「いやーみんな、おーつかれさまー!!」

数時間後、セントラルビルを脱出、散開したのち、俺たちは我らがアジト(因みにアジトは宿舎の地下にある。本当にいつ作ったんだ)に再集結していた。

「最後の方でハプニングもあったけど、なんとか無事に目的は果たせた……よって今回の作戦は大・成・功ー!!やったぞ野郎ども!!これで明日の朝刊の一面は貰いだああああああ!!!!」

雑音がマイクに向けて叫ぶと同時に、ワアアアアアアアアア!!!!と歓声が上がる。
既にアジト内のテンションは下がる所を知らない。

「では、我らが記念すべき第一回大規模作戦の成功を祝って……乾杯!!《BINZOKO》に栄光あれ!!!!」

みなが栄光あれ!と唱和し、宴が始まった。俺はそうそうに輪を抜け、遠くから彼らを眺める体勢に入る。バイキング形式で食事しながらの話題は、やはり今回の武勇伝の語り合いが殆どのようだ。
中にはテーブルの上に立って歌い出す奴なんかもいるが。
その中の一角に目をやると、謎の機械の残骸を抱えたキリアに泣きつかれるクロアの姿が見えた。

「クロアアアアアア……バハムート壊れちゃったああああ……」

「だからって俺に言われても……なんとかしてくれイアル、めんどくせえ……」

「ん……無理」

「ねえクロアアアアアア……あたしの料理皿に持ってきてくれたら泣き止むかも……」

「嫌だよめんどくせえ……あ、そうだ。よし分かった、持ってきてやるよ」

「え!?本当!?」

「ああ。野菜と牛肉をてんこ盛りにしてな」

「鬼いいいいいいいいいいいい!!!!」

キリアにバハムートの残骸を投げつけられ、クロアが吹っ飛ばされる。キリアが助けを求める彼に更に追い討ちをかけるのを、イアルが控えめな声で止めに入った。
うん、楽しそうだ。

「……しかし、なんでバハムートとやらがあんな状態に……?楽勝じゃなかったのか……?」

「途中でいきなりやたらと強い二人組が出てきてね……その人達にやられちゃったんだよ」

「ハクさん!?」

急に背後からかけられた声。この美しいながらもどこか憂いを含んだ声のトーンは彼女以外有り得ない。振り返れば、案の定そこには赤眼で白髪をポニーテールに纏めた麗しの君の姿があった。

「シグ君、隣いいかな?」

「もももも勿論ですとも!」

ありがと、とハクさんは俺の横の席に腰掛けた。もう俺は心臓バクバクだ……今の俺に心臓があるかは知らんが。

「あれ?ハクさんって陽動班でしたっけ?」

「ううん、私は指令班で陽動のオペレートを。無事にできてよかったよ……」

(ハ、ハクさん直々のオペレートだとおおおおおおおおおお!!!!?)

その後ハクさんは陽動班の激闘の内容を語っていったが、そんな事は俺の耳にはもはや届いてはいない。

(なんて羨ましい……ああ、なんで俺は陽動班じゃなかったんだ……あれ、でももし俺が陽動だったらハクさんは実行A班から動いてないのか……?)

「シグ君?」

「あ、すみませんちょっと考え事を……」

俺のセリフになぜかハクさんはくすりと笑う。その笑みがまた俺をドキッとさせる。

「ふふ、シグ君って結構良くぼーっとするよね」

「え、ええまあ、悩み多き身の上なので……」

「あ、シグ君にハクちゃん発見☆」

俺の至福のひとときにまた割り込みの声が入った。前回と違って敵意の乗った感じではなかったので、「おいやめろよ邪魔すんなよー」という表情をぶつける事にした。
顔を向けた先にいたのは、ミラーにレイキ、ラミア、エンマの四人組だ。ミラー、レイキ、ラミアはこちらに笑みを向けているが、エンマのみ自分の世界に入りなにやら「次は仕留める……」などと物騒な事を呟いている。

