量産化祭中には、様々なイベントや出し物がそこら中で行われている。
その大多数は、初音ミク人気に惹かれやってきた客に自分たちを知って貰おうと考えた亜種達が開いたものだ。そしてそういった中に混じり、また、《男の娘☆ボカロ同盟》も
活動をしていた。
「リッちゃーん!こっち向いてー!!」
「サイン下さいサイン!!」
(凄い人気だな……)
大道芸のように道端でパフォーマンスを行うリツの姿に、道行く多くの人が惹きつけられている。亜種の中でも有名な彼女……いや彼の人気はやはり高い模様だ。
「みんなありがとう。是非、他の娘のパフォーマンスも見ていってね。新しい仲間も加わったから」
そう言ってリツが引っ込むと、一気にギャラリーは移動を始めた。目的があまりにわかりやすい。
《男の娘☆ボカロ同盟》的には少々残念な事態だが、次パフォーマンスをやらされる期待の新メンバーの身からするとありがたくはある。
何故俺がそんな事態になったかと言えば、リツのしたがった『手助け』とは、俺が躊躇いなく女装できるようにという事だったのだ。余計なお世話以外どう表現してやればいいのか。
「さて、次はこの同盟に今日から増えた新しい仲間、語音シグナちゃんのパフォーマンスです。みんな、是非見ていってね!!」
司会をするラミアの声を受け、俺はさっきまでリツの立っていた場所に向かう。もはや羞恥心というか男としてのプライドはズタズタで、さして視線も気にならない。
それもまた悲しいよな……と考えていると、突如俺の耳朶を聞き覚えのある声が叩いた。
「シグナちゃーん!会いたかったスよー!!」
(げぇっ!?)
声の方向に向き直ると、そこにはいつか(具体的には某メイドカフェ内で)見たヲタ二人組の姿が。
「まさか本当に会えるとは……いやー、流石峰松氏!ボカロ関係ならどんな情報でも見逃さないでゴザルな!!」
「いやいや斎藤氏こそ、この祭りの間に開かれる全てのイベントを頭に入れているとか、並みの人間にはできないスよー!」
薄気味の悪い笑みを浮かべつつお互いを称え合う峰松&斉藤。しかし、俺が実は男だったという事実に関しては気になっていないのだろうか……
「シグナちゃん!早く!!」
「あ、はい」
急かされ俺は慌ててマイクを取り、歌を歌い始めた。
◆◆◆
パフォーマンスを終えた俺に、拍手が投げかけられる。歌っている間は気付かなかったが、若干ギャラリーが増えているような気もする。
「あー、やっぱりいいスねー、この声がもう一度聞けて良かった……」
「全くでゴザルよ……」
「そ、そんな大層な……」
「いや、良かったよ?シ・グ・ナ・ちゃん♪」
至福の表情を浮かべるヲタ二人に引いている俺に、この場に絶対にいない筈のボカロの声が掛かった。
「……ラミア、ちょっと空けていいか?こいつと話がある」
「え?あ、雑音ちゃん!」
驚きの声をあげるラミアを置いて、俺は今回の祭りの中心人物によく似たそのボカロを近くの路地裏に引っ張っていった。
「何やってんだお前……部屋から出ないつもりじゃなかったのか……」
「語音シグナちゃんの活躍を見逃せる訳ないでしょー?私ファンだしー♪」
「……わかった。お前の趣味の悪さは改めてよくわかった。それはともかく……」
そう言って、俺は雑音の後ろの数名のボカロ達を見やる。写音ミラーに霊留キリアと、BINZOCOの女性陣が揃い踏みだ。そして、何故かリツの姿もあった。
「あんたらは何しに来たんだ」
「何しにって……シグナちゃんの活躍を見に来たに決まってるじゃん!!」
「そうだよ!私たちついさっきファンクラブも立ち上げちゃったんだから☆」
「なにいいいいいい!!?」
ミラーの口から明かされる衝撃のカミングアウト。キリアはともかく(←失礼)ミラーは雑音の悪巧みに付き合うような真似はしないと思ったんだが……
「ひどーい!本気で応援してるのにー!!」
そう伝えると真顔で抗議された。どうやら本気らしい……が、だとしてもなんだか複雑な気分になるのはきっと仕方のない事だろう。
そんな微妙な表情の俺を見て、雑音ががははと笑った。
