空回り / Karamawari
少し早めに家を出た
白いシャツが背中に張りつく
自販機で買った炭酸は
開けないまま汗をかいてる
手を振るには遠すぎて
目を逸らすには近すぎる
ちょうどいい言葉を探す間に
水滴だけが指をつたった
坂道じゃないのに息が切れて
向かい風でもないのに進めない
誰も僕を止めてないから
余計にちょっと腹が立つ
ペダルばっか軽くなって
景色はちっとも変わらない
カラカラ鳴ってる足元に
遠くの笑い声が混ざる
ひとつずつ歯がずれて
今日もうまく噛み合わない
ちゃんと前を向いてるのに
背中ばっか遠くなる
回ってる 回ってる
こんなに回ってるのに
手の中だけ冷たかった
それももうぬるくなった
冷房の効いた店を出て
熱気に一歩押し戻される
曲がり角の向こう側から
聞き慣れた声が近づいた
追いつくほどでもない距離
立ち止まるほどでもない距離
何でもない顔を作っていたら
信号だけが先に変わった
タイミングばかり気にしてたら
タイミングなんてなくなって
言わなくていいことだけ言えて
言いたいことだけ残ってる
ペダルばっか軽くなって
昨日と同じ場所を回る
少しくらいずれてたって
進めるものだと思ってた
ひとつずつ歯がずれて
音だけやけに大きくなる
誰も振り向いてないのに
ひとりで勝手に恥ずかしい
回ってる 回ってる
空ばっか広くなっていく
まだ開けてない炭酸を
理由もなく握り直した
夕方が長すぎるから
まだ間に合う気がしてしまう
影だけ先へ伸びていって
僕はそこから動けない
間違えたっていいのなら
どうしてこんなに難しいんだろう
青いままの信号の下
行く理由だけ探してる
ペダルばっか軽くなって
それでも足は止められない
カラカラ鳴ってる足元を
今日は少しだけ見てみた
ひとつずつ歯がずれて
きれいには噛み合わなくても
どこかひとつ引っかかれば
少しくらい進めるだろう
回ってる 回ってる
まだうまくは進めないけど
ようやく開けた炭酸が
思ったより強く弾けた
眩しくて目を細めた
それだけの帰り道を
いつか僕もあの頃は
青かったって言えるかな
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