俺は、リンが大好きだ。



<わんこ×にゃんこ.2-いぬのきもち>



 リンに触りたいなー、って不意に思ったけど、その時にはリンは病院に行っててうちにはいなかった。だから帰りを待ってる間に、リンの頬っぺたぺろぺろしたい!とか、あの細っこい体をぎゅーってしたい!って気持ちは膨らむ一方で、玄関前でうずうずしながらリンの足音を待っていたんだ。
 でも、早く帰って来てくれて良かった!捻挫なら、俺がずっと抱っこしてれば早く治るかなあ。試してみたいけど、…どんなものかな。リン、嫌がりそう…。うー。
 そんな事を考えながらもひとしきりリンを抱きしめたり舐めたりして、ようやく気が済む。その時には、腕のなかの体は疲れたように脱力していた。
 そういえば最近、俺の気が済む頃になると大体リンはぐったりしているような気がする。前はそんな事なかったのに、なんでかなあ?俺、別にリンに運動させるような事はしてないはずなんだけど。
 用心深く体を離すと、リンは精魂尽き果てたように床の上で丸まった。お昼寝モードに入ったらしい。
 本当は隣で寝たいけど、リンは独りで寝るのが好きだから怒られちゃうし…
 くあぁ、と欠伸をするリンを名残惜しく眺めてから、そっとその場を立ち去る。
 力無く床に伸びる尻尾は踏まないように要注意。なんでもかなり敏感らしく、ここに来た当時遊びで甘噛みしたら、思いっきり爪で顔を引っ掻かれた。怖かった。でもいつかもう一回くらいはふにふにしてみたい…。
 ふい、と俺は自分の手を見てみた。
 あと少し俺の力が強くなれば、リンの抵抗を押さえるくらいできるんじゃないかなあ。というか、リンがふにふにしても怒らないようになってくれたらいいのになあ。
 現状としてはリンからじゃれて来てくれることさえ稀。悲しい現実が俺の心を折ろうとする。
 しょぼんとして部屋を出ると、丁度廊下をこちらに向かって来ていたカイ兄とルカちゃんにはちあわせた。
 多分、リンが眠り始めたのに気付いたから行動を始めたんだろうな。だって二人ともリンとめーちゃんに獲物として見られているから迂闊に出歩けないんだもんね。下手すればちょっとしたおやつにされちゃうかもしれないし…いや、実際そんな事ないだろうけど。それでもカイ兄の尻尾がなくなったり、ルカちゃんの羽が毟られたりするくらいの事はあるかもしれない。

「あれ、レンくん」
「どうかしたんですか?落ち込んでいるようですけど…」

 優しい二人の言葉に、俺はしゅんとしたまま項垂れた。

 ―――リンに好きになって欲しいのに、どうしたら良いか分からない。確か前に、「女の子の気を引きたいならプレゼントがいいよ」、なんてことを聞いた事もあったけど…

 …ん?
 プレゼント?

 ふと頭の中に一つの案が閃く。俺にしてはなかなか良い案の様な気がする。
 俺は頭良くないし、気持ちを汲むってのも良くわからない。
 けど、リンに喜んでほしい。
 だから。

「…カイ兄、ルカちゃん」
「なに?」
「何でしょう?」

 言葉と共に細い尻尾がぱたぱたと動く。首が小さく傾げられる。ううん、確かにリン、こういうところ好きそう…

「二人をプレゼントにしたら、リン、喜んでくれるかなあ」
「「ひいっ!?」」

 びゃっ、と二人の毛(と羽)が逆立つ。
 けどそんなの些細な事だ。俺はもう一度、品定めをするつもりで二人を眺める。品定めって言ったって、何をどう定めるのかさっぱりだけど。

「だって俺、リンが好きなんだ。けど、お嫁さんにしたいのに、リンはいつも無理だって言う。…だからプレゼントとかで気を引けないかなって」
「も、も、物で釣るような事をしなくても大丈夫だと思いますよ?」
「う、うんうん、それにもしもリンが僕らのほうを好きになったりしたら嫌なんじゃない?」
「…えっ」

 リンが、カイ兄やルカちゃんを好きになる?
 そしたら―――

 ―――そしたらリンは、本当に俺の奥さんになってくれなくなっちゃうかも!

 俺は半泣きになりながら、固く拳を握り締めた。

「ううぅ、やだ!やっぱりプレゼントあげるの、止める!」
「それがいいよ!」
「ええ、それがいいですよ!」
(まあ、リンちゃんは補食者としての視点からしか私達を見てはいないのですけどね…)
(シッ!ルカちゃん、聞こえないように!)