「いやー、やっぱりアジトで歌ったのはデカかったみたいね!良かったじゃない人気が出て!!」
「いや、お前が言うと本気で皮肉にしか聞こえん。それにしたくもねえ女装をした俺の人気が出ても個人的には悲しいだけだっつうの」
「……」
途端に、周りの女子ボカロ達がまるで『うわーこいつやっちまった』という表情で押し黙る。
なんだ?と彼女らの様子を確認した時、俺はその原因に気付いた。
「あ……」
波音リツだ。そう言えばいたんだった……発言しないものだからすっかりいたのを忘れていた。
リツは微笑んでいるのに何故か悲しそうな表情で呟いた。
「……そっか。迷惑だったか」
「いや、そのだな、まあ、そうなんだが……」
「ごめんね。それじゃ」
なんと声をかけていいか悩む俺にそれだけ言い、リツは路地裏を出ていった。
その瞬間、BINZOCO乙女三人衆がナイフのように鋭い視線を投げかける。
「シグ君……酷い……」
「ちょっと、あたし見損なった……」
「最低最低とは思ってたけどここまで最低とはねー……」
「うわああああ止めて!俺だって流石に申し訳ないと思ってるからああああ!!」
耐えきれなくなり、俺は頭を抱えて地面にうずくまった。
……どうして、こうなった……?
小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その二
皆さん、ちょまたせ(←超お待たせしましたの略)いたしました、更新です。
この一週間の間、暇が出来ては悩んでDIVA2をやって……を繰り返して漸くここまできました。さり気またその三まで突入しちゃいましたが勘弁して下さい、いや本当にすみません←
では、今回お借りしました亜種の紹介を!!
・azuki×nagisaさん
写音ミラー(http://piapro.jp/t/e1qf)
虚空音ラミア(http://piapro.jp/t/qarh)
・此花ヴァンニーさん
霊留キリア(http://piapro.jp/t/_FRR)
ありがとうございます!そしてすみません!!そしてこれからもお願いします!!!
また、今回亜種出せなかった皆様、申し訳ありません!!色々考えてはいるんです……この頭がもっと高速で文章を生み出せれば……
まあそれはともかく、シグがリツにやらかしました。次回は謝るために四苦八苦するらしいよ!!←
コメント3
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ブクマつながり
もっと見るはちゅね像とは、ピアプロで一番大きな広場の真ん中に鎮座する、巨大なはちゅねミクの銅像のことだ。
何かの記念に配置されたらしいのだが、とにかく目立つのでピアプロで生活する人々やボカロ達からは渋谷のハチ公みたいにわかりやすい待ち合わせ場所という認識で定着している。
その例に漏れず、俺もまたここでハクさん...小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その一
瓶底眼鏡
近未来的な装飾の成された薄暗い部屋の中に、円卓を囲む十数人の人影があった。
ケータイをいじったり、隣と話し込んだりと、皆一見思い思いに過ごしているように見えるが、その中には確かに緊張した空気が漂っていた。
「……さて」
俺の右隣の黒髪ツインテールの少女、雑音ミクが発した一声に敏感に反応し、皆が静まり...小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その一
瓶底眼鏡
「……」
(……どうする……)
俺に許された選択は2つ。
一つは普通に一言残す事。俺の面子は保たれるが、どんなリスクがあるかわからない。最悪もう一度死ぬ。
一つは組織の宣伝をする事。俺の命は助かるが、無数のギャラリー、そしてハクさんに狂言を吐く変人と認識されかねない。最悪死ぬ。社会的に。
即ち、どっ...小説【とある科学者の陰謀】第四話~天国と地獄~その二
瓶底眼鏡
「……」
街のざわめきが遠い。
パフォーマンスを行っていた商店街を離れ、住宅街まで戻った俺が第一に思ったのは何故かそんな事だった。
