<Dear My Friends!第2期 第10話 接触>

(次の日の朝 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所・食堂)

 カチャカチャ

 各人、とりあえず睡眠はとれたようで、朝食のために全員が食堂に集まり、今回は会議無しで、しっかり朝食をとっていました。

めぐみ:えっと、皆さん、一応スケジュールだけ伝えておきます。出航は明後日の朝です。それまでにこの街で各人の買い物を済ませて置いて下さい。魔法系の方は魔法の素など、剣術の方は武器の手入れとか関係物品などの用意をお願いします。朝昼晩の食事用の食料は不要です。こちらで用意します。私と学歩は、その他にガイドに必要なマップとかの物品を揃えておきます。何か質問ありますか?
ルカ姫:はーい、冒険用の物品とか売ってますか?
めぐみ:道具屋がありますので、そちらでお願いします。この街の地図は食後に各自にお渡しします。他には?

テル:いや、我々はいいのだが、イアが問題なのだ。この街に尾行している連中がいるとわかった以上、絶対に一人で行動させる事はできん。イアの戦闘能力は実戦で測定していないのでわからないが、それでも個人行動は危険だ
めぐみ:そうですね。とはいえ、ここの中でずっと待っているのも可哀想です。護衛を付けたいのですが、残念ながら学歩は私と行動を共にしますので、そちら側で護衛をお願いしたいのですが…

アペンド:じゃあ、その3人組を“知っている”メンバーと、もし何かの時に私たちに連絡を付けられる様に、あと一人、護衛を付けるというのは?
めぐみ:すみませんが、それでお願いします

 テルはここの全員を見渡して、何かを決めたらしく発言した。

テル:では、当人と私とリンと…そうだな、腕っ節も欲しいから、レン、頼めるか?
レン:いいですよ。僕がいないと、そのパーティ、物理攻撃に弱そうだからね
イア:皆さん、宜しくお願いします

アペンド:では、護衛もあるし、イアが寄りたいお店もあるだろうから、テルとリンとレンの3人、私に頼める買い物、何かある?
テル:私は大丈夫だ
リン:回復系魔法原料を少し頼みます
レン:研磨剤をお願いします。イアさんでは多分立ち寄らないと思うし
アペンド:OK!
イア:すみませんです…
テル:気にするな。今日は君の護衛と、君自身の買い物がメインだ。乗船した後だと色々大変だろうから、今日は1日、休暇のつもりでゆっくりしていくといいだろう
イア:すみませんがそうさせていただきます

 それを聞いていたルカ姫は、勝ち誇った顔をして、アペンドに目線を移して一言発言した。

ルカ姫:ふっふっふっ、アペンド、じゃあ、その買い物も兼ねて、私のオトモ、宜しくね♪
アペンド:そう来ると思いましたよ。はいはい、オトモさせていただきます
ルカ姫:やったー!
テル:アペンド、ルカ姫のおもり、頼むぞ?
ルカ姫:“おもり”じゃないもん!

 ルカ姫はほっぺたを膨らませて、ちょっとふくれっ面をしたのでした。

めぐみ:それでは各人、準備の方、お願いします

 こうして、集まった面々は、それぞれの準備のために、朝食が終わった後、準備をして出かけたのでした。

***

(同日同時刻 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所付近のカフェ“ピット”)

 その同時刻、あの三人組も、宿の近くのカフェで朝食を取ってました。ゆうまはノートPCでイアを追跡しながらサンドイッチを頬張ってました。ミズキは情報の整理とこれからの計画をチェックしながらカツサンドを口に運んでいました。そして、りおんは…

りおん:はむほむはむほむ

 特に何もしないで、必至になってブルーベリーサンドを食べてました。

ミズキ:りおんちゃん…お腹空いてたの?
ゆうま:いや、多分、食い意地が張っているだけだと思うぞ?
りおん:朝ご飯はちゃんと食べる、これはアチシの座右の銘なのだ!
ゆうま:そ、そうか、でもまぁ、程々にな
りおん:はむほむはむ…

 そんな感じだったが、ノートPCの中のイアのシンボルが、最高裁の食堂から動き出したため、ゆうまはミズキに声をかけた。ミズキはノートPCをのぞき込みました。

ゆうま:奴さん、動き出したぞ。どうやら仕度して外出するらしいな
ミズキ:私たちの事を知っている上で外出するのなら、当然、あの残り二人は最低でも護衛するわね
ゆうま:そうだろうな。で、どうする? ここか宿でも追跡出来るが、やはり宿に荷物を置いて尾行するか?
ミズキ:こちらとしては、この展開はラッキーね。乗船する前に確保できる、たぶん最後のチャンス。確保を前提とした尾行に切り替えましょう。但し! 戦闘にならないことね。ここは言ってみれば私たちにとって“完全アウェー“。騒ぎになったら、乗船すら出来ずに追い出されるからね。深追い厳禁!
ゆうま:了解だ。古来の“ニンジャ”のように、忍んで確保しよう

りおん:はむはむ…。ずずーーーー。ぷはぁ! ご馳走様!
ゆうま:満足したか?
りおん:満足なのだ!
ミズキ:んじゃ、そろそろ行きましょうか
ゆうま、りおん:了解!

