足りない物を数えたら この両手じゃとても足りなくて
無い物ねだりと言うけれど有る物ならばねだらないでしょう

見えない物を信じたいなどと言う声はもう聴き飽きたよ
かえらないものたちは今日もまた どこで僕らを見てるんだよ

何といわれようとも 蔑まれようとも
何万もの灯火より ただそのろうそくの火だけを守ろう

さよなら 僕が出会わなかった心よ
さよなら 僕がもう出会うことの無いものたちよ
ごめんねごめんね
僕はその一つの命さえ無事ならそれでいいんだと思ってしまうから

戻らない物を数えたら この四肢じゃとても足りなくて
上下の歯や髪の毛まつ毛どれだけ足してもあやしいんだよ

現実は見たくないなどと言う声は大にできないんだよ
技術の進歩と共に より薄く鮮やかな世界へと生まれ変わるんだよ

名前を言われようとも 説明されようとも
何万もの取り残されたろうそくの火だけが揺れる

さよなら 僕がいつかなくした心よ
そうでしょう 生まれたときから内臓と共にさ 持ってきたはずなんだよ
この一つの命さえ無事じゃない
されどもそれでもいいんだと思ってしまうから
僕は思ってしまうから

さよなら 僕が出会わなかった心よ
さよなら 僕がもう出会うことの無いものたちよ
ごめんねごめんね
僕は何一つしないままでこの腕の届く範囲の火だけを
守ろうと守ろうと 有るものだけ無くさぬようにと思ってしまうから

思ってしまうから



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ろうそくの火

2011/03/11の東日本大震災から一年以上が経ちました。
あの日、あのとき、
私は関西にいて、関東にいる大切な人と電話をしていました。
受話器の向こうで薄っぺらい声が地震発生と避難する旨を告げ
電話も切らずに去った直後、私も揺れを感じました。
そこまでのラグと感じる揺れの大きさから
地震の規模が漠然と予想され、
こちらの揺れが収まった直後に
ガス栓を締め出口を確保し
テレビをつけると、この世のものとは思えない映像が
あまりに鮮やかに、克明に、そこにはありました。

大切な人は無事でした。
関東全域に住む私の家族親戚友人は無事でした。
その事実ばかりに目がいき、お亡くなりになられた方々、
そのご家族、ご友人、
その他被災者の方々を顧みることは疎かになっています。

人は物,者どちらにせよ何かしらと関わって存在しています。
一人いなくなって、使われなくなった歯ブラシ。
一つアルバムがなくなって、思い返せなくなった思い出の人。
あらゆる関わりの線を命と呼んで、それらを忘れないようにだけ
私は大切な命たちと生きていきます。

閲覧数:161

投稿日:2012/03/30 01:34:35

文字数:612文字

カテゴリ:歌詞

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