最近の投稿作品 (39)
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ツイッター企画 倉子SIDE +α
倉子SIDE
恋は魔法だとかよく比喩的表現で例えられるけど、私はそんなの信じたことがない。だって、今まで恋なんてしたことがないから信じようがなかった。
それ以前に、恋なんてする余裕がなかった。私の人生は、おおよそ艱難辛苦で七割七分七厘が語れる、と思う。
一番古い記憶を辿ってみると、寒い。あぁそう、寒い。
あとはなんだっけ。施設とか、いじめとか。そういった感じだっけ。思い出すのも馬鹿らしくていけない。
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ツイッター企画 嶺SIDE
嶺SIDE
「いらっしゃませ!」
「いらっしゃいませ。」
「声小さいぞ嶺!」
店長の高谷さんから叱咤を飛ばされる。
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ツイッター企画 舞SIDE
舞SIDE
私は我が侭だ。私は傲慢だ。私は自分勝手で、それが自分で嫌というほどわかってしまって。いつだって自分勝手で、人を振り回して、いっつもそれに呆れられ、突き放された。
けど、千歳君は違った。あの子はいつだって私の我が侭に、突然の提案に嫌な素振りなんて見せなくて、私の事なのに、付き合ってくれた。
居酒屋で酔った私も介抱して、愚痴を零せば誠実に受け止めて励ましてくれて、失敗談を語れば本当に楽しそうに笑ってくれる。
一緒に会話をするのが楽しかった。時間を共有できるのが嬉しかった。千歳君といる時が、とても充実した時間だったのは間違いない。
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ツイッター企画 一話 千歳SIDE
千歳SIDE。
「暑い・・・・・・・・・・。」
夏が暑い。それはみんな知っている。だからって、こうも暑くなくてもいいのかと、悪態くらいはつきたくなる。
千歳、大学2年。本屋バイトの最中の休憩時間に考えたことだった。いやこんなの考えるよりは、さっさと飲み物買って休憩室へ戻った方がいい。
蝉の鳴き声は乱反射して、五月蠅い。子どものころは虫取り網を持ってよく捕まえたけど、もう二十歳になると追いかけている余裕がない。小さい頃の自分は、あんなに小さくて、羽根が生えてすばしっこい生き物を追いかけていたんだと思うと、感心する。
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ツイッター企画 プロローグのみ
一人はいつまでも乗り出せない自分に苛立ちながら、自分自身を慰めるため酒を飲んだ。
一人はいつまでも気づかない相手に悲しさを覚えた。
一人はいつまでも真摯にその人が好きだった。
三人がそれぞれ、色恋沙汰の悩みを抱えていた。
それぞれ三人の悩んでいたことは、たった一人の発言で一気に展開を進めた。
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奴隷のいきかた3
空は広いのに、僕が、僕たちがいる地上というのはとても狭い。空を貫こうとするビルがいくつも建ち並び、その足下に従うように人々が歩いている。コンクリートは朝日を浴びて人のようなぬくもりを、夜は誰もを見放すような冷たさで僕らを包む。
仕事がなくなってしまってから、僕と一九番はあてもなく仕事を探して、この街を歩いては労働力を募集する店を尋ねる日々だった。出て行けと水をかけられ、罵られ、少しずつためていたお金もどんどん減っていき、飲み物だけで飢えを凌いで。
これが人の生活なんだろうかと疑問を抱くことにも疲れて。海に漂うゴミのように歩いていた。
喉が渇いたなら自分の唾液を、疲れたのならビルの影で。持ち主を失った小銭を拾う。そうして得たお金も無くなった。このまま順調にすすめば、最後は生ゴミを漁って食べられるものを探す日々になるのだろうか。そして今日も、仕事は見つからず、ひっそりと路地裏へと身を隠す。
「お帰り。一八番。」
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奴隷のいきかた2
雨が降っている。それでもまだ眠いから、僕は眠ろうとした。
視界がブレる。焦点が定まらずに、世界の輪郭が幾重にも分身して見える。地震みたいに体が揺れて・・・そこで自分が目の前の人物に起こされようとしていることがわかった。
「起きて、起きてよ一八番。」
「嫌だ、僕は眠い。明日で仕事が終わるんだから、一九番に構ってられない。」
ふわりと視界の大半を埋めていた金髪の持ち主は、一九番。ざっくばらんに言うと、僕の唯一の奴隷仲間だった。奴隷は、その置かれている立場から、一人で社会を生きていくことなんて難しい。だから大半の奴隷は仲間を作って、強い結束の中生きている。多分それは、この世界の中の薄っぺらい、乾いた関係なんかよりもよっぽど強固だ。
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±行進
±行進
(S)
くだらないから言葉遊びで進め 一歩進んで一歩戻れ
比喩も倒置も意味がないから 前へ進んで後ろへ進め
スゴロク遊びの一回休み 結局その場で右往左往
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レンタル螺子巻き
レンタル螺子巻き
(S)
螺子を巻きながら 変わる景色
あれもこれもそれもどれも レンタル
恋を狂わせて 笑う軽視
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片道終着切符
片道終着切符
(A)
変わりもしない景色 つまらない
メトロの走る 路線図形
困りもしない不安 くだらない
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路地裏列車終着点
路地裏列車終着点
(S)
凱旋列車の路線上 狭い世界をひたすら回る
盲目車掌の手のひらで踊れ
終着点への切符は 惨めな賛歌
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錆ビタオ菓子ノパレード
錆ビタオ菓子ノパレード
(A)
カラメルソース 絡めた林檎
喉に詰まってチアノーゼ
耽ったティラミス 冷えた体温
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ぐるぐる輪廻
ぐるぐる輪廻
(A)
人生転落 借金まみれの泥の顔
不治の病は笑って語る
暗転人生 葛藤だらけの僕の中
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霰の中で思うことを世界に告げる
霰の中で思うことを世界に告げる
(A)
砕けた頭蓋で 世界を見下ろす
画面の中のつま先 黒い竜巻羊を屠る
痺れた記憶が 二人を引き裂く
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トンネル
トンネル
(A)海底列車爆発炎上 想像傾向妄想以上
なにもかも みんな憎いだけで
心の洗浄泥水逆流 勝手な空想傲慢劣等
どれもかも みんな黒いだけで