Cafe・ロータス・イーター 1
投稿日:2010/02/07 13:45:49 | 文字数:1,581文字 | 閲覧数:597 | カテゴリ:小説
すみません。カフェの話がまだ続きました。
彼らの後日譚、的な感じです。
おもいっきり、オリジナルの人の視点です。
開店時間のほんの少し前に森はコックコートに着替えて髪をひとつにまとめて、厨房に立っていた。
「おはようございます。」
先に作業をしていたスタッフの女の子のあいさつに、森もおはようございます。と声をかけながら、手を洗った。
先に作業していた女の子は最近入ったばかりの専門学生だった。短い前髪に小柄な姿が年齢よりも幼く見えるけれど、仕事を覚えるのも作業速度も速い。朝の作業があらかた終了している事を確認しつつ、森も前日焼いて休ませておいたケーキを型から出して切り分けたり、と開店の為に手を動かした。
程なくしてホールで開店準備をしていた鳥海から、もうすぐ開店です。と声がかかった。
「今日は混みますかね。」
そうスタッフの女の子に言われて、どうだろう。と森は微笑んだ。
「一応、忙しい予定で前日に大目の仕込みにしておいたけど。グミちゃん。負けないでオーダーさばいていこうね。」
そう森が言うとスタッフの女の子は、はい。と元気よく返事をして、洗って氷水につけておいたレタスの水気を切り始めた。
開店してから程なくして、お客さんが入ってきた。鳥海がいらっしゃい。と親しげに声をかけるのが聞こえてきたので、ちらりと森が厨房から顔を覗かせると、入り口にいたのは常連客のカップルだった。物陰から顔だけ出している森に気がついて、彼らは微笑みながらそろって軽く頭を下げてきてくれる。森も会釈を返しながら、口元をほころばせた。
彼女の方は近所に住んでいる女の人で、一緒にいるのはその彼氏は、彼女を喜ばせようとこっそりここにケーキを習いに来たこともあった。
相変わらず仲がよさそうだなぁ。と森が思っていると、オーダーが入ってきた。春キャベツとアンチョビのパスタに、トマトスープとオムレツのワンプレートセット。遅い朝ごはんか早めのお昼だろうか。そんな事を思いながら森はフライパンを火にかけた。
スタッフの女の子にサラダやスープやらを用意してもらう傍らで、パスタを茹で始め、アンチョビとキャベツとベーコンを炒めて塩味のパスタソースを作って、その横で用意してもらった卵液に具を入れてバターを溶かしたフライパンで形よくオムレツを焼き上げる。
春キャベツの甘い味とベーコンとアンチョビの塩味に、トマトスープの程よい酸味に卵の濃厚な味。
出来上がった商品を、お願いします。と鳥海に渡して提供してもらい、新たに入ってきたお客様のオーダーを受け取り、再び森はフライパンを振るった。
例のカップルに食後の飲み物を用意して、丁度鳥海が他のお客様を接客中だったので、森が持ってゆくと、二人の会話が耳に入った。
「でさ、メーちゃん。あの、」
言いづらそうに彼氏のほうが言葉を紡ぐ。その歯切れの悪い様子に彼女のほうが怪訝そうに眉をひそめている。
「あの、今日、映画が終わったらさ、指輪を見に行かない?」
そう、思い切ったように彼氏のほうが言った。あらついに結婚秒読みなんだね。と森が思っていると、彼女のほうがそっけなく首を横に振った。
「何で!?」
と声を上げる彼氏に、彼女がほんの少し怒ったような表情で口を尖らせて言った。
「だってカイト、まだ私の事を、メイコって呼び捨てにできてないじゃない。」
「えー、、、。」
彼女の言葉に彼氏が不服そうな声を出す。なんて可愛らしい。もう少しこのやり取りを聞いていたいところだけど、と笑いをかみ殺しながら森は飲み物を提供した。
「どうぞ、ごゆっくり。」
そう森が告げて、背を向けると、だけど、と彼女が言うのが聞こえた。
「だけど、まぁ。指輪、下見ぐらいはしても良いかもね。」
照れと恥じらいと、くすぐったいような喜びを含んだ彼女の声に、彼氏のほうが喜び全開の声で、うん。と言った。
おめでとうございます。と厨房に入りながら森は心の中で呟いた。
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Cafe・我侭姫と無愛想王子・1~WIM~
綺麗にカールした睫に縁取られた、アーモンド形の黒目がちの瞳。形の良いアーチ型の眉に筋の通った鼻。口角の上がった唇は果物のように甘くてつややか。手入れの行き届いた長い髪はトレードマーク。まだ幼さのある輪郭に、少女と大人の境目を行き来するうなじ。細い肩にすらりと伸びた華奢な手足。ちょっと胸元が貧弱なのはご愛嬌。
どんな女の子にも負けはしない。だって私は世界で一番のお姫様。
普段は二つに結い上げている髪を下ろして毛先をゆるく巻いてみた。靴はつま先にリボンのついた新しいヒール。モノトーンの甘めワンピースにお気に入りのカーディガンを羽織ってみる。寒いから首にはストールをぐるぐると、でも可愛らしく巻いて。
今日のコーディネートは最強。
そう意気揚々と私はアルバイト先のカフェへと向かった。古いビルの二階にカフェがあり、その3階は店長の住居スペースなのだが、一部分、お店のスタッフルームとして使用させてもらっている。
Cafe・我侭姫と無愛想王子・1~WIM~
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悪の王国1 ~悪の召使~
ぼく達は2人で一つ。
まだ幼い頃、ぼくらは2人で一つだった。
共に笑い共に悲しみ、離れることなどありえなかった。
人々はぼくらの事を王子と呼び王女と呼んだ。
皆、優しかった。世界は優しかった。
悪の王国1 ~悪の召使~
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メイコの日【カイメイ】
「メイコさんっ」
五月五日の昼食後。居間で食事を終え、部屋に戻ろうと廊下を歩いていたところ、唐突に背後から呼び止められた。
「カイト?」
駆け寄ってくる足音に振り返る。声で分かった。呼びかけてきたのは青い髪の「弟」だ。私の間近で足を止めて、じっと私を見つめてくる。
頭ひとつ高い「弟」のカイトを見上げると、カイトが柔らかく微笑んだ。
