珍しく、夕食の直後俺達はブリーフィングルームに集められた。
何でも、至急隊員達に伝えることがあるそうだ。
「隊長。」
「……何だ。」
「なーんか今日調子悪くねぇか。今日出撃できなかったのがそんなに悔しいか?」
「……違う。」
麻田が俺の心境を無視したような発言を連発してくれる。たのむから少しは静かにしてほしい。かといって俺のすぐ隣に座っているのだから無理もない。基地にいようが空にいようがとにかく口を閉じてはいられないやつなのだ。
だが今だけはそっとしておいてほしい。正直、俺はまだ自分の一糸纏わぬ姿を見てしまったミクに顔向けできない。
「あー皆静かに。今から臨時ミーティングを始める。」
少佐が入ってきて教壇のような机の前で止まる。
「こんな時間に皆に集まってもらったのは、実は今日、新たにアンドロイドを配備することとなった。いや、実はもう基地にいて外で待たせてある。」
全員の目の色が変わる。朝美なんか目をキラキラさせて期待するの表情だ。
すでに基地にいると言うことは、もしや……。
「おい。入ってきていいぞ。」
少佐のその言葉と同時に、ドアに全員の視線が集中した。
ゆっくり開かれたドアから入ってきたのは、片目が包帯で覆われた細長い体型の男性型アンとロイドだった。その次からミクのような少女型のアンドロイドが三人入ってきた。
隊員達が思わず感嘆の声を漏らした。確かに美しい顔立ちだ。兵器であるか疑う前に、アンドロイドであるかが疑わしい。俺は麻田の顔を見た。こいつさっそく鼻の下が伸びている。朝美も似たようなものだ。
「では自己紹