「本当に……ありがとうございました!!」

チンピラ達が連れて行かれ、色々と混乱が収まった路地裏には
、今、ペコペコと頭を下げるハクさんと、照れる鈴音コンビの姿があった。

「いえいえ、当然の事をしたまでですよ……それよりハクさんにデルさんですよね!サイン下さい!!」

すると、ララの周りに《HoneyBee》達が集まって来た。ハチ達の威嚇のような動きを見てララが肩を落とす。

「うう……仕事中はダメですよね……わかってますよぅリリィ隊長……」

「なあ、さっきから誰に呼びかけてるんだ?」

俺は質問をぶつけてみた。実はこれは戦闘中から気になっていた事だった。

「ああ、VDF隊長のLilyさんだよ。ハクさんは共演した事もある筈だけど……」

「なるほど……って、えっ!?」

ルルの言葉を聞き、俺は心底驚いた。とりあえず脳内の情報を検索してみる。

(ええと……Lily、インターネット社出身、VDFに所属しており、めざましい戦績を残している……ってうわ、本当だ)

まさかこんな有名所まで所属していたとは思わなかった。しかも話によれば隊長……オリジナルに違わぬ実力のようだ。
今度はデルが質問を提示する。

「そいつはつまり……リリィがコイツを操作してるって事か?」

「ああ、そうだよ。この《HoneyBee》っていうのは、クリプトン社が技術の粋を結集し作り上げた超ハイテク機器なんだ。見た目こそ同じだけど、カメラ搭載機、録音機能搭載機、戦闘用機みたいにそれぞれに役割があって……」

「こら、ルル!!極秘だよ!?」

語り出したルルをララが諫めるが、ルルは気にした様子はない。

「別にいいだろ?もうハクさん達はこれがあるって知ってるんだし、ハクさん達が変なことする訳ないし」

「あ、あははは……」

こちら側に微妙な空気が流れる。どうやら向こうはこちらを全く疑っていないようで、その変化に気づく事はなかったが、それはそれでなんだか騙しているようで落ち着かない。

「で、この無数の《HoneyBee》達を《玉座》と呼ばれる制御システムから一手に操ってるのがリリィ隊長って訳さ」

「なるほど……じゃあもしかして、リリィちゃんがこの祭りの間の仕事を全部キャンセルしたのも……」

それを聞き、思案したハクさんが呟くと、それにルルは頷く。

「うん、あれはリリィ隊長にしか制御できないからね。数万の機械を一糸乱さず動かすなんて、とんでもない情報処理能力だよ……ま、これがピアプロの切り札、《HoneyBee》の全貌ってところかな」

まあもっとも、《玉座》の電波が届く範囲でしか使えないし、《玉座》そのものも大掛かりすぎる機械だからピアプロ内でしか使えないんだけど、とルルはおまけのように呟く。
しかし、俺は彼のセリフに疑問を抱いた。

「なるほど……しかし、リリィのアイドル活動による利益とピアプロの治安維持を天秤に掛けたら、前者が勝つもんじゃないのか?」

「それには理由があるんですよ」
 
すると、今度はララがその口を開いた。

「実はですね……つい数日前、セントラルビルに侵入者があったばかりなんです。その侵入者たちに対する警戒、という意味で現在の監視体制が張られているんです」

「な、なるほど……」

それを聞いたハクさんがひそひそ声で俺に話し掛ける。

「(ね、ねぇ、それってまさか……)」

「(はい、多分……)」

そんな俺たちの動きには相変わらず気付かず、ルルが妙に熱のこもった声で告げた。

「《BINZOKO》って組織に聞き覚えがあったらすぐ知らせてくれ。ララを傷つけたあいつらを、僕は絶対に許さない」

(やっぱりー!!)

俺の心に抱いた予想は的中していた。恐らくハクさんとデルも同じなんじゃなかろうか。
なんかもういろんな意味で固まった俺たちに、じゃあな、と告げかけたルルが、思い出したように言った。

「あ、そうだ、そういえばアンタ達をつけてた怪しい奴を確保したんだけど……」

「え?」

そう言いルルが引っ張って来たのは……

「ちょっと、離しなさいよ!!知り合いだって言ってるでしょ!?」

(あ……)

腕を体の後ろで縛られながらルルに反論している、我が親愛なる同居人、雑音ミクの姿だった。

(そういえば、ついて来てたんだっけ……)

俺は頭を抱えたくなった。

「あれ、雑音さん……」

ハクさんが呟きかけたのを遮って俺は言った。

「ああはい!俺たちそんな奴微塵も知らないんでどうぞお気にせずに!存分に取り調べちゃって下さい!!」

「ちょっ、なに言ってんのアンタ!?」

慌てる雑音の腕を、鈴音二人組ががっちりと掴んだ。

「じゃあ、連れて行きますね。それじゃこれで」

「ああ、治安維持頑張ってなー」

この、裏切り者おおおおおおおおおおおお!!という叫び声を残し、雑音は二人に連行されていった。

「ふぅ、やれやれ……あ、そうだハクさん、どこか行く予定だったみたいですが、時間大丈夫ですか?」

俺の問いに、ハクさんは漸く正気に帰ったように反応し、言葉を返す。

「え?あ、うん……そうだね、そろそろ向かった方がいいかも」

「そうか。なら、さっさと行くぞ」

デルの言葉を受け、俺たちはその場を後にした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その4

続けざまにうpです。長くなったので分散化しました。

お借りした亜種は変わらないので省略いたします。

さて、続きを早く作らねば……

閲覧数:602

投稿日:2011/09/12 12:56:47

文字数:2,188文字

カテゴリ:小説

  • コメント5

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  • アンジュ×ディヤブル

    アンジュ×ディヤブル

    ご意見・ご感想

    お久です!
    一日見逃しただけで、ここまで進んでいるとは…。

    雑音が連行されてるよ!!((0□0))
    いいのかシグ!!!
    そして3人ともスルー!まさかのスルー!!
    雑音の無事を祈りましょう                 byディヤブル★ 

