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街に微かな歌声が響きます。
まだ以前のようには遠く響かない、けれど清く澄んだ美しい歌声。
歌う女帝の傍らには共に歌声を奏でる姫君の姿が。
晴れ渡る空には二羽の美しい金糸雀が飛んでいました。
西の国には、再び沢山の歌声が溢れています。歌う人々の顔には希望に満ちた笑顔が。
もう西の森に魔物は現れません。...うたものがたり ~エピローグ~
ちかお
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後日、東国からの使者の二人は正式に女帝と謁見を果たしました。
「我が国も出来る限り貴国に協力したいと王が申しておりました」
赤の騎士と青の騎士は恭しく頭を下げました。
「それは有り難いこと、東国の王によろしくお伝え願います」
女帝は微笑んで返しました。
「この度のこと、ご心配をお掛けして大変申し訳無...うたものがたり ~それぞれの穏やかな日々~
ちかお
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「遺跡に訪ねて来る者達からこの国の噂をよくきくんだ。
皆、この国が大好きだと口を揃えて言う。
きっと貴女が思っているより、この国の皆は貴女を大切に思っているんだろう。
そうでなければきっと皆、違う国に移り住んでいたんじゃないかな」
魔法使いは女帝に微笑みかけました。
「私に叶えられない願いは、願う者...うたものがたり ~二羽の金糸雀の復活~
ちかお
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「懺悔など求めていません。…過ぎてしまった時は戻らないのです」
姫君は涙を流しながら女帝の頬を叩きました。
「何故この国の者達が姉様を失脚させないのか…姉様はわかっていますか?
この国の為にと努める姉様の姿を見ていたから、皆は姉様を慕っているのですよ」
姫君は強い眼差しで女帝を見据えながら話しました...うたものがたり ~緑の女帝の懺悔と希望②~
ちかお
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――歌を歌えない私にできることは国を治めることしかない…――
歌声をなくしてしまった女帝は、それ以来民の前に姿を表す事なく政務に没頭した。
いつしか街から聞こえる民の歌声に嫉妬し、焦燥を覚える程に女帝は自らの歌声を欲していた。
城内の誰もが歌えなくなった女帝を気遣い、歌うのを止めた。
ある日、木々に...うたものがたり ~緑の女帝の懺悔と希望①~
ちかお
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姫君達は女帝の執務室に駆け込みましたが、そこに女帝の姿はありませんでした。
女帝を探し城内を探索していると、微かに音が漏れる部屋をみつけました。
「ここは金糸雀(あの子)達がいる部屋…」
部屋から漏れ聞こえるその音は、まるで歌声を絞り出そうとするかのような苦しげな声音。
声は音色を紡ぐことができず、...うたものがたり ~緑の女帝の秘密~
ちかお
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紫の魔法使いが加わった一行は西の国に無事帰り着きました。
四人が城にたどり着くと、城門のところに桃色の髪のメイド服を纏った女性が立っていました。
「姫君、また無断で外出しましたね。王は大変お怒りでしたよ」
桃色の髪の女性は厳しい顔でそう告げました。
「ごめんなさい…。
あ、途中で東の国の使者の方々に...うたものがたり ~黄緑の姫君と桃色の従者~
ちかお
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「まさかこんなことになるとは思っていなかったわ…」
「まあ何かあるんじゃないかとは予想してたけれどもね~」
心配顔の赤の騎士と呑気な青の騎士。
「西の女帝の歌声の噂は聞いた事があるけれど、妹君の噂は聞いたことがないもの…大丈夫かしら…」
緑の女帝の美声は、他の国々にも知れ渡り、人々から迦陵頻伽(かり...うたものがたり ~紫の魔法使いと黄緑の姫君の歌声~
ちかお
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「君の願いをきかせてもらったけど、二つも叶えてほしいなんて強欲すぎじゃあないかい?」
普通は遠慮してひとつしか言わないもんだけど。まぁ君みたいに沢山願い事を言ってくる輩もいるけどねぇ…と魔法使いは面倒くさそうに呟きました。
「…そう…ですよね…」
姫君は魔法使いの言葉に驚き、瞳に涙を溜めています。
...うたものがたり ~魔法の都と紫の魔法使い②~
ちかお
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かつて魔法の都と呼ばれた地は、遺跡と化していました。
その地は大陸の中央に位置し、どの国からも干渉されることなく存在しています。
