ぱたぱたぱた・・・

かすかに、外から足音が聞こえた。
暗闇の中、夢現に微睡んでいた私は、目をこすりながら耳をすませる。
足音は私に近づいてくるようだった。
ふと、軽やかで、元気で、小さな足が目に浮かぶ。

きっと、足音を鳴らしているのは「彼女」なんだろう。

確信と、そうであってとどこかで願う気持ち。2つがせめぎあって、不安が生まれて気持ちが急く。

はやく。はやくきて。

私に会いに来て。


ガチャ

待ち望んでいた音が響く。
続いてキィッとドアが開く音がして、誰かの気配がした。

「ふーふふーん♪」

何かいいことがあったのか、「彼女」は鼻歌を奏でながらやってきた。
少し鼻にかかった、でも可愛い声。私はその声が大好きだった。

彼女の歌を聴きながら、私はいつものようにじっとしていた。
もうすぐ、会いに来てくれる。

「彼女」は何かを探しているようだった。
ガチャガチャ、と何かをどこからか取り出しては、ガシャン、と戻す。それをまた繰り返す。
やがて、ようやく見つけたのか、小さな歓声を上げて、声を張り上げて叫ぶ。

「ママー!見つかったよー!」

ややあって、遠くから

「じゃあ、早く降りてらっしゃい」

と、声が聞こえた。
わかったー、と叫び返した「彼女」は、足早に立ち去ろうとした。
でも、思い出したように、こちらに戻ってきて、ギィッと箱を開ける。

外から一気に光が溢れ、私は眩しくて目を閉じた。しばらくして開けると、頭上に、こちらを見下ろす「彼女」の姿があった。
ふと、私と目があい、嬉しそうに微笑んだ「彼女」は、そっと私の手をつかみ、箱から連れ出した。

「ミク、今日は一緒にお出かけしようね!」

私が大好きな声で、私の名前を呼んでくれる。

あぁ、幸せだなぁ。

「彼女」の手にゆられ、私も微笑んだ。

と、急に辺りが暗くなった。そう、まるであの箱の中のように。
驚いて身を固くした私は、握られていた手に縋ろうとして、「彼女」がいなくなっていることに気づいた。

「・・・」

どこにいったの?置いていっちゃったの?
ねぇ、どこにいるの?

ふいに、声が聞こえた。


「やっぱり、もういらない」


私が大好きな声。「彼女」の、声。

いらない?・・・いや。捨てないで。いらないなんて言わないで。もう遊んでくれなくてもいいから、傍にいられなくてもいいから・・・。

せめて、名前を。名前を呼んで。




「・・・っ!!」

気づいたら、朝だった。
部屋の窓の外では小鳥が囀り、目覚めのときを告げている。

ベッドから起き上がり、さっきまで見ていた、不思議な夢のことを考えていた。

夢の中で私は、何か別の誰かになっていたようだった。初めは真っ暗で、その次に小さい頃の私が出てきて・・・なんだったんだろう。

なんだか、とてもこわいような、さびしいような、かなしいような夢だった。

「と、いつまでもこんなことしてたら遅刻しちゃう」

ベッドから出て、高校の制服を着るためにクローゼットへ向かう。

そのとき。

ガッ!!

「いっ・・・・たぁ~!」

おもちゃ箱に思い切り躓いてしまった。
おまけに、おもちゃ箱もその拍子にひっくり返った。

「も~~!!」

足の指の痛みに苛立ちながら、辺りに散らかったおもちゃを片付ける。
すべて、私が小さい頃に遊んでいたおもちゃだ。もうずいぶん長い間、ほったらかしになっていた。
すると、古くなったおもちゃたちの中に、強い懐かしさを感じるものを見つけた。

緑の髪の、ツインテールの女の子の人形。お気に入りで、よく一緒に遊んだり、寝たりしていた。
名前は確か――


「ミク・・・」


ミク。そう言ったとき、なぜか――目の錯覚かもしれないけど、人形の目が光ったように見えた。

きらりと、まるで涙みたいに。

思わず、「ごめんね」と言ってしまった。自然とこぼれ落ちた言葉だった。


「ミク」


もう一度呼んでみる。

自分の声なのに、なぜかどこか遠くで聴いたことがあるみたいに、懐かしく感じた。


『あぁ、幸せだなぁ』


そんな小さな、小さな声が、そっと耳に触れた気がした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【短編小説】Call my name.

久しぶりに、小説を書いてみました。
小説は、よく読むのですが、自分で書くことは、
あまりないんですよね・・・。

とりあえず、書きたいだけ書いたので、
ちょっと雑かもです。


ご意見・ご感想・アドバイス等お待ちしております。

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閲覧数:154

投稿日:2011/04/28 22:01:20

文字数:1,734文字

カテゴリ:小説

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