「二人とも、さっきはお疲れ様でした。デルさんはどうされました?」

「あ、ご丁寧にどうも。デルは『騒がしいのは嫌いだ』って帰っちゃった」

「で、何の用だよ?」

なんだかレイキとハクさんがあのニコチン中毒患者の話題で盛り上がっているのが凄く気に入らないが、必死でこらえ疑問をぶつける。すると今度はラミアが返答した。

「ほら、今みんなパフォやってるからさ、せっかくだしシグ君の演技が見たいかなーって思ったんだけど……あたし良いこと思い付いちゃった」

「良いこと?」

俺の問に笑みを浮かべるラミア。駄目だ、嫌な予感しかしない。
だが、彼女の発想は俺の予想を大きく裏切るものだった。

「ハクちゃんと仲いいみたいだし、二人のデュエットとかいいんじゃないかな?」

「「ええっ!?」」

声を揃えて驚く俺とハクさん。しかし周りはなんだか乗り気だ。

「おお、それは面白そうですね。興味あります!」

「うんうん!さすがはラミアちゃん!!あ、私デュエット名思い付いたよ☆」

勝手に話を進めていく彼らを見ながら、ハクさんが呆然と言う。

「……ど、どうしよう、シグ君……」

「こうなったら、流れに身を任せるしかないですよ……」

◆◆◆

「長細いミク、独特の世界をありがとーう!!盛大な拍手ーっ!!」

いつの間にか随分大型化した『テーブルの上でパフォーマンス大会』、雑音の司会まで付いて大盛り上がりだ。というかまた仕切り役とは……雑音はそういう立ち位置が好きなのだろうか。
壇上からえもいわれぬ表情で降りてゆく棒化ロイド。あのへんてこな演技で場の空気を一気にしらけさせない辺り、雑音の司会力が凄まじい事はわかるのだが。

「さて、次のパフォーマンスをしてくれるのは……なんと!!あのボヤキロイド弱音ハクに、我らが《BINZOKO》の筆頭団員、語音シグだあああああああ!!!!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
湧き上がる大歓声、引きあがるボルテージ。
張りぼてで微妙に隠された空間で、ハクさんが胸を押さえる。

「どうしよう……死んじゃう死んじゃう死んじゃう……」

「ハ、ハクさんはそれでもこういう場を経験したことはあるんじゃ……」

「あるけど……こんな格好は初めてだよ……普段とは別の意味でキツい……」

なんだかこのまま消えてしまうんじゃないだろうかという雰囲気すら漂わせるハクさん。確かにこんな服装をするのは初めてだろう……。俺はハクさんを励まそうと声を上げた。

「安心してくださいよ、良く似合ってますから!!素敵ですって!!」

「そうかな……ならいいけど……あ、シグ君もよく似合ってるよ!」

(うっ……)

それを聞き俺の気持ちが落ち込む。
ハクさんも俺を励まそうとして言ってくれているのはわかる……わかるんだが、今だけは逆効果だ……
だが、それを悟られる訳にはいかない。俺は全力で口角を引き上げ、笑みの形を作った。

「そ、そうですか……あ、ありがとうございます……」

「まさにまさかのコンビ!!では登板願うぜ《シグナル・ホワイト》!!」

シグナル・ホワイト。それが、俺たちのデュエット名だ。
雑音の呼び出しに、いよいよ覚悟を迫られる。

「うう…い、行こう……!」

「はい!」

決死の思いで俺たちはテーブルに登った。
ギャラリーがテーブルの上の人影を認めた瞬間、沈黙が走る。

(やっ、やっぱりこの格好がまずかったか……)

そう、ラミアのステキコーデセンス(+雑音ミラーキリア等の悪乗り)によって、俺の姿は可愛らしい女子のような姿に、ハクさんの姿は超かっこいいイケメン男子のような姿に変えられていたのだ!まあ普通にハクさんは似合ってたんだけどね!!

(これは外した、これは外した、これは外したあああああ!!)

ひゃあああああっほおおおおおおおう!!完全に俺の女装に皆さん引いておられるのが手に取るようにわかるぜええええええええ!!!!やばい、隣のハクさんが怖くて見れない……

(本当に申し訳ない……俺のせいで……!)

俺が切腹を覚悟しかけた、その時。

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!

一際激しい声援が、俺たちを包み込んだ。

「なんだ、これは……ウケてる、のか……」

「さ、さあ……」

この観客達の反応に、これはこれで当事者二人は呆然とするしかない。
歓声が収まり始めたところで、雑音が口を開く。

「よーし、覚悟はいいな野郎共!!心して聞け、二人の渾身のデビュー曲!『ちぐはぐ♪ラブロマンス』!!」

微かに目線を交わし、俺たちは呼吸を合わせる。
ピアプロの地下、薄暗い小さなステージの上で、こっぱずかしい名前の曲を、赤裸々に歌い上げた。

◆◆◆

次の日の朝

「はああああああ!?嘘でしょおおおおおおおおおおおおおお!!!?」

安眠の世界に突入していた俺は、雑音の悲鳴により覚醒を余儀なくされた。なんかこんな事前にもあった気がする。

「どうしたよ……?」

「これよ!!」

奴が突き出してきたのは、今朝の新聞だった。

「何々……?『イノセンス・クリエーション社、革新的新技術を発表』……これがどうかしたのか?」

「どうかしたも何も、あれだけ派手にやったのに殆どあの事件の事が書かれてないのよ!?」

「い、言われてみれば……」

一面どころか、ページをめくれどめくれど該当の記事は見つからない。ようやく該当らしきものが見つかったが、殆ど記述もなされていない小さな扱いだった。

「本っ当に信じらんない!!私ちょっと文句言ってくる!」

「落ち着け!そしてまずは着替えろ!」

「あっ……ちょっ、何見てんのよ!!」

指摘されようやく自身が寝間着のままだと気づいた雑音は、ピシャリと襖を閉めた。

(なんだかなあ……)

