ぼうっと窓の外を眺め、少女はため息をついた。
 じきにこの景色を見ることすら許されなくなる…。小さな手におさまりきらない、シルバーの拳銃には銃弾が二発分、しっかりとこめられていた。リボルバーを強く握るあまり、汗でリボルバーはじとっとしていた。それと、随分暖かく熱を持ち始めていた。ずっと、この場所で少なくとも一時間はこの拳銃を隠して椅子に座っている。もし、彼女の前を二度通った人が居たなら、「まだいたのか」、と不審に思ったことだろう。
 明日の今頃、自分は白と黒のよこしまの服を着て、同じ格好をしたやつらと一緒に労働を科せられているに違いない。
 これで『アイツ』の心臓を打ち抜く。その後、残った一つの弾丸で、自分のこめかみを打ちぬく。それで、すべてが終わる。
 でも、本当にそれでいいのだろうか?私が引き金を引いてあいつの命を終わらせたところで、悲しみと憎しみの連鎖は終わらない。寧ろ、自分もその連鎖の一部、一つの歯車になってしまうのだから、自分も何らかの報復を受けることは必須。ならば…その前にやっておきたいことがある…。
「――やりたいことがあるなら、さっさと済ませてしまったほうがいいと思いますが」
 驚いて顔を上げた。
 不思議な格好をした、スタイルのよい長い神に緩やかなウェーブを書けた、美しい女性が自分の前に仁王立ちになっていた。しっかり腕を組んで女性は、少女の前に立ったまま、女性はまるで馬鹿なやつだと言うように鼻で笑った。
「何、あんた」
「死神です。」
「…頭、大丈夫?」
「寝癖はしっかりなおしてきました」
「そうじゃなくて…、いや、死神がどうのこうのって」
「はい、私は死神ですが。何か?」
「え、あ、いえ…。すみません」
 あまりの威圧感に兎に角謝って何を逃れようとした。
「じゃあ、そういうことで…」
「何、逃げようとしてるんですか。逃がしませんよ」
 立ち去ろうとする少女の肩をつかんで、死神はいった。振り返った少女の表情が露骨に嫌そうな表情になっていたことに、死神は密かな怒りを覚えた。
 とりあえず状況の説明にかかった時間は、二十分。思いのほか物分りのいい相手で助かった、と言う思いもあったが、それ以上に現実主義者であった相手を見て、面倒くさいなぁと思ったのは、死神の心の中にしまっておくこととする。
 少女は自分が三日後に死ぬことを知ると、隠していた拳銃を今までより強く握り締め、歩き出した。
「それで、何をやってしまいたいこととは?」
「ちょっと…復讐…」

 近未来都市とまで言われた地もついには廃れ、命を持った少女たちはやがて廃棄処分、人間であれば死刑に値する。人間のために身を粉にして働いていたというのに、必要なくなったら即廃棄処分とは理不尽なものである。
 小高い丘の上で風になびく髪は、人ではない透き通った赤毛だった。
「…あの、そこにいる方、出てきてくれませんか」
 もうじき取り壊される『旧・研究所』の陰に隠れていたツインーテルの少女に気がついていたらしく、mikiはそちらを振り返りもせずに言った。
 開発コードmiki、かつて、最先端の人間型ロボットとして製作され、成長しうたうことの出来る少女ロイドとして一度は巷をにぎわせたものである。それが、たった十二年の月日が彼女への風当たりを百八十度変えさせてしまった。最初はすごい、可愛らしい…、それが十二年の月日を経たことで、気持ち悪い、おかしいといわれるようになる。人間はあまりにも理不尽で、あまりにも冷たい。
 この身体は機械だから冷たいけれど、人間の心はそれ以上に冷たいに違いない。氷のようにいてつき、その瞳すら凍えて冷たくなっているのだろう。自分は機械でありながらこんなにも暖かく、素晴らしい感情と心を持っているというのに、人間はうわべだけを見てすべてを否定する。
「あなたも人間ですか。廃棄処分の時間まではまだ、一週間と十二時間三分九秒あるはずですが」
「私は人間じゃないわ。死神よ」
「…それは、残念でした。私は機械であって、魂は持ち合わせていません。狩るべき魂が無いのに、死神さんが私に何の用でしょう」
「命あるものにはすべて死が訪れるときが来る。あなたの場合、それが三日後です」
「三日後…?廃棄処分はもっと後のはずですが」
「どうして死ぬかなんて、私たちは知らない。三日後、あなたは死ぬ。それだけ」
 機械的な言葉に返されるのは死神の機械的な答えだけ。
 機械なら機械らしく人間に従っていればいい、その言葉の意味を理解した矢先に死を宣告された。人間に作られ、人間に従い、人間の欲望を満たし、人間の欲望のために死ねということだろう…。
 機械でももし命を持ったことを認められるというのであれば一度だけ、証を残して死に逝きたい…。残したい証は…。
「三日あれば、十分…です」
 機械でも心を持ったという証。
 命を得たという証。
 人間を愛したという証。
 …人間と同じように一つのときを生きたという証。
「人間に、歴史に刻み付ける。私たちの言葉を…」

