漆烏

ぎらつく電灯の白い血を浴びて
赤と、青と、黒の影産まれる
黒の影はそして逃げ出すが
同じ色はない
やがて形を持ち　生きはじめる
形は形を持ち　光るものは形を決める
色は何によって決まる？
分割のすがたたちと仲良くやる
本当に同じだろうか？
白い血を浴びて産まれたということ...

空には何もないのに
透過できないわたしがいる
本当は翼も要らないはずで
翔べば自由に　わかっているけど
歩く背中についてまわるよ
底なき海　溺れてしまいたい透明
あの人の暖かさが肩をつかみ
冷たい風を浴びる気になれない
空と海に挟まれて息もできない
苦しみと、憧れの永いはざま...

それさえあれば、人を魅了できるというもの
経験からくる説得力　絶対的な根拠
喪失、それこそが僕の頭をまた　スパークさせ
閃きと情熱に満ち溢れさせるだろう
なれるものなら、僕もなりたい
心を引き裂かれる、とびきり悲しい出来事に遭い
溢れて止まらない蛇口のように、
きっと詩が湧いて出る
執念が身体を動か...

燃え朽ちる西の地の青の上で人は輝く
ひとつ積まれた枯れ草の青の上で人は輝く
題名は私の中に
憧れたものは地の底へ
尊厳なき屍の青の上で人は輝く
動き出さない現実の青の上で人は輝く
翼は夢の中に
新しい詞は冬のあとで
輝き続ける　それ自体で
答えはなくとも　その道が光...

白黒の人だかりに狼がいた
速くすぎる影の中に狼がいた
焦げた赤茶色の狼
血を浴びたように暗い
車の蟠りの中をするりと抜けていった
すぐに消え行く狼
今はここに無い速さ
笑っていた
獲物をくわえている
黒い血を点点と撒いて狂喜する狼...