 こうして、ミズキ達三人組も、行動に移したのでした。

***

(同日午前10時 インタネ共和国内 城塞都市クリアン 道具屋)

 イア、テル、リン、レンの一行が、外出して最初に立ち寄ったのは道具屋でした。これはイアの意向で、小物などを収納して持ち歩けるポーチが欲しかったのです。

リン:イアちゃん、ポーチだったら私やルカ姫が持っている物でも良かったんじゃないの?
イア:いえ、お金は貰っていますし、何かあったときの“私の痕跡”を見つけやすいように、皆さんにも見て貰って買った物を持ち歩こうと思いまして
レン:なるほどな。良い考えだと思う
テル:で、どんなのがいいんだ? カバン専門店の方が良かったんじゃないか?

 確かに専門店の方がしっかりした物を置いてある、これは正論だ。

イア:いえ、私が買った“道具”も一緒に確認して貰って、それを入れる“袋”みたいな立場で、ポーチを確認して欲しいんです
テル:解った。時間はあるから、ゆっくり見て回ればいい。我々は護衛をしている
イア:お願いします

 こうしてイアは、良さそうな道具とポーチを見て回ったのでした。テル達はしっかり護衛をしていましたが、あの三人組らしき人物は店内どころか、近くにもいなかったのでした。

テル:(どうやら、距離を置いて尾行しているようだな。ギアもあるわけだし、当然か)

 そんなこんなで道具をまず見つけていたイアは、ある道具の前で立ち止まりました。それは赤と黒の布地で折られた人形で、種別は一般的には、

 スケープゴートフィギュア(身代わり人形)

と呼ばれる物でした。それは何かあったときに身代わりになるか、自分の形見を入れて置いて、もし何かあった時に当人だと思って大切にして貰う、特殊な人形でした。

イア:(・・・・・・・これが必要な時が来ないといいけど、でも、生命保険はかけておくべきかな・・・・・)

テル:? イア、その人形買うのか? 君を作った本人だから“野暮なツッコミ”はしないでおくけど、その人形を要する時が、こないといいな
イア:ええ、でも、保険はかけておくことにします

 そういうと、イアは目線を人形の上の棚から吊されていた“赤と黒のストライプ柄をポーチ”に移しました。どうやらこの赤と黒の人形とセットで売られている収納ポーチのようでした。

イア:このセットのポーチと一緒に買います
リン:あら、可愛いね、それ
レン:(リンはそういうの好きなんだ…今度の誕生日はキマリかな)

テル:よし、わかった。こちらの買い物もちょっとあるから、全部まとめて籠に入れて、会計を済ませよう

 そういうと、イアの人形とポーチ、テルとリンの魔法の素、レンの万能紐(剣の柄用)を全部同じ籠に入れ、テルが会計を済ませたのでした。

 そして、お店から出た店先で、各自に買った物を手渡すと、イアはレンにナイフを貸して欲しいとお願いしました。

レン:ナイフ? 何に使うの?
イア:この人形の中に込めておく物を採取するためです
レン:そうなの、解った。はい、これ

 そういうとレンは、武器用ではなく女の子でも扱える小型の便利ナイフをイアに手渡しました。すると、イアは頭を少し前に屈めて、右手でナイフを持つと、自分の薄黄色の後ろ髪の先“5cm”を切り落としたのでした!

レン:ちょっ!
テル:!
リン:イアちゃん、何やってるの! 髪は女の子の命でしょ!

 しかしイアは表情を変えず、平然として、左手に握られている“切り取った後ろ髪5cm分”を、人形の背に付いているチャックを開けて、中にしまい込むと、チャックを閉じ、また人形をポーチにしまいました。

イア:これでいいです。私に何かあった時は、これをスケープゴートにするか、これを私だと思って大切にしてください
リン:何縁起の悪いこと言っているの! そんな時、来るわけないでしょ!
テル:・・・・・・・わかった。“何かあった”時は、私がそのポーチを受け取る事にする。それでいいね?
イア:はい、お願いします。でも、テルさんならわかりますよね、その人形の“本当の使い道”…
テル:・・・・ああ、十分把握しているよ。でもそう言うときが来ない事を私も願っているよ
イア:優しいんですね
テル:君を作った者として、当然のことだ

リン、レン:(??????)

 こうしてイア達の買い物の1件目は終わり、一行は近くのオープンカフェに立ち寄り、昼食を取ってました。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends!第2期 第10話 接触

☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第10話です。

☆遂に動き出したイアを取り巻く人たち。そして接触。さぁどうなるのでしょうか!

☆更新が遅くなりまして申し訳ありませんでした。

***

私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”~第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh

同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”~第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日~2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1

更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A

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hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct

☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5

☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1

☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf

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投稿日:2012/10/25 22:21:18

文字数:3,964文字

カテゴリ:小説

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