ひふみん

尽き果てた時間と
枯れ果てた言葉が
今際に残した遺言のような解
振り切れた憎悪
擦り切れた愛慕
凝らせたインクでしたためた
いつから膠着？
どこから平行線？
かえりみて背後に延々と続くのは
砕け堕ちた幻像...

むかし僕の　まどろみに灯った子守唄
それは童話（メールヒェン）
星屑に埋葬（うず）もれた歌（リート）
これは僕が　生まれてくる前の物語
ひとりの魔女と　瑠璃色のとかげの歌
魔女とは薬を作るもの
材料集めに森へ行く
クマツヅラ　ウイキョウ
ハゴロモグサに　トウダイグサ
黒い雪ひとかけらと　カラスの白い...

ひとり　辿るポプラ並木道
足もとを流れる　セピアの落ち葉
Ah　過（す）ぎる風　懐かしいけれど
昔より　縮んだ町
褪せた　カフェの看板
歩く足を緩めて
奥からふたつ目の窓際を
ガラス越しに確かめた、一瞬
さよなら　退屈と窮屈の箱庭
思い出振り切り　別れを告げた日...

夜半（よわ）に　葉擦れ奏でる異国の唄
雛鳥　遥か蒼穹の夢見る
夜明け　木漏れ陽に蕾はほころび
翼は　風を求めてひらかれる
若木の指先が天を目指すに似た
その血潮の望む旅路に幸あれ
はばたくがいい　幼い羽根、九天の息吹で充たして、今
高く速く　溶ける鼓動導くままに
夢に　遊ぶまどろみの時は過ぎ
真綿の...

残照、焦げた路地裏
徘徊（さすら）う痩せ犬の
ぎらついた暗い眼は
昨夜（ゆうべ）覗いた僕の鏡像（かげ）
分断（ばらばら）、引き裂かれた空の下
赤く泣き腫らした眼で
生き場漁る負け犬
いつか捨てた僕らの残影（かげ）
救えない傷痕　舐め合いうずくまるよりも
血にまみれて　牙剥くこと僕らは　選んだ...

【男】
真夏の夜の夢は　チューベローズの誘惑
白いベッドに横たえて　唇から火を点ける
【女】
ネクタイ解く指に　焦れながら始まる夜
愛で綴った媚薬を　くちづけて流し込むわ
【男】
欲しいものは何？　僕だけ感じて
ねだってくれ　心のまま
この僕に惑って　嗚呼...

スリルある一夜は　風のない暗い夜
白い裸を投げ出して　絡み合い夢を紡ぐ
スリルある一夜は　月も目を閉じた夜
白い体を薄紅が　ほのかに彩ってく
濡れた瞳伏せて　僕だけを優しく
迎えてゆく　ぬくもりに　ah...
緩やかに溺れる　嗚呼
二人で交わす秘密　誰にも邪魔されない
甘い口づけやわらかく　互いの嘘...