えば星の宴。
破れた指に冷たき夜風がしみゆくままに、
現し世に漂うこの身を思い知らす。

移ろい流るる気色儚く、
散り際の花、懐かしき香を纏いて。

あゝ なれど今日もまた、
遠き空、夢を見る。

「愛し君よ。」

嬉や、嬉し、君の呼び声。
嬉や、嬉し、君の呼び声。
嬉や、嬉し、君の呼び声。
嬉や、嬉し、君の呼び声。

あゝ我も参ります。
大河を越えて、いま。


▽かな表記です

あさもやの のにたつ あしさきは
しとどにぬれる つゆくさに だかれ かじかむままに
とこしえに たゆたう こころをつなぎ とざす
はるかとおく ただ とおくひろがる しおんのそら
かさなるくもは さまよう

ああ かぜをきるとりよ たいがをこえてゆけ

ふわり ふわりと あさきゆめみし
そらにかくれた きみをさがせど
つめたきほほに うつつをおぼえ
むせびしこえにこだますらなし
ひとつ ふたつと むしんでかぞえ
ときのはざまの おわりをまたん

ゆうやみが におえば ほしのうたげ
やぶれたゆびに つめたきよかぜが しみゆくままに
うつしよに ただよう このみを おもいしらす

うつろい ながるるけしき はかなく
ちりぎわのはな なつかしき かをまといて

ああ なれどきょうもまた とおきそら ゆめをみる

「いとしきみよ」

うれしや うれし きみのよびごえ
うれしや うれし きみのよびごえ
うれしや うれし きみのよびごえ
うれしや うれし きみのよびごえ

ああ われも まいります
たいがをこえて いま

…………………………

<意訳>

朝もやに包まれた野にひとり立っておりますと、びっしょりと露に濡れた草に足先がかじかんで
その感覚が、この場を離れて行こうとする心を繋ぎ止め、再び体の中へと閉じ込めます。

明け方の空はただ遠く広がり
流れる雲も行き場をなくしてさまよっているかのようでした。

ああ、風を切って飛ぶ鳥よ、どうかあの人のもとへ行き、この想いを伝えておくれ。

ふわりふわりと夢の中を漂い、あなたを探していても
涙に濡れた頬の冷たさに、また目が覚めてしまいます。
むせび泣く声に答える者は、誰もおりません。
一日、また一日と無為に過ごし、この空っぽの時が終わるのを、私はずっと待ち続けています。

夜が来れば星たちが楽しげに輝き始め、冷たくなった風に痛む指先が、私が変わらずここにあるという現実を思い知らせます。
そして景色はあっという間に変わって行き、散る花の香りは、あの頃を思い出させるのです。

ああ、それでも今日もまた、私はここであなたのことを想っています。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

越河恋歌

閲覧数:367

投稿日:2013/01/09 02:30:11

文字数:1,278文字

カテゴリ:歌詞

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