――痛みに目を覚ました二人。
薄暗闇に目が慣れた頃、二人はどこかに閉じ込められたことに気づきました。
意識を失ってからどれ位の時が過ぎたでしょうか。
斬撃は姉の右翼と弟の左翼を貫きました。
裂かれるような激しい痛みを堪え、震える体を抱きしめあう二羽の金糸雀。
「ここはどこだろう…」
「どこかしら…」
痛みに顔をしかめながら、不安をかき消すように言葉を交わす二人。
その刹那、薄暗闇を作り上げていた布が取り払われ、眩い光が差し込みました。
視界に映し出されたものは周りを囲う無数の鉄柵。
足元から伸びたそれは頭上に収束され、以前どこかの町で見かけたものに酷似していることに気付きました。
二人はそれがどのように使われるものかを思い出し、更なる恐怖に体を震わせました。
「お目覚めのようだね、可愛らしい小鳥たち。
私の城へようこそ」
静まりかえった部屋の中に響く凛とした美しい声。
光が差し込む窓辺から緑の髪を揺らし、一人の少女が姿を現しました。
その傍らには悲しみに顔を歪めた黄緑の姫君と桃色の髪の従者が。
「初めまして、私はこの国の王だ。
…妹姫が世話になっていたようだね」
冷涼な瞳に見据えられ、二羽の金糸雀は竦みあがりました。
その冷たい目に得体の知れない恐怖を覚え、背筋が凍りつき身動き一つできません。
ゆっくりと鳥籠に近づき彼女は更に語り出しました。
「招かれざる客人たちよ、この国で歌を歌うことは大罪なのだよ。君たちにはその身で罪を贖って貰おうではないか」
そう語り、女帝は指を鳴らしました。
桃色の従者が鳥籠を開け抱き合う二人を引き剥がし、弟を女帝の前に掴みだしました。
「罪の代償は…その翼にしよう。貫かれた翼など必要ないだろう?」
そう呟き、左翼を掴み引きちぎりはじめました。
翼を引きちぎられ、痛みに泣き叫ぶ弟の声と女帝を止めようとする姫君の悲痛な声が部屋中に響き、血に塗れた無数の羽が床に舞い散りました。
鼓膜を震わす耳障りな呼吸音と止むことのない嗚咽。
零れ落ちた涙が頬をつたうことすら気付けない、とり残された金糸雀。
襲い来る恐怖に身を縮ませ小さく身動ぎした刹那、残酷な声音が部屋中に響きわたります。
「――さぁ、次はお前の番だ…―――」
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