・・・まただ。あいつ――神威がくぽは今日も懲りずに私についてくる。
「がくぽ、何でついてくるの?」
がくぽは、何食わぬ顔でさらりと言った。
「え?決まってんじゃん。護衛だよ!ルカお嬢様♪」
訳が分からない。私は『お嬢様』でもないし、『護衛』される立場などではない。
がくぽはついてくるし家はまだ見えてこないし・・・。
「はぁ・・・」
私は思わずため息をついた。
私とがくぽの出会いは今年の春。つまり、高校入学のときだ。
クラスも一緒で、席も近かったため、よく話すようになった。
じきに、私とがくぽ、そして小学校の時から一緒に帰っていたリリィと3人で帰っていた。
だが、ここで異変は起きた。
がくぽの家はリリィの家より早く着く。なのに、私たちについてきた。
最初は、リリィの家に着いたら帰るでしょ、そう思っていた。
それなのに!
それなのに!
がくぽは、私の家までついてきた。もうここまできたらストーカーみたいになってくる。
「なんでついてくんのよ。がくぽの家、リリィの家にきた時点で越してるじゃない」
最初もそう聞いたっけ。そしたらがくぽは
「お嬢様の護衛。ルカ、可愛いから、変な男に捕まらないように、ね!」
がくぽはそう答えた。あんたが変な男だっつの!
そんなこんなで、今に至ります――――
――――「ルカ、どうしたの?悩み事?だったら俺に相談してよ!」
がくぽの声で我に返った。どうやらぼーっとしていたらしい。
悩み事・・・かぁ。
私はもう鬼のような顔をしてがくぽに言った。
「悩み事!?あるわよ!紫の髪の奴がストーカーしてくるのよ!」
「・・・へぇ、それは大変だね。すぐにそいつをルカから放さなきゃ」
がくぽは、‘心ここにあらず’という顔だった。しかし、興奮してる私には、がくぽの顔なんて見れなかった。
「はっ!誰だと思ってんのよ!他ならぬあんたよ神威がくぽ!もう私についてこないで!」
私はまくしたてるように言った。
がくぽはしゅん、とした。ふふん、ざまあみなさい。
私は踵を返して自分の家へ向かった。
次の日。
がくぽは学校でも話しかけてくれなかった。だいぶ落ち込んでいる。
「がくぽ、なんか今日元気ないじゃん、どうしたん?このリリィ様に教えてごらん!」
私が話しかける前にリリィが話しかけていた。
「実は・・・、好きな子に嫌われちゃったみたいで・・・。あいつだけは他の女子と違って、話しかけてくれたんだ。その瞬間、好きになった。なのに、嫌われちゃった・・・。どうしよう」
へぇ、がくぽにも好きな人がいたんだ・・・。
なんでだろう、胸がチクッとする。
「・・・はぁ。それは多分その子なりの愛情表現だと思うけど?恥ずかしくて本音が言えないのよ」
そう信じなさいな!リリィはがくぽを励ましていた。
帰り道。がくぽはいなかった。誘おうとも思ったが、昨日のこともあったので誘えなかった。
その日はリリィと話をして帰った。心にぽっかりと穴が開いたまま。
・・・あれから1ヵ月。がくぽはもう一緒に帰ることは無かった。
「がくぽがいなくてせいぜいするわー!ルカもそう思うよね!?」
「えっ!?あぁ、うん、そだね」
リリィに話を振られ、適当に返事をした。
本当は、せいぜいしてる訳じゃないのに。むしろ寂しいのに。
リリィと別れ、1人になった。
がくぽがついてこないことで思ったことがある。なんでこんなに寂しいのか。
「・・・あ、1人で帰ってるからだ」
前は1人で帰ること、それは普通のことで、なんの苦痛も感じてなかった。
でも、がくぽがついてくるようになって、2人で帰ることが普通になっていた。
だから、独りぼっちで帰ることは、とても寂しいということに気づいた。
「ほんとは、がくぽと一緒に、帰りたいのに・・・」
「俺ならここにいるよ。お嬢様」
しまった。つい口に出しちゃった・・・え!?
「なななな、なんで、がががくぽがここにいんの!?」
焦ってこんな言葉しか出なかった。
「だってさ、ルカが心配だったから」
がくぽは笑顔だった。心の底から笑っているようだった。
「じゃ、帰ろ!ルカ」
「・・・うん」
私は首を縦に振った。頬に何かが伝っていたのは気のせいだと思いたい。
私たちは帰路についた。
空は、絵の具のような赤が綺麗に彩っていた。
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