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(…今しかない!)
そう考えた私は、廊下の角で身を潜めている。呼吸を殺し、腰の拳銃に手をあてる。暗がりに包まれた廊下の奥から徐々に近づいてくるのは、健音テイ。こうして敵どうしとして再会するなんて、想像もしなった。私の数少ない友達と…
テイとの出会いは、いつだったか。そうだ、私がいつものように、ま...「VOCALOID HEARTS」~第17話・真紅に染まる記憶~
オレアリア
「本当に……ありがとうございました!!」
チンピラ達が連れて行かれ、色々と混乱が収まった路地裏には
、今、ペコペコと頭を下げるハクさんと、照れる鈴音コンビの姿があった。
「いえいえ、当然の事をしたまでですよ……それよりハクさんにデルさんですよね!サイン下さい!!」
すると、ララの周りに《HoneyB...小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その4
瓶底眼鏡
「え?な、何?」
「ハクさん、後ろに」
俺はすぐさま、オドオドしているハクさんを庇うように前に出た。とりあえず、なにがどうあれハクさんにだけは指一本触れさせないようにせねば。
チンピラは俺たちの顔をニタニタと見つめ、挑発するような声色で言った。
「まさか、こんな所で会えるとはなぁ……」
「……」
(...小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その3
瓶底眼鏡
「……」
「……」
始まってしまった三人デート。
ハクさんを真ん中に、俺が左、デルが右に並び道を歩く。にこにこと笑うハクさんを挟み睨みを効かせあう俺とデルという、なんとも修羅場な光景が繰り広げられていた。
「ところで……」
緊張感漂う中、デルが口を開く。視線は俺を睨んだままだが、問いかける対象はハク...小説【とある化学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その2
瓶底眼鏡
はちゅね像とは、ピアプロで一番大きな広場の真ん中に鎮座する、巨大なはちゅねミクの銅像のことだ。
何かの記念に配置されたらしいのだが、とにかく目立つのでピアプロで生活する人々やボカロ達からは渋谷のハチ公みたいにわかりやすい待ち合わせ場所という認識で定着している。
その例に漏れず、俺もまたここでハクさん...小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その一
瓶底眼鏡
「……」
街のざわめきが遠い。
パフォーマンスを行っていた商店街を離れ、住宅街まで戻った俺が第一に思ったのは何故かそんな事だった。
夜の帳が降り始める中、俺が立つのは一つの宿舎の前。
普段俺が日常生活を送っているものより数段綺麗なそれは、亜種の中でも凄まじい人気を誇る者のみが生活を許されている、言わ...小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その三
瓶底眼鏡
量産化祭中には、様々なイベントや出し物がそこら中で行われている。
その大多数は、初音ミク人気に惹かれやってきた客に自分たちを知って貰おうと考えた亜種達が開いたものだ。そしてそういった中に混じり、また、《男の娘☆ボカロ同盟》も
活動をしていた。
「リッちゃーん!こっち向いてー!!」
「サイン下さいサイ...小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その二
瓶底眼鏡
3、2、1、ポーン。
『たった今、初音ミク量産化祭が開催されました!今日はまだ一日目ですが、既にピアプロの中は人でいっぱいです!!この日の為に全国、いや世界中からボカロファンが集まったということで……』
ピッ。
『……ょうは、長年ボーカロイドについて研究をしてきた、高坂晋太郎教授にお越し頂きました。...小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その一
瓶底眼鏡
「いやーみんな、おーつかれさまー!!」
数時間後、セントラルビルを脱出、散開したのち、俺たちは我らがアジト(因みにアジトは宿舎の地下にある。本当にいつ作ったんだ)に再集結していた。
「最後の方でハプニングもあったけど、なんとか無事に目的は果たせた……よって今回の作戦は大・成・功ー!!やったぞ野郎ども...小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その3
瓶底眼鏡
草木も眠る丑三つ時、ピアプロセントラルビル内部。非常灯の頼りない緑の光に照らされた廊下の上に、怪しげな三つの影が浮かび上がる。
「こちら実行A班。現在地七階、3-Fです。指示を」
『こちら指令班。周囲に生体反応なし、そのまま予定通りのルートで3-Dまで向かって。その後、連絡があるまで待機』
「了解し...小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その2
瓶底眼鏡
近未来的な装飾の成された薄暗い部屋の中に、円卓を囲む十数人の人影があった。
ケータイをいじったり、隣と話し込んだりと、皆一見思い思いに過ごしているように見えるが、その中には確かに緊張した空気が漂っていた。
「……さて」
俺の右隣の黒髪ツインテールの少女、雑音ミクが発した一声に敏感に反応し、皆が静まり...小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その一
瓶底眼鏡
「おお、もうこんな時間でゴザルか……」
「これでお別れなのは名残惜しいスねー……でも仕方ないス、じゃあね、シグナちゃん!」
「はい、行ってらっしゃいませー……はぁ」
ヲタ二名を見送り、俺は漸く一息ついた。個室にいる間ほとんどぶっ続けで歌い通しだった。常人なら喉を痛めるだろうが、そこは曲がりなりにも俺...小説【とある科学者の陰謀】第七話~最悪の一日~その二
瓶底眼鏡
ピアプロの商店街の中でも目立たない一角にある、ボーカロイドの経営するメイド喫茶、通称ボーカメイド喫茶「あーくのーれっじ」。
開店前のこの店の更衣室から、けたたましい笑い声が響いていた。
「サイッコー!シグもうあんたサイッコー!!ぷくっ、ぷくくく……アハハハハ!だめ、もう耐えらんないアッハッハッハッハ...小説【とある科学者の陰謀】第七話~最悪の一日~その一
瓶底眼鏡
(なんなんだ、こいつら……!)