 何かこそこそした声が聞こえた気がして二人を見たけれど、にこりと笑顔が返されただけだった。気のせいだったのかな?
 でも、プレゼントがダメだったらどうすればいいんだろう。思い付かない。
 しょぼん、と頭と尻尾を垂れさせる。よくわかんないよ。
 よくわかんない。でも何かしなくちゃ、と思う。
 だから俺はもう一度、リンが眠っている部屋に向かった。
 いつもは気になんてならないのに、何故か今日だけは両足が重く感じた。





「リン、俺、どうすればいいのかなあ…」

 さっきと殆ど同じ姿勢で丸まっているリンを、ふんふんと嗅ぐ。いつもの通りのリンの香りだ。
 俺が付けた匂いは、さっきより少し薄まっている。それが嬉しいような淋しいような、微妙なかんじ。リン自身の香りは好きだけど、付けたはずの俺の匂いが薄まってると、リンは俺のだ!っていう主張も薄まっちゃうような気がして…
 白い耳がぴくぴくと動く。触れたいけど、触ったら起こしちゃうし、今は我慢かな。

「リン~…」

 意味もなく名前を呼んで、覆い被さるようにして寝顔を覗き込んでみた。すっごい可愛い。ちょっと幸せそうな表情をしているのが、また愛らしさを引き立たせている。
 ふんふん、もう一度首の辺りを嗅ぐ。ちょうどそこで、リンが小さく身じろいだ。

「…にぁー」
「リン?…起きた?」
「にぅ…」

 寝ぼけてるリン、可愛い。
 へら、と頬を緩める。
 しょぼしょぼとした青い目もいつにない「緩さ」を感じさせて、ちょっと癒し系だなあ、なんてね。いつもはどっちかっていうと活発で、ちょっとクールっぽいとこもあって、そこがいいんだよね。
 めーちゃんは「ツンデレ」って教えてくれた。やだ、って言うのは照れ隠しで、本当は嬉しいんだって。喜んでるのを他の人に知られるのが気恥ずかしくてつんとした態度を取ってしまうんだって。まさにリンのことだね!だから俺も遠慮なくくっついていくんだ。えへー、飛び付いたときのリンの顔すっごい好きー。
 ふんふん、とリンが匂いを嗅ぐから、俺だよ、ってちょっと顔を近づけた。
 わざわざ近寄らなくてもリンの嗅覚なら十分嗅ぎ分けられただろうけど、なんとなく。
 その時、めーちゃんの声がした。

「リン、レン、そろそろご飯にするわよー!」
「あ!はーい!」

 急いでドアの方を向く。しゃがみ込んだ状態から立ち上がろうと、

「…ん?」

 したんだけど、服の裾を引っ張られたから動きを止めざるをえなかった。
 だって、引っ張っていたのはリンだったんだから。

「リン?ごはんだよ?」

 首を傾げてみても、リンはただぼうっと服を掴んでいるだけ。

「リンー?」
「…にーぁ、うー、レン…」

 ぐい、って服が引っ張られる。膝立ちみたいな状態だった俺は当然バランスを取ることも出来ず、ぐらりとリンに向かって倒れ込むしかない。

「う、うわわわわわ、ちょ、待っ」
「や」
「うぇ!?」

 いつになく甘い囁きと同時に、頬っぺたがちろりと舐められる。
 な、なんだろう、凄く顔が熱くなってきた!いつも以上に頭も働いてくれないし、あれ!?
 だけど、凄く嬉しいと思ったのも確か。
 ちろちろ、と頬を舐めるリンに、くぅん、と鼻を鳴らすと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。うわああああ可愛いいいいいい!!
 これは良いって事だよね!良いって事だよね!よしっ、式はどこで挙げようか!大きな犬も飼おう!―――って俺犬だった。中型犬だけど。しかもまだ成犬でもないけど。…いやいや、でもそんなの問題じゃない!

「リン!」

 感極まって抱き着いて、その勢いのまま縺れるように床をごろごろと転がる。
 余りにも勢いが付き過ぎたせいで俺は壁に、リンは戸棚にぶつかり、二人揃って「ぎゃん!」と悲鳴を上げる事になった。背中痛いけど、それよりリンの体温が離れちゃったことの方が痛かった。



 本当は、経験から分かってる。リンはクールに見えて実は淋しがりだから、俺からくっつきに行かなきゃいつかはリンから寄って来てくれるはずなんだ。もしかしたら、自発的に好きって言ってくれるかもしれない。
 だけど、それが待てない。っていうかリンを前にするとそういう細かい考えは全部忘れちゃう。
 基本、俺は考え=即行動。めーちゃん達には「落ち着け」って言われるけど、どうしたら落ち着けるのか分からない。
 こんなんじゃ好かれるなんて無理なのかな、って思うときもある。
 皆が言う通り異種間の恋なんて実らせちゃいけない、って思うときもある。
 だけどそういう「落ち着いた」思考回路は、リンの取る小さな仕草で全部破綻してしまう。
 そう、全部。
 例えばリンが無意識に俺の尻尾にじゃれついたり、俺の隣で安心したように船を漕いだり、俺がしたことで笑顔を見せてくれたり―――そんな小さな事で。
 リンと出会ってから数年経った。あの時は赤ん坊だった俺達も、間もなく大人に変わる。
 俺の想いは、きっと世界からしたらおかしい。その位、冷静になったら(なったらね!)判断できるようになった。



 ―――だけど、
 だけど俺は、リンと会ったとき、これが運命だって思ったんだ。



 それが思い込みで始まったことだとしても、「本当」にしたいって思ったんだ。
 だから今日も俺は諦めない。
 全力で、リンにぶつかる!



