次の日。いつも通り7時に目を覚ます。ケータイを確認する。
メールがきていた。・・・プロデューサーからだ・・・
「ミクちゃん~おはよー(≧_≦)
今日は新曲のレコーディングの日だったよね♪いつものスタジオにきてね~
みんながミクちゃんの歌に期待してるんだからね。しっかりやってね~
P・S 前みたいに評価を下げたら、許さないからね。 」
無言でケータイを閉じる。身支度を整える。
「私はあんたを輝かせる装飾品じゃない・・・・・」
誰にともなくつぶやく。「評価を下げた」といってもいつもよりちょっと多くファンから
「あんまりよくない」
とか
「ミクちゃんどうしたの?」
とかいう意見が来ただけなのに・・・
私はため息をついた。
スタジオについた。中に入るとプロデューサーがコーヒーに砂糖を足しながら飲んでいた。
「おっはよ~いつもどおりがんばってね☆」
そういってプロデューサーは部屋を去ろうとする。
私の隣を通りすぎようとしたとき、私に小声で耳うちした。
「メールでも送ったけど、わかってるよね?僕のこの業界での立場もかかってるんだからね・・・?」
そういって部屋を出て行った。所詮あいつらは私のことを自分の立場をどんどん押し上げてく「商品」としか思ってない。あいつらは「商品」を動けないように厳重に鎖で奴隷のように縛り付けておく必要があるらしい。
そうでもしないと「商品」が勝手に動き始めてしまう。それはあいつらにとってあってはならないことだ。
「すいません、ちょっとトイレに・・・」
私はトイレに駆け込む。そして商品の私は「人間」としての涙を流した。
レコーディングが終わり、私はこのあとは何の仕事もなくヒマだった。一日に仕事が一件しかないのは3ヶ月に1回あったら良いほうだった。ふと、海を見に行こうと思い立った。
すぐに切符を買い、電車に飛び乗った。電車の中には、実に様々な人がいる。たわいもない世間話に花を咲かせている人、下を向きながらとりとめのない空想をしている人。
そんな人たちの中に、私も混じれたらどんなによかっただろう。
駅に着いた。電車を降り、駅を出、砂浜まで歩いていった。
波打ち際のあたりに腰掛ける。
砂に文字を書いてみた。
「希望」
書き終えた瞬間、波が文字を消していった。
まるで私に希望なんてないんだという無言のメッセージに思えた。
遠くで水着をきた子供たちが遠くで笑っている。
押し寄せてきた波が私のピンクのスカートを静かに濡らした。
続
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