「ミクが笑っていれば、ママはそれで幸せなんだよ」


ねぇ、ママ。

ごめんね、私が居て。

ごめんね、私が生まれて。













私にはデキナイ

みんなと外で遊ぶこと―――

私にはデキナイ

ママを笑顔にすること―――

私にはデキナイ

明日までこの命を繋ぎ止めること―――






小さな窓の外に浮かぶ綺麗なお月様。

ねぇ、私はルどうして生きてるの??


結局私は、この白い壁に囲まれた病室から出ることは出来なかったのね。
一回も帰ることが出来なかったのね、お家に。

ママやパパ。それにお兄ちゃんが暮らすお家―――

どんなに頑張っても、今のは私には「お家」に行くことはできない。

ねぇ、神様。
それなら、私を明日まで生きさせて?

七回目のお誕生日なの。

ママがね笑ってくれるの。


私の誕生日が来るとね、

「お誕生日、おめでとう。ミク」

って、微笑むの。




私の所為でママは悲しい顔をするから―――

私がワルイコだから―――

お兄ちゃんみたいに元気じゃないから―――













ねぇ、神様。

どうして私は生まれたの？
誰のために生きてるの?


私は、誰も幸せにすることはデキナイ。


私はただのお荷物―――

私がいなければ



ママも―――


パパも―――


お兄ちゃんも―――


幸せだったのに。






そうよ、皆を早く解放させてあげなきゃ。
私がいなくなれば、皆幸せになれるはず。

私が明日まで、生きれば
明日まで、みんな苦しむ。



それなら―――


それなら―――













苦しくなる胸―――

視界が微かに歪み始め、暗くなっていく―――

窓の外に浮かんでいたお月様。

それももう、目が霞んで何がなんだかわからない。


私、死んじゃう。


怖い

・・・怖くなんかない!

怖い

・・・怖くなんてない!!


彼女の手に握られた“いのちづな”

これを押せば、私は助かるかもね。


でも、絶対押しちゃだめ。


もう夜だもん。

これを押せば、

ママも

パパも

お兄ちゃんも

起きちゃうもん。




私の所為で

心配させちゃだめ―――

困らせちゃだめ―――











狭い病室に無機質な音が響いた。











最後に目の裏に映ったのは

桃色の髪の女の人。
紫の髪の男の人。
そして私と同じ緑の髪男の子。

皆笑ってたの――――






サヨナラ―――

私の家族――――
























「と、いう夢を見たんだ。」


自慢げに言うクオ。

はぁ？

人の誕生日にそんな夢を見るか、普通。

勝手に殺すなよ、人を。


「クオ、あんたタヒりなさい。
さぁ早く、ここで。」


私の口から飛び出した言葉に驚いたのか、顔を強張らせるクオ。


人の誕生日に、変な夢をみたあんたがいけないのよ。

私の変わりに、さぁ早く―――





ＥＮＤ