昔、その地を巡って今も語り継がれる大戦が繰り広げられていました。
戦が終結した後に、国々は中央の遺跡を不可侵と決め、条約をたてました。
そうして、その地はどの国からも干渉...うたものがたり ~魔法の都と紫の魔法使い①~
ちかお
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赤と青の騎士が王城に向かって歩いていると、綺麗な衣を纏った黄緑色の髪の少女が横を通り過ぎました。
「お嬢さん、ちょっといいですか」
青の騎士が通り過ぎ様に少女を呼び止め、彼女は驚き振り返りました。
赤の騎士は青の騎士を呆れた顔で見ています。
「瞼を腫らせてどうしました?何か悩みがあるのでしたらどうぞ...うたものがたり ~赤と青の騎士と黄緑の姫君~
ちかお
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「ごめんなさい…ごめんなさい…」
啜り泣く声と小さな呻き声が響く部屋の中。
女帝が二羽の金糸雀の羽をもいだ後、毎日黄緑の姫君は女帝を止められなかったことを悔やんで泣いていました。
片翼ずつをもがれた二羽の金糸雀。
彼らは裂くような痛みに顔を歪めながらもお姫様に応えました。
「…泣かないで、お姫様。...うたものがたり ~黄緑の姫君とおとぎ話~
ちかお
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「やっと西の国にたどり着いた…」
赤の女騎士と青の騎士が西の国にたどり着いたのは、金糸雀が捕らわれてから二日後のことでした。
しかし、西の国の現状を国民にきこうとしても、民は多くを語ってはくれません。
国が乱れた様子もなく、国民は歌を忘れた以外は普通に暮らしているようでした。
「おかしいな…。
西の...うたものがたり ~西の国の現状~
ちかお
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金糸雀が女帝に捕らえられる数日前のお話です。
東の国では歌が途絶えた西の国を心配する声が王のもとに届きました。
どの国の民もまた先年の戦を繰り返したくないと思っているからです。
国王は家臣の青の騎士と赤の女騎士を呼び、西国の視察に向かわせることにしました。
「国王の命を受けたからには気を引き締めて行...うたものがたり ~青と赤の使者~
ちかお
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――痛みに目を覚ました二人。
薄暗闇に目が慣れた頃、二人はどこかに閉じ込められたことに気づきました。
意識を失ってからどれ位の時が過ぎたでしょうか。
斬撃は姉の右翼と弟の左翼を貫きました。
裂かれるような激しい痛みを堪え、震える体を抱きしめあう二羽の金糸雀。
「ここはどこだろう…」
「どこかしら…」...うたものがたり ~緑の女帝~
ちかお
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「姉様に会わないように逃げて…!」
黄緑のお姫様は二人を城から逃がしました。
「…歌が嫌いなんてどうしてかしら…あの国で何が起こってしまったのだろう?」
そう呟く姉と頷く弟。
――その日から、二人は時折黄緑のお姫様に会いにいくようになりました。
悲しそうなお姫様の瞳を見て、少しでも元気付けてあげられ...うたものがたり ~西の森の城②~
ちかお
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西の森の中には木々に囲まれた大きなお城がありました。
綺麗な像や美しい庭園に彩られた城。でもどこか寂しく、人々の表情にも陰りが見えます。
「おかしなところ…東も南も北も歌声で溢れていたのに、ここは鳥の囀りさえ聞こえない」
「動物の気配もないね。噂通り魔物がいるのかな…?」
「でもこのお城で働く人々は...うたものがたり ~西の森の城①~
ちかお
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西の国で歌声が途切れてから幾年か後の話です。
「今日はどこに行こうかな?」
「今日はどこに行こうね?」
顔を見合わせて微笑む、鏡合わせのような顔(かんばせ)の二羽の金糸雀。
無邪気で少し威張りんぼうな姉と心配症で生真面目な節がある弟。そして二人揃って好奇心旺盛なところが玉に瑕。
歌が大好きな二羽の金...うたものがたり ~二羽の金糸雀の話~
ちかお
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昔々のお話です――
とある大陸で、国々が争いをしていました。
兵器を用い、民を、田畑を、資源を滅ぼし尽くした国々。
多くの傷痕を地や人々に残した戦も幾年の後に終結しました。
戦が終わり、それぞれの国の民は喜び歌を歌いました。
国を越え、心を繋ぎ皆が声をあわせて歌える時が来たのだと――
そうして、国々...うたものがたり ~プロローグ~
ちかお