プリマローズイエローの
空が朝を連れて来る前
捲り続けた本を
誰にも告げず読み終えた

緑青色の季節にカスミ草が咲いて
幾多の非情な行いに耐えて来た
早過ぎる別れに星へと涙を流して
微笑む先で貴方達がいつも寄り添ってくれた

刻の螺子を回すのも忘れて
真白(まさら)なページに生きた証を刻んだ
針の音が遠くに聞こえる
気が付けば皺くちゃな掌

積み重なった軌跡
開けばあの時の呼吸が聞こえる
一文字一冊が大切で愛しく
悲喜の涙が頬を濡らした


いつでもあなたは
それを大切に抱き締めていて
色褪せても涙で濡れても
笑顔で読み聞かせてくれた

だけど読むのを邪魔する事もあって
「一緒に読もう」と誘われて断った事も
時には本を取り上げて傷付けたりした
悲しそうに無言で俯いた

数え切れない後悔の行き先
「ごめんなさい」はどこで伝えられるの?
手は合わせられない 合わせることが出来ない
貴方に向けるこの心の行方

残りの十数ページ
閉じられてしまったこの本の結末
楽しかった?辛かった?幸せでしたか?
私の中の貴方の笑顔がその答えなら...

私のページに貴方はもう刻まれない
遺してくれた優しさは生き続ける
嗚咽混じりで貴方の名を呼ぶ声は
朝を連れた空に溶けて消えた

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刻白

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投稿日:2020/10/14 00:10:12

文字数:536文字

カテゴリ:歌詞

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