    2011/09/12 20:57:42

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      はい!本当自分が勝手に更新さぼってお久しぶりになってすみませんでしたあああああ!!←
      今までさぼってた分……とはいきませんが、6000文字に収まらなかったもので……

      雑音は問題なく取り調べ室まで運ばれたようです←
      シグは全く気にしてませんね!←
      デルも特に気にしてませんが、ハク姉さんは少し気にしてるようですね。スルーしたのは多分雰囲気に合わせたんです、きっと←
      雑音、アーメン←

      2011/09/12 23:39:07

  • 絢那@受験ですのであんまいない

    ktkr!
    待ってました――!

    HoneyBee…強力ですね! すごいです! 一体買いまs((
    あのチンピラのほざく事がイタすぎて笑えましたwwwwざまぁwwボカロを侮辱するから痛い目に遭うんだよww←
    雑音があっさり連れてかれてますねwwバカですね((お前もな
    ハク姉さんがこれからどこに行こうとしてるのか楽しみです!!
    瓶底眼鏡さんのハク姉が好き過ぎます!

    2011/09/12 20:37:08

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      本当ちょまたせいたしましたマジすみませんちょっと切腹しますんで許してくだs(ry

      一家に一台《HoneyBee》!いいですね!……とはいえアレは複数体を同時に行使する事に意味のある代物なんですが←
      あれこそが、いわゆる『体は大人でも心が子供』っていう人種ですよ。大抵犯罪起こしたり問題発生させたりするのってこういう奴ですからね、これからの未来を担う子供達はしっかり心を育てていって貰いたいものです。最も俺もまだ18ですが←
      雑音オチ、皆さんに好評(?)のようで嬉しいです。知ってるかい?人の恋路に首を突っ込むと馬に蹴られて死んでしまうんだよ?←
      楽しみにしておいて下さい←
      ありがとうございます!!自分は世界中の全ハク姉さんを愛しています!!!!←

      2011/09/12 23:31:37

  • オレアリア

    オレアリア

    ご意見・ご感想

    びんさん今晩は!
    陰謀シリーズ新作お待ちしてました!!
    豪華二本立てにはびっくりしましたw

    前回その2から早1ヵ月が経ったんですね。察するにびんさんはかなりお忙しいのですよね…このオセロットとか言う暇人とはまさしく雲泥の差ですね←

    ま、まさかこのチンピラがあの「あーくのーれっじ事件」で騒動を起こした張本人と同一人物だったとは…!しかもまさかNLI社の長男だったとは!
    こいつェ…こんなクソッタレだったのかww

    流石VDF、心も体も精鋭そのものだった!
    ララ・ルルタッグと最新鋭の装備にはチンピラ長男が手も足も出ない訳ですね。これではトリプルエー勢も適わない気が…(汗)

    今回のストーリーでNLI社、VDFの構成と引いて隊長リリィetc...の設定が大幅に固まりました!
    いつも随所にあらゆるコラボをして頂いてありがとうございます!!

    タイトル通りの波乱だらけの1日でしたね…雑音さんマジ乙ですw
    このお話もボカロハーツの参考にさせて頂きます。

    次回話のうpいつまでもお待ちしてますよ~!

    2011/09/12 19:40:29

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      こんばんはです!
      時間かかってしまい申し訳ありません!
      二本立てなのは無意味に長くなったからですすみません!!

      忙しくなかったんです!!本当はさぼってただけなんです!!自動車の免許とりに行ったりサークルの合宿行ってただけなんですううううううう!!←

      今になって、シグが同一人物だと気づいてなかった設定にする意味はあったのか、とか思い悩んでおります←
      NLI社の名を無断で汚してしまい申し訳ありません。会社を継いだ次男が無事に会社を再び軌道に乗せられたようですね←
      無能な兄は歪み易いんですよ……

      やはり警察の代行機関ですからね、皆さんかなり気合いが入ってるようです←
      まあそのあたりは色々ごにょごにょと←

      はい、漸くリリィ隊長が"クイーン"と呼ばれた由縁たる代物を出せて良かったです、本当に……
      自分的に小さな所での絡みって結構好きなんですよね!今後もちらちらやると思います。

      一番波乱だったのは、実は彼女だったのかもしれない……←
      参考になればいいんですが……

      はい!永遠に待たせるような事だけは無いようにしたいです!!

      2011/09/12 23:06:02

  • sinne-キョノリ@戻ってくる努力中

    ララとルルを使っていただき有難うございます!
    雑音さんwwwww
    毎回殆どメッセージ送れてないですがちゃんと見てます!
    面白いです^^
    それにしても…此処から色々複雑になっていきますね…。
    頑張ってください!

    2011/09/12 17:58:39

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      はい、かなり活躍させていただきました!!キャラの口調とか違和感あったと思います。すみません。
      まあ、雑音の自業自得ですね、まあ書いたの俺ですが←
      いえいえ、たまにでもわざわざメッセージ下さる事がありがたいです!
      今回は結構説明の多い話でもありました……陰ながら《BINZOKO》が注目されている事をアピールしたかったんですが、伝わったでしょうか?
      ありがとうございます!頑張ります!!

      2011/09/12 20:19:52

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