4~昼と夜が交差する地点
あのライブから僕と愛花は家族の様な関係になった。
お兄さんいや、父親の様な関係だ。
このまま、養子にでもなってもらおうか・・・。そう考えていた。
そのためには愛花の過去を知らなくてはならない気がしてならなかった。
しかしそのことに触れようとすると、愛花は口を閉ざすのであった。
「ねぇ先生、今日の夕飯私が作ってあげるよ」
「え?別にいいよ、そんなことしなくても」
「いいじゃん、だから今日一緒に買い物にでも行こうよ」
少しずつだけども愛花に表情が帰ってきていた。
病院の駐輪場で待ち合わせの約束をして、今日もカウンセリングの仕事に向かった。
愛花は今、僕のマンションで勉強を始めたらしい、将来の夢があるのだそうだ。
しかしまだ学校へ行く段階へは向かっていない、これが現実である。
仕事が終わり約束の駐輪場へ向かうと、愛花が僕の自転車の横に立っていた。
「お、いたいた」
「お疲れ様でした」
彼女のねぎらいの言葉に疲れが一瞬で吹っ飛んだ。
愛花の話すことは結構プラス思考で、もうすぐ完全復帰なのかもしれない。
出会った頃の面影は1つもなかった。
近所のスーパーで買い物を終えて僕のマンションへ。
あれからたまに愛花は自分の家に帰っているらしいが、詳細は知らない。
親子丼をガツガツと頬張る僕を見て、優しい顔になる愛花。
「美味しい?」
「うん美味しい!!これは、プロ並みだよ」
愛花はさらに優しい顔になる。
「これは、お嫁さんにすぐなれるな」
「・・・!?・・・そう・・・ですか?」
愛花の顔がポッと赤く染まっていたのはなぜだろうか。
次の日の夕方。愛花が通う中学の正門。
「よし、頑張れ、僕」
ホホをぱしっと叩き、職員室に向かう。
こんっとお茶が置かれた。
目の前には愛花の担任らしき男の人がいた。
ここは生徒指導室である。要するに張り裂けそうな緊張感を放っている部屋である。
「あの・・・初めまして、歌峰愛花ちゃんのカウンセラーで西生会病院の松田と申します」
「こちらこそ初めまして、担任の山田と申します」
この山田という奴、いけ好かない。何かいけ好かない。
見た目の印象で判断するのはやめよう。
「歌峰の容態はどうなんですかね?先生」
「え、え~っと、順調に回復しております。学校に登校できるまであと少しかと・・・」
山田がさっさとしろ、みたいな顔でさらに続ける。
「困るんですよ、歌峰の様な成績優秀者がうちのクラスから抜けると。クラス自体の順位が落ちちゃうじゃないですか」
「そうなんですか・・・へぇ・・・」
畜生、生徒をなんだと思ってやがる。あんたの手駒か?
・・・なんてことは口が滑っても言えない。
「まぁ、とにかく、早めに登校させる様にしてくださいね。今の時期は内申書が命ですから」
それだけ言って、担任は職員室に帰っていった。
生徒の心配なんて微塵もしていない。
・・・これも愛花の失声症の原因の1つだったのだろうか。
肩を落として校門を出ようとした時に、1人の女の人に呼び止められた。
「すみません呼び止めてしまって・・・愛花ちゃんの事で話したい事があって・・・」
「いえいえ、別に急いでませんでしたから」
ずいぶんと若い先生だな・・・僕と1つか2つ下くらいか・・・。
「私はここでスクールカウンセラーをしている、菊池です」
「ああ、そうですか・・・すみません、西生会病院の松田です。よろしくお願いします」
スクールカウンセラーか・・・。ほぼ同業者だな・・・。
「愛花ちゃんは、よく私と話をしていました。・・・でも最近は何も話をしてくれなくなって」
「そうなんですか・・・」
さらに続けた。
「愛花ちゃん、最近家庭も学校も上手くいかなくなったって言ってました。・・・とにかく上手くいかないって。クラスの友達や先生にもハブられて話もできない。自分だけどこか取り残されてる状態だって・・・」
「・・・なるほど」
トリノコシティの歌詞に繋がる物があるな・・・。
その後、菊池先生は「すみません!!」と言って走って去っていった。
まだ僕は何も言ってないのに・・・。
でもおかげで、何か大部分が見えてきたような・・・見えてこないような・・・。気がする。
とりあえず一歩前進だな。
マンションに帰ってきて、一応ノートにまとめる。
僕はメモ魔だったりするのでこういうのはまとめないと気が済まないのだ。
愛花は居ない。こんな時間にどこに行ってるのだろう。
その時、電話が鳴った。誰だろう。
着信の所を見てみると高校時代の友人である花田の名前だった。
花田は今、新聞社に勤めている。
「もしもし花田?元気か?」
「おい松田、そんな場合じゃねえんだ・・・」
「どうしたよ?同級生に何かあったのかよ?」
花田は声を荒げて言った。
「お前のことだよ!!いま匿名のタレコミがあった。西生会のカウンセラーと、その中学生の患者が同棲してるってヤツだ」
「マジか・・・それは?」
体が硬直する。そして鳥肌がぶわっと立った。
「写真まであるぞ、一緒にスーパーに入ってくお前だ!!そん時に着ていた服、お前が高校時代から着てたヤツだったろう?それでお前って判った」
「嘘だろ・・・頼む・・・嘘って言ってくれよ!!」
嘘だろ・・・バレてしまった・・・。
トリノコシティから始まるストーリー~その4~
どうも、トリノコシティから始まるストーリー~その4~をお読みくださりありがとうございます!!
一応今回が物語が大きく動き始める所になります。
愛花、そして松田の運命やいかに!!
この作品へのご意見ご感想心よりお待ちしております!!
トリノコシティから始まるストーリー
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BPM=156
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