この世界はなんていうか、ひどい土地だ。
まず、奴隷を金銭としか思っていない。なんて言えばいいかな。例えば、賭け事に奴隷を使うのだ。そしてハッタリとかあるから、よく暴言が起きる。見境ない黒の淵には、それがとても醜く映るのだ。
≪アンダワ【二次創作】≫
のっぴきならないのは虚空に描かれた虚しい絵だ。あれは一体、必要なのだろうか?
賭けられた奴隷――僕も含まれる――の視界は徐々に暈けていき、にっちもさっちもならない。たちまち噎せていくのがオチだ。
茹だる閉塞感を他所に、冷めた目で並走、俯瞰する。
この閉じた世界を独占する諸悪ですら、光をまだ見る術は無いというのに。
『光を見たい』
その、願いのため。
装置は加速する。この大地の、果てまで――!!
嗚呼、其処まで底着いたこの台地の底から僕らは浮かぶことができないのだろう。そんな僕らは何かに絡まった底なしの庭の民だと蔑まれる毎日を送っている。
独占する諸悪により行われる絶対王政、辛さ故喘ぐ者も多い。
もし、この底抜けの“楽園”がいつまでも続くとするなら――もう限界だ。
武器を取り、手をつないで反旗を翻す。
合い言葉は――
『アンダワ』
地底までおいでませ。
*
自我の星はつながりだし、我々は攻撃を開始した。
今まで我々を卑下にしていた連中も今や、爆ぜて焦燥による血を吐いた。
なんて惨め。なんて滑稽。
今まで、我らにした行動の意味を! 理解したのだろうか。助けてくれ、と懇願する。
だが、我々もそう甘くはない。
今までやられたことは、そんなものでは済まないからだ。
軋む骨の音が、彼が生きていることを示していた。
その命で、今まで奴隷の掛け金を貪っていたのだ――これはそれを取り戻
すための英断に過ぎない。
さあ、もっと果てまで。
「待っていたよ」
諸悪は笑っていた。追い詰められ、死ぬはずなのに、笑っていた。
「……殺す」
「ああ、好きにしたまえ。だが、話を少しは聞いてみないとは思わないかね?」
「……何をだ」
僕は全員に銃を下ろさせ、話を聞くこととした。
「この世界についてだよ。なんで太陽が昇らないんだ?」
「歴史では太陽は星の爆発によってなくなったと……」
「ならば、今ここに我々は生きてないさ」
「……なんだと?」
「君、名前は?」
「……41」
「そうか、名前がないのか。では私が名前を与えてやろう。アダムだ。いい名だろう? 昔の人間の最初の男の名前だ」
「おちょくっているのか」
僕は銃を構える。それに気にせず、男の話は続く。
「――単刀直入に言おう。この世界はループをしている」
「ループ?」
「そう、君の言ったとおり一度人類は太陽の爆発によって滅んだ――とされている。しかし、生き残った人類は、ここへ逃げ込んだ。この地下世界へと」
「……な?」
「勿論、五体満足で逃げれたわけではないな。地球をも滅ぼしてしまったんだから。恐らく精神のみで生き延びたんだろう。んで、そのへんの適当な惑星で……身体を乗り移った」
「……それが、我々の先祖?」
「おそらくは。そして我々はサカサマな世界でその歴史をなぞっているってわけだな」
「……その話、ほんとなのか?」
「……私は先に行かせてもらったからね」
その言葉を聞き、ぼくはぎょっとした。……よく見ると、それは映像だった。立体映像に過ぎなかったのだ。
「ちくしょう、追うぞ!!」
走って、船に乗り込む。船はすぐに動き出し、
その不自然に空いた穴へと出発した。
*
「……眩しい」
僕は一発でそこが今までの世界と異なることを理解した。
まず、明るい。
ここは底じゃないことを思い知らされた。
そして。
諸悪は、僕らを見下ろせる高台にいた。
手を叩いて、笑っていた。
しかし、それは気付かなかった。
誰にも気付かなかった。
今は――地下をすべからく抜け出した、ことを喜んで。
手をつないでわらってサヨナラ。
ワンダー! 地底からおいでませ。
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