とりあえず俺も着替える事にする。なんかデジャヴ……とか考えていると、ふと作戦中のあの黒ずくめが思い出された。

「そういや、ありゃなんだったんだ……?」

しかし、奴の正体、今となっては確認する手段もない。ただ一つ言えるのは……

「やはり初音ミク量産化祭、荒れそうだな……」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その3

これで第八話は終わりです!!無駄にながくてすみません!!

今回お借りした亜種については、基本その2と同じなのでここでは省略させていただきます!すみません!!

因みに物語内に出てくる「ちぐはぐ♪ラブロマンス」は自分が適当に曲名だけ考えました。誰か中身作ろうぜ!!←

さて、次も頑張りますよ!!

閲覧数:323

投稿日:2011/06/11 17:45:48

文字数:4,150文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

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  • sinne-キョノリ@戻ってくる努力中

    こんちわー
    正体ってことは・・・・もうあれと重なり始めるって事でしょうか・・・・?。
    ああ、次回が待ち遠しいです。
    まあ、大体、小説の主人公って、こんなもんだと思います。
    私が今書いてる小説の主人公も・・・ね。
    すっかりファンになっちゃいました。これからも頑張ってください。

    2011/06/11 17:32:16

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      こんにちは!!
      え?ってうわああ!!タイトル間違えてたー!!!!上げる時半分意識眠ってたから……なんで今まで気付かんかったorz←
      次回はなんとかしてsinneさんの亜種を出したい……!!頑張ります!!
      ですね……でも、主人公の受難率では他に負けない自信が……!!←
      sinneさんの小説もチェックしますね!
      おお、ありがとうございます!頑張ります!!

      2011/06/11 17:42:51

  • 絢那@受験ですのであんまいない

    前のも読みました~。こっちでコメさせてもらいます。

    いよいよシグが『ボカロ☆男の娘』に…! ってそこじゃないですね。
    『ちぐはぐ♪ラブロマンス』www名前で吹いちゃいましたwww
    ハクとシグとの中に幸あれ!(笑)

    新聞の片隅にしか載らない…うーん、悲しい><
    次回wktkです。

    2011/06/11 12:50:15

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      はい、コメありがとうございます!

      まあほぼ強制入会なのは間違いないですね……シグどんまい←
      思いつきをぱっと使いました。一応『ちぐはぐ』は『シグハク』を文字ったつもりです←
      幸あれ!思い返せば何気に今回はハクにも受難だった……ごめんねハク。シグはいいけど←

      何故そんな扱いなのかにもちょろっと触れるかも←
      ありです。でもその前に何かやる可能性が……←

      2011/06/11 16:43:40

  • オレアリア

    オレアリア

    ご意見・ご感想

    瓶底眼鏡さん今日は!
    うおっ!今回はかなりの長編ですね。前回のその2も含めて拝見させて頂き、同時にブックマークもさせて頂きました!

    その2、これはまさしくステルスアクション…!
    某本格的潜入ゲーム・メ○ルギアを想像しながら読んでましたw
    シグとデル、やはりこの2人は何だかんだ言って良いコンビに違いない!!
    そしてシグとハクはもっとくっつちゃえ~!(ry

    ま、まさかのURLにての作品ご紹介ありがとうごさいます!!
    こうなったらコラボはもう成功させるっきゃないですね!

    ああ、早く第9話が見たい…次回も楽しみに待ってますよ!

    2011/06/11 12:35:29

    • 瓶底眼鏡

      瓶底眼鏡

      はいこんにちは!!
      おお、ブクマまでわざわざありがとうございます!

      潜入といったらメタル○ア……しかし実は自分はまさかのやったことないという←
      性格が似てますからね、実は息も会うんですよ……本人達は絶対認めませんが←
      この二人の今後については色々考えていますよー、これからもいじりますよー←

      自分の作品を宣伝してもらったお礼です!やはり紹介せねば!!
      はい、頑張りましょう!!

      2011/06/11 16:28:52

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