西の森の中には木々に囲まれた大きなお城がありました。
綺麗な像や美しい庭園に彩られた城。でもどこか寂しく、人々の表情にも陰りが見えます。
「おかしなところ…東も南も北も歌声で溢れていたのに、ここは鳥の囀りさえ聞こえない」
「動物の気配もないね。噂通り魔物がいるのかな…?」
「でもこのお城で働く人々はいるのに、なんだかおかしな話じゃない?」
首をかしげる二羽の金糸雀。そこへ黄緑色の髪の少女がやってきました。
「あら、綺麗な翼の小鳥さんたちね。西の城へようこそ」
優しく微笑む少女はこの城に住む姫君だと話しました。
「ねえお姫様、この森には魔物が棲んでいるの?」
「魔物?」
「旅人が話しているのをきいたんです。西の森には歌声を奪う魔物が棲んでいるって…」
弟の話を聞いた後、姫君は悲しそうに顔を歪ませました。
「魔物と…呼ばれているのですか…」
「?」
「そのようなものは存在しません。
ですが、この国では歌を歌っては駄目よ。姉様…この国の女帝は今は歌を嫌っているから…」
悲しそうな瞳で話す彼女に、金糸雀は困惑を隠せない様子。
「でも昔他の国と歌を大切にしようと誓ったのでしょう?」
「それは…」
お姫様が語ろうとしたその時、けたたましいファンファーレが響きました。
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