親が帰って来た。めんどくさがりやで無気力の母はいつも私に仕事の不満や愚痴ばかり言ってくる。私は曖昧な返事をして聞き流すのだが、いつからか真面目に聞くようになっていた。
どうでもいい話。時間つぶし程度として聞いていたと思う。
母がいつも言うのは「嫌味の先輩」の話。出来なかったことに対して無駄に口を挟み、その分自分が間違ったらしょうがないで済ませるというらしい。話を聞いただけでうんざりしてしまう。
だが、そんな話を真面目に聞く自分もきっと馬鹿なんだと思う。
一方、父はいつも帰ってきていない。性格にいえば夜中に帰ってきて朝早くの出勤。
そのためここ一年くらい顔を見ていない気がする。母に一度、父は帰ってきてるか聞いたことがある。そのとき母は深刻そうな顔をして一応帰ってきてはいると答えた。
細かくは言ってくれなかったがきっと不倫というものだということらしい。
確かに、父のシャツにいくつかのキスマークがついていたような。
そんなこと信じたくはないが、それが現実なのだ。

母は帰ってくるとすぐに肉じゃがを作ってくれた。
そして、すぐさまソファの上で眠りについてしまった。疲れているのだろう、そっとしておくことにした。ご飯を食べ終わり、皿を片付けると自分の部屋に向かった。
リビングから自分の部屋まではすぐ着くほどの距離だ。
部屋に入ると壁にある小さなカレンダーが目に入る。
私は最近買ってもらったベッドに横になると天井を見つめた。
目を閉じればいろいろなことを思い出す。映画のように昔のことがスクリーンに映し出される。考えることは有坂のことだ。最近、有坂のことで頭がいっぱい。
学校祭でペンキを間違えて二人して怒られたこと、放課後に夕焼けを教室で二人で見たこと。思い出せばきりがないくらい楽しい思い出が沢山あるのだ。
いつかこの思い出を有坂と共有出来る日が来ればいいな、と無謀なことを願っているのだ。そんな日来るとは到底思わないが。
そんなことを考えているとだんだんと睡魔に襲われてゆく。
ぼんやりと意識が遠のいていくのが分かる。このままだったら寝てしまう、そう確信した。

目を開けると朝だった。カーテンからもれる朝の光を浴びながらゆっくりと身体を起こした。正直、朝は苦手だ。眠い気持ちがまだ続き、学校へ行く準備なんかやるきも起きないからだ。時計を確認すると7時前。いつも私が家を出る時間は8時ほど。
まだまだ時間の猶予があるということだ。
眠い目をこすりながら居間に向かった。母は昨日から体制を変えてないのか、ソファで気持ちよさそうに眠っていた。起こしたくはないが、朝食が食べたいし母を起こす事にした。
「お母さん、起きて」と何回か母の身体をたたく。母は3度目くらいに起きた。
母はおはようと小さくつぶやくと朝食を作るために台所に向かった。
ふと、目を洗濯籠に移す。白いシャツに真っ赤なグロス。
母のものではないだろう。だとしたら、きっと父のものだ。
私はシャツから目を背けるようにテレビに視線を移した。
母がつけたのであろう。とあるニュース番組が流れている。
銀行強盗、殺人事件、地震発生。どれもこれも自分の身の回りでは起こることがほとんど無くよく内容が分からない。あったとしても実感がわかずどっちにしろ分からないだろう。
そんなことを考えていると母はテーブルの上に朝食を置いた。
どうやら、出来たようだ。

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3話 おうち事情

3話です。
1話を見ていない方は一話から是非ご覧ください。

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投稿日:2016/05/20 18:19:13

文字数:1,406文字

カテゴリ:歌詞

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