メイコの日【カイメイ】
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Master 透明な壁・1
※この話はいっこ前に書いた微熱の音の続きのような話です。
これだけだと、?なところもあるかもしれません。
それでも良いよ!あるいは読んだ事があるよ!という方はどうぞ~
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Master 透明な壁・1
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Cafe・ただのいたずら
この作品は、以前書いた、カフェの話の番外編的な話です。
一連のカフェを舞台にした話を読んでいないと、ちょっと分かりにくいかもしれません。
それでも良いよ。または、読んだことあるよ。という方は前のバージョンからどうぞ。
Cafe・ただのいたずら
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Master 昨日の終わりと明日の始まり・1
ぼんやりとした思考がゆっくりと輪郭を整えていく。雨戸の隙間からこぼれるのは、早春の白い光。まだ寒々しい空気の中、そこだけが柔らかな春の気配を湛えていた。
今日は良い天気みたいだ。パソコンの内側の天気は外側の天気と連動している。つまり、現実世界も天気が良いという事だ。きらきらと柔らかな日差しはしかしまだ眠い目には眩しすぎる。
すうと布団の中で息を吐いて吸って、また吐いて。頭の片隅に引っ掛かっていた夢の残滓を振り払い、カイトはゆっくりとベッドから起きあがった。うん、と伸びをして眠気を振り払う。
と、誰かの歌声が聞こえた。甘く可愛らしい、少女の声。ミクの声。声の遠さからして、居住区ではなく録音室に行って歌っているようだった。ミク、珍しく早起きをしたんだな。そんな事を思いながらカイトは部屋のカーテンを開いた。
淡い、水色の空が広がっていた。今日も良い天気だ。まだ少し肌寒い空気を感じながら白い陽光を体いっぱいに浴びる。からりと窓を開けて外の冷たい空気を吸い込むと、徐々に細胞が覚醒していく感じがあった。気持ちいい、朝の空気だ。冷たい空気の中、柔らかく跳ねるような音に合わせてミクの歌声がどこからか甘く響いている。
Master 昨日の終わりと明日の始まり・1
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未来飛行・前編
こちらは“BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」” を原曲として書いた二次創作です。
ミクもミクのマスターもバンドのメンバーも、原曲を奏でる彼らをモチーフにはしていますが、すべて私の妄想です。正しくは、ミクさんもバンプも好きすぎてこの楽曲にかなり興奮して勝手に私、妄想しちゃったよ、的な話です。好きすぎて「こんな感じだったらいいなぁ~」とこじらせた結果です。作中の彼らの言動はすべてフィクションなのでご了承ください。
すべて私が勝手に妄想した話を、それでもいいよ、という方は前のバージョンで読み進めてください。
未来飛行・前編
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【到着】二人三脚-1- 【えっと、お前誰?】
この物語は、一人の少年と手違い(?)で届いたVOCALOIDの物語である。
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やっとだ。
息を大きく吸って、吐く。
そして、
【到着】二人三脚-1- 【えっと、お前誰?】
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おやつと一緒に詰めた妄想たち。
某所でおやつという名の賄賂と一緒に、一部妄想も詰めました。そして、もろっと渡しました。その内容です。
がっつり文章をを足そうと試み中。
予定は未定です。
前のバージョンで読んで下さい~。
6/23ひとりめ投稿。
おやつと一緒に詰めた妄想たち。
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今日の夕ごはん・1
―絶対なもの。
だし巻き卵。遠く高い澄んだ青空。ふわふわのシフォンケーキにホイップクリーム、それにお砂糖一つ分のコーヒー。水撒きした庭からやってくる湿った風。
絶対なもの。
お兄ちゃん、お姉ちゃん、がちゃ坊。
ごりごりごり、とがちゃ坊がひたすらにすりこぎですり鉢の中身をすりつぶしていた。ごりごりごり、ねりねりねり。と、磨り潰されて練り上げられているのはイワシのすり身。あの青くて目がぎょろりとしていて小骨が気になって、なんだか生臭い、難易度の高いあいつである。
今日の夕ごはん・1
・オリジナルマスターの「ばあちゃんマスター」シリーズとか、曲の二次創作とか書いてます。
・ほのぼの日常系が多めで時々切ない系あり、ごはんの描写多め。
・話的に長いのが多い。作品の一話目はブクマでリンクしてあります。
☆コラボ【シェアワールド】響奏曲【異世界×現代】に参加中
☆コラボ「ドキッ!KAITOだらけの水着大会!!」に参加してました(動画作成終了のため応募は終了)
ツイッターコメ、ありがとうございます!!
・どうでもいいことばかりつぶやいてるツイッター。
http://twitter.com/sunny_m_rainy
・最近ほとんど稼動していない二次創作用ブログ。
ハレノヒブログ
http://ameblo.jp/sunny-m-rainy/
・オリジナル置き場として、ピクシブにもこっそり進出。
http://www.pixiv.net/member.php?id=1519443
・ニコっとタウンでもこっそりと物語(?)的なものを書いてました。
http://www.nicotto.jp/user/mypage/index?user_id=826733