ゲームのコントローラーを握ったまま、俺は戦慄にうち震えていた。
「つ、強すぎるだろ……」
現在、画面では他にミク、リン、レンの使用する四人のキャラが入り乱れている訳だが……俺の使用するキャラ「偽装英雄 シグルド」は、他の三人とは距離を置いた場所に退避していた。
(様子...小説【とある科学者の陰謀】第六話~電子の歌姫~その二
瓶底眼鏡
「ここが、鏡音の家か……」
ピアプロの敷地内の中でも「住宅街」と揶揄される、ボカロや一部のピアプロ会員たちが住むマンション群が建ち並ぶ一角に、どこか場違いの感すらある一軒家が幾つか建っている場所がある。初音ミクを始めとする、俗に言う公式ボカロ達が暮らしている家々だ。
その一つ、表札に「クリプトン公式...小説【とある科学者の陰謀】第六話~電子の歌姫~その一
瓶底眼鏡
「で、したい話ってのはなんなんだよ」
商店街の一角のベンチに腰掛け、俺は切り出した。
1ヶ月後に初音ミクが量産化される事を記念した祭りが開かれるという事で、街の中は既に様々な装飾が施され、華やかな雰囲気を醸し出している。どうでもいいがあちこちに貼られた初音ミクのポスターを見る度に雑音の機嫌が悪くなる...小説【とある科学者の陰謀】第五話~青いマフラーなびかせて~その二
瓶底眼鏡
「きゃああああ!!助けて、誰か!!」
薄暗い路地裏に、絹を裂くような悲鳴が響き渡る。
「クックック……無駄さ、ここには誰も来れない、そう、だぁれも、ね……さて、そろそろ眠らせてあげるよ!!」
いたいけな少女を取り囲む無数の陰。その中でもリーダーらしき怪人が、カマになった腕を振り上げる。まさしく絶対絶...小説【とある科学者の陰謀】第五話~青いマフラーなびかせて~その一
瓶底眼鏡
「……」
(……どうする……)
俺に許された選択は2つ。
一つは普通に一言残す事。俺の面子は保たれるが、どんなリスクがあるかわからない。最悪もう一度死ぬ。
一つは組織の宣伝をする事。俺の命は助かるが、無数のギャラリー、そしてハクさんに狂言を吐く変人と認識されかねない。最悪死ぬ。社会的に。
即ち、どっ...小説【とある科学者の陰謀】第四話~天国と地獄~その二
瓶底眼鏡
こうして、俺の歓迎会が始まった訳だが……
「なんつう規模だよ……」
数にして200は下らない亜種ボカロ達が、順番に舞台に上がって歌や踊りを披露してゆく。今は初音ミクを男にしたみたいな奴(おそらくは初音ミクオ)と、KAITOを女性化したみたいな奴(おそらくはKAIKO)がカンタレラなる楽曲に合わせ踊っ...小説【とある科学者の陰謀】第四話~天国と地獄~そのー
瓶底眼鏡
「ここは、確か商店街だっけか……」
俺の視界には、様々な店が建ち並び、人やボーカロイドが騒々しく行き交う光景が映っていた。
なんでピアプロの敷地内にこんなものがあるかといえば、ピアプロの敷地が広がるにつれて仕事が忙しくて外までろくに出かけられない人やボカロ達が増え、ならいっそ中に店を作らせてしまおう...小説【とある科学者の陰謀】第三話~黄色の二人、現る~その二
瓶底眼鏡
「さて、と。どこから回る?」
「お前の好きに案内してくれよ。ところで……」
俺は宿舎の隣にあった建物を指差した。
「ありゃなんだ?宿舎っぽいが随分こっちとは趣が違うな」
「ああ、あれは私たち亜種の中でも大人気な……いわばVIPの宿舎よ。見た目通り中もこっちより豪華だわ。一部屋に二人押し込められたりも...小説【とある科学者の陰謀】第三話~黄色の二人、現る~その一
瓶底眼鏡
(汚い部屋だな……)
部屋の中は酷い惨状を呈していた。
床には雑誌やお菓子の空き袋などが散乱している。流し台は洗っていない食器が乱雑に積まれ、タンスからは強引に押し込められた衣類が飛び出している。何故かベッドの上はきれいだったが。
(掃除できないロボットっているんだな……)
そういえば、実体化亜種ボ...小説【とある科学者の陰謀】第二話~潜入~その二
瓶底眼鏡
目の前の光が晴れると、目の前には見慣れた日本の街並みが広がっていた。
「……うおっと」
若干バランスを崩し、踏みとどまる。アスファルトの地面が酷く懐かしく感じられた。
(ここは……)
俺が今いるのは大通りに繋がる細い袋小路のようだ。大通りに出て右に少し行けばピアプロにつく、という生前(?)の俺が知る...小説【とある科学者の陰謀】第二話~潜入~その一
瓶底眼鏡