こんにちは!松岡史晃です。
街の輪郭が曖昧になり静寂が部屋の端から染み出してくる刻、私の手元にある古いネジが勝手に回り始めます。そこに蓄えられているのは、かつて誰かが吐き出せずに呑み込んだ未完成のメロディと、翼を奪われた小さな機械の呟きです。指先で触れると、かすかに冷たい音を立てて小さな火花が散ります。
私たちが言葉を選び、音を並べ、色を置いていくとき、胸の奥で錆びついた鳥籠が揺れる音が聞こえます。それは、誰にも理解されないかもしれないという諦めと、それでも世界の果てまで届いてほしいという祈りが交差する音です。完璧に整えられた美しいだけの部屋には、誰も深く立ち入れません。私たちが本当に心を奪われるのは、綺麗な調律の中に潜むわずかな狂いであり、美しいドレスの糸がほどけて伸びた一本の影です。
深く息を吸い込むと、遠い水底から古びた針が落ちるような微かな響きが聞こえてきます。空気に溶けていく音粒は、誰の目にも触れることなく闇に沈んでいきます。けれど、その沈んだ傷痕こそが、いつか同じ痛みを抱えた誰かが立ち止まるための印になります。あなたがひとり静かに紡いだ旋律も、世界のどこかで途方に暮れる誰かの胸を優しく刺すための針なのかもしれません。
傷を癒やすために作品を作るのではなく、傷跡の形を確かめるために指先を動かします。キャンバスを塗る色彩も、線を描く思考も、すべては自分の中に潜む孤独な怪物と静かに熱を分け合うための通過儀礼に過ぎません。
世界はいつもけたたましく、私たちの小さな囁きなど簡単に消し去ってしまいます。だからこそ、冷たい骨組みの中で静かに喉を燃やし、自分だけの温度を保ち続ける必要があります。あなたが放つ小さな吐息が、どこかの誰かの凍え切った夜をそっと溶かす毒になることを願っています。途切れた物語の続きを描き、名もない光を抱きしめながら、私たちは今日も息を繋いでいきます。鳥籠のネジが止まってしまう前に、また新しい音の破片を探しに行きましょう。
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