反逆者は二つ。拳銃と一体のロボット。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

ものくろわーるど 5

こんばんは、リオンです。
時間的にはギリギリですか(汗
今回は双子出てきません。
とりあえず、他の死神たちとターゲットを出会わせて見ました。
昼間にもうちょっとかけていたら、もっと早かったんでしょうけど…。
悠長に映画見てたもんで(汗

閲覧数:208

投稿日:2010/04/04 23:59:07

文字数:2,106文字

カテゴリ:小説

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  • 華龍

    華龍

    ご意見・ご感想

    なんか、いない間にすっごく進んでる!!!!!!
    こんばんわ~!昨日はコメ出来なくてすみません~!!!
    ちょっとプチ旅行に行ってたモノですから…
    なので、2日分書かせてもらいたいと思います!!!

    ものくろわーるど4にて…
    ちょwwwショートヘアーの方単刀直入過ぎじゃないですか?!!!!ww
    カイトの「自分はまだ若い。持病もない。…」から、
    だからね、それは生まれ持ったカイトの不憫さだよ?って内心ツッコミまくりでした!!!w
    ツインテールとロングウェーブの2人はセットで動いてるんだろうか??
    ツインテールの子が無邪気で可愛いです!!(´▽`*) 
    レン…。猫が立つと痛いの、分かるよぉ~!!!
    爪を立てるんだよね、あの子達は…。

    ものくろわーるど5にて…
    2人が動き出しましたね。
    2人はどういう事をしてターゲットを天国に行くか地獄に行くか決めるんだろう??
    やはり、独特なモノを使うんでしょうか??気になります!!!
    ちょ!!!少女!!!拳銃なんてどこから?!!!
    それとmiki、人間や、歴史に刻む声とは一体?!!
    わああ!!!今回は本当に次回につなぐ気になるところが以前よりも多いですね!!!!
    それに謎の少女と開発コードmiki…。
    2人もまた次回へと繋がる鍵?ですね~。。。

    なんか…迷惑な量ですみません><,
    4の方とか本当どーでも良いことばかりで…orz
    明日も楽しみにしてます!!!それでわ~!!!

    2010/04/05 01:17:58

    • リオン

      リオン

      華龍さん、プチ旅行ですか!
      いいですねぇ。
      ふ、二日分!心してかからねば(笑

      4のほうですね。
      ショートヘアーの方はざっくりいくタイプだと認識しております(何
      突っ込みどころいっぱいですよね(汗
      昨日のを見ていただければ分かりますが、セットじゃないですよ。
      彼女は一番無邪気だと思います。リンはちょっと腹黒いんだと思います。はい。
      あ、レン、分かってもらえたね!
      私の場合中型犬にやられました。暴れると噛まれるので、静かにしてるしか…(泣

      5の方!
      二人とも行動開始です!
      そういえばどうやって決めるんでしょうね。裁判にでもかけられるのかな。
      拳銃は裏ルートから(キラーン
      mikiは何するつもりでしょうねぇ。
      二人とも色々あるんですね…。どうなるんでしょうね。

      長くてもいいですよ♪
      どうでもよくてもいいですよ♪(いいのか?
      今日も頑張ります!

      2010/04/05 11:10:37

  • 流華

    流華

    ご意見・ご感想

    廃棄処分は酷すぎるでしょ!?

    死神とターゲットですか……。死神のお姉さま方は感情があるんですよね?
    ターゲットに死を告げるのってどんな気持ちなんでしょう………?

    続き、楽しみにしてますね♪

    2010/04/05 00:12:31

    • リオン

      リオン

      流華さん、廃棄処分…確かにひどいですよね!

      お姉さま方には感情ありますよ!
      死を告げる…慣れちゃったりするんでしょうか。それとも、やっぱりつらいんでしょうか…。

      続き、頑張りまっす!

      2010/04/05 10:54:13

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