☆*゜・。
奥間の前まで着いて、芽衣斗はもう一度確認するように二人のほうへ目を向けた。すると、驚いたことに平然としている怜のとなりで芽衣子が怯えたように震えていたのだ。
「だ、大丈夫か?」
「…。芽衣斗、演技よ、演技。こっちのほうがつかまっちゃったみたいでリアリティがあるかと思って」
そういって顔を上げた芽衣子は特に泣くわけでも怒るわけでもなく、平然としたいつもどおりの表情だった。それを見て芽衣斗は苦笑いすると真剣な表情になり、扉のノブに手をかけ、ゆっくりとその手を回した。
「遅かったじゃない。私を待たせるなんて、どういうつもり?」
ソファに深く座った黒髪の少女が芽衣斗に向かって苛立ちをあらわにした。
「その人は?」
可愛らしさのある女が芽衣子の方へ興味を示した。
「俺の妹だ。コイツを連れ戻しに来たから、ついでに捕まえておいた」
特にあわてる様子もなく、そう応えた芽衣斗の横で怯えたようにうつむいている芽衣子は、演技であることを思わせないほどの演技力で何故演劇団に入っていないのだろうか、と怜は場にそぐわないことを考えていた。
「そっちの少年は、妙に落ち着いているな」
「そうですか?こういう時って、案外冷静になれるものかも」
「ふぅん、いいけどね」
ソファの背もたれの上に腰を下ろし、座る部分に足を下ろして座った彼女は少しいたずら好きな印象を受ける。
「さあ、そのこを頂戴」
天秤座の姉弟が辿り着いたのは大きな古城だった。
古くなっているのか、扉も立て付けが悪く、いくら押しても開く気配がない。全くここに住んでいるやつらはどうやって中にはいっているのだろうか、それは不明なままだ。
「…ぶっこわす」
「中に人がいると危ないわ」
「…敵の心配してる場合じゃない」
そういうと、流騎は流香が一歩下がったのを見て扉に向かって勢いよく蹴りを入れ、宣言どおり扉を“ぶっこわした”。
中はがらんとしているものの、誰かが住んでいる形跡はいくつか見られた。まず、埃が積もっている場所と積もっていない場所があること、玄関に泥の後があることやキチンとライトがつくのだから、誰かがいるのだろう。
「…どこだ…」
そう言って、流騎が中へはいろうとしたとき―――。
「誰か、いるのか?」
声のほうへ眼を向けると、そこには黒く大きなツインテールと一束の青い横髪が印象的な女性が立っていた。その姿に、流香は大いに見覚えがあった。
「――朧瑚(るこ)?」
「…流香…か?」
「ええ…」
流騎は驚いて硬直した姉と向こう側にいる女性を見比べていた。
「もしかして、流香、お前はそっち側か?」
「――そっち側って…まさか、貴方が流騎たちの仲間を?」
「…来い。仲間のところに案内してやる」
「あ、ちょっと!」
すたすたと歩き出す朧瑚を見ると、流香もそれについて走り出すが、朧瑚のペースは早く、走っていないと朧瑚を見失ってしまいそうだ。それに気づいた流騎も急いでその後に続いた。
急いでも疲れることのない、無限かと思われるほどの体力を持った朧瑚はどこまで歩いても疲れるどころか息切れすらもせずに歩いていた。
「――ここだ」
地下へとおり、大きな鉄の扉を前にして朧瑚はそういった。けれど流香はその中へはいろうとはせず、朧瑚の腕をつかむと桃色のグロスをぬった口を動かした。
「…朧瑚。貴方が敵なら何故、私達をここに?」
すると朧瑚は無表情だった顔を少し柔らかくして微笑むと、誇らしげに言った。
「俺も星から生まれたからさ。たとえ出来損ないでもな」
「――出来損ない?」
その言葉に納得ができないのは流騎のほうで、思わず聞き返してからあわてて口をつぐんだ。
「いや、気にするな。入るぞ、足元が散らかっているから気をつけろ」
「ええ」
「…ああ」
二人が応え、朧古が扉を開くとそこは確かにコードや書類らしきものが異常なほどに散らばり、足の踏み場もないほどだ。
進むと見えてきたのは、透明なタンクのような機械だった。中には薄く青がかった水がためられていて、したから照明のようなもので照らされているようにも見える。タンクのようなそれはいくつも並べられていて、奥に進むといくつか流騎の目に見覚えのある顔が見えた。
「…あれは…」
「お前達の仲間だ。今は意識がない状態で、食事なんかを取らなくてもいいように、機械の中に閉じ込められている」
「…助け…」
「まて、俺に任せろ。変なスイッチとかあるんだよ。悪趣味極まりないな」
そういうと朧瑚は呪文をぶつぶつと唱え、跪くと両手を床にぴたりとつけて呪文を終えた。その瞬間、タンクの周りのガラスが大きな音を立てて割れたかと思うと中の水があふれ出てくるのを、朧瑚は瞬時に別の呪文を唱えて水が固まったようにとまった。
「流石ね。龍座の力は生半可なものじゃないっていうことかしら?」
「黄道十二星座じゃない星座からうまれても出来損ないだろう?」
「どうかしらね。この威力、私の力の比じゃないかもしれないわ」
「…皆!」
タンクの中から仲間を引き出すと、一人ひとりに声をかけて揺さぶり、必死になって起こそうとする流騎は健気ですらあった。
「それは、皮肉か?それとも、ほめていると受け取って良いのか?」
「…どうかしらね。その辺りは貴方の力量しだい、かしら」
その内、一人また一人と目を覚ましだした。
最初に目覚めたのは銀髪の女性。白(はく)と言って、明らかに顔色の優れないような感じだが、それが普通である。次は振真(ぷりま)という名の、黒い癖毛の少女で少し小柄。その後にはこの中では最年長と見える零音(れおん)、無表情な美里亜夢(みりあむ)。その後に色黒な杏、紫色の髪をした岳歩(がくぽ)、緑色の髪の大人びた染児歌(そにか)とすこし幼くこちらもまた緑の髪をした、還(めぐ)が次々と目を覚ました。
皆、目が覚めるやいなや、頭が痛いとでも言うように頭を押さえてあくびをした。
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ご意見・ご感想
リオン
その他
みずたまりさん
なんかすごいことになったはなったんですけど…ねぇ…。
ついさっき最終話を投稿しましたので、読んでおいてください。期待を大いに裏切ると思いますが(汗)
ネルは星座に当てはめるのが面倒だったんです。思いつかなかったんですよ。
芽衣子は凄い!!怜は凄い!!
展開がとても残念な結果に…
ハイ、以後気をつけます…。
2009/07/31 20:56:03