夜の帳が降り始める中、俺が立つのは一つの宿舎の前。
普段俺が日常生活を送っているものより数段綺麗なそれは、亜種の中でも凄まじい人気を誇る者のみが生活を許されている、言わ...小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その三
瓶底眼鏡
……空が狭い。
いや、狭まっているのは俺の視界だ。
……空が暗い。
いや、光を失っているのは俺の視界だ。
手のひらにねっとりとした感触がある。
血だ。
自分の身体から鉄臭いアカイロが流れ出ていくのを、俺は不思議な程冷静に認識していた。
(そうか……)
思考の速度が次第に衰えてゆく。気だるい眠気に逆ら...小説【とある科学者の陰謀】オープニング~一人の男の物語の終わり~
瓶底眼鏡
「え?な、何?」
「ハクさん、後ろに」
俺はすぐさま、オドオドしているハクさんを庇うように前に出た。とりあえず、なにがどうあれハクさんにだけは指一本触れさせないようにせねば。
チンピラは俺たちの顔をニタニタと見つめ、挑発するような声色で言った。
「まさか、こんな所で会えるとはなぁ……」
「……」
(...小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その3
瓶底眼鏡
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ご意見・ご感想
景龍夜 活動停止中
ご意見・ご感想
読ませていただきました!!
ミラーって悪巧みに付き合うタイプなんですねww
今後のリツちゃんとシグ君の関係が気になります!!
ブクマもらいます(´∀`*)
2011/07/04 07:19:06
瓶底眼鏡
わざわざありがとうございます!
ミラーはきっと付き合いがいいんですよ!いい娘ですね!!←
さり気皆さんから気にかけて頂いている……これは適当には終わらせられない←
ブクマありがとうございます!期待に添えるよう頑張ります!!
2011/07/04 07:34:24
絢那@受験ですのであんまいない
ご意見・ご感想
シグ…リツを傷付けたな!? こっちk(((黙
峰松と斎藤と分かり合えそうな気がして怖いです←
シグのファンクラブとな! よし、私も入会しまs(ry
PSP欲しいー! 金も欲しいー! CDも欲しいー! さてどうしようwww
ブクマもらいます!
2011/07/04 06:58:47
瓶底眼鏡
大丈夫、責任は取って貰うから!!←
斎藤氏と峰松氏もシグのファンクラブに入会するらしいよ!!←
金だ……金さえあれば……!!←
ブクマ、わざわざこんな駄作にありがとうございます!
2011/07/04 07:28:49
オレアリア
ご意見・ご感想
びんさん今晩は!その二のうp待ってました!
成る程、超お待たせしたの略ちょまたせとは新しいですねwこれは使わさせて頂きたい!
な…りっちゃんとシグとの関係が雲行き怪しくあってしまうとは…!
心許ない発言、シグはどう責任を取るんだ…?
期待したいけど、何だかこの先の展開が怖いです…
DIVA2、いよいよ今秋に2.5がやってくるので楽しみでいっぱいです!
僕はOTHERprojectさんの曲が大好きですが、びんさんは何が好きですか?
2011/07/03 22:31:15
瓶底眼鏡
はいもう本当にすみません。計画性がないせいですぐに行き詰まるんです←
ふと思いついたので使ってみました。気に入って頂けたなら光栄です。
実はこれ、昨日くらいに今まで書いてたの全部消して書き直した内容なんですよね。だから次どうなるか自分にもわかりません。ハラハラしてます←
悪い話にはあんまりしたくないので頑張ります!!
自分も2.5の情報にはもう浮かれっぱなしですね。
自分は今特定のプロデューサーを気に入っているという事は無いので曲名で言いますと、カンタレラにDear、ココロ、右肩の蝶、ダブルラリアットが特に好きですね!!ってあれ?Dear意外みんなミクの曲じゃない←
2011/07/03 23:08:00