「リン、だ――い――す――き――!」
「えっ…み、みぎゃあああぁぁぁッ!?」








「レン、いつも言ってるでしょう!?リンに飛び掛かっちゃいけないの!打ち所が悪かったら一大事なんだからね!ご飯抜き!」
「くぅ…ゴメンナサイ……」


……あれ?なんでこうなるんだろう。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

わんこ×にゃんこ.2-いぬのきもち

このレンはちょっと頭が悪いです。
というか、猫っぽいつんでりんを書いたつもりが実際書けていなくて衝撃を受けました。あれっ、どこにその場面挟むつもりだったんだっけ…?

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閲覧数:984

投稿日:2011/04/11 23:47:22

文字数:4,168文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • 紅華116@たまに活動。

    レンかわいい!!おバカなレン可愛いです!! ツンデレなリンももちろん可愛いです!!
    二人ともお持ち帰り決定ですwww
    ルカちゃんとカイ兄はかわいそうだ…食用だなんて… 

    実生活は大変ですorz  明日、学力推移調査(テスト)があるのに勉強してません…
    勉強とか大変すぎます!!
    後は部活とかですかね~…
    でも、お互い頑張りましょう!!!

    2011/04/12 21:54:53

    • 翔破

      翔破

      コメントありがとうございます!
      どっちの鏡音も割と気に入ったように書けたのでちょっと嬉しいです。
      草食動物ペアには頑張って生き延びて欲しい物です。餌になるか生き残るか、知略が必要に為ります。

      そしてテスト!いつになっても奴は消えませんね・・・。
      今日だったのでしょうか?お疲れ様でした!

      2011/04/13 16:56:47

  • ゼロ鳶

    ゼロ鳶

    ご意見・ご感想

    レンんんんんんんんんn!
    2匹ともかわいい!
    リンかわって!

    2011/04/12 18:41:09

    • 翔破

      翔破

      コメントありがとうございます!
      まさかそんなにレンに反響貰えるとは思っていませんでした。嬉しいです!
      少しでも鏡音を魅力的に書けていたら幸いです。精進します!

      2011/04/13 16:45:33

  • シベリア

    シベリア

    ご意見・ご感想

    あああああああ((ry
    かわいいですね!!2匹とも!
    ぎゅーってしたくなります!!
    ツンデレなリンもかわいいです!
    お持ち帰り~

    実生活うちもたいへんですww
    仮入部とか始まって、帰るの遅くなるし、明日から本格的に授業始まるし・・・
    しかも1時間目から、苦手な上に嫌いな英語だし・・・
    精神的にも体力的にも疲れますよね・・・ww

    2011/04/12 17:44:31

    • 翔破

      翔破

      コメントありがとうございます!
      ツンデリンとバカレンのペアもいいと思うようになりました。バカレンはなかなか可愛いですね、
      なかなかレンを可愛いとは思わない身ですが、馬鹿な子は可愛いもんですね!

      そして、やはり実生活大変になりますね。
      去年の年末くらいまでは同じようなハードさだったはずなのに、間に休みが入っているだけでこんなに大変だと思うようになるものなんですね…

      2011/04/13 16:43:13

  • 秋来

    秋来

    ご意見・ご感想

    レンwwwwwwwwwwww
    ちょっとリンが疲れるのもわかる気がw
    リンはツンデレだったんだ!だからなのか~←なにが!

    二人を飼いたいな~
    絶対幸せだよ^^
    そしたら二人を結婚させてあげるの((どうやってだよ!!!
    種類違うとやっぱりダメなのかなぁ?

    実生活は大変だよね~・・・
    私も最近やばい・・・
    今日めっちゃ精神的に疲れた(笑)

    2011/04/12 16:04:30

    • 翔破

      翔破

      コメントありがとうございます!
      レンは手加減を知らないので、リンはかなり大変な目に遭っております。早く加減と言う物を覚えてやれ。
      でも種を越えての愛も個人的にはアリだと思います。むしろおいしいです。
      鏡音ならば尚更だ!

      お互い実生活も頑張りましょう!とかくこの世はままならぬ・・・

      2011/04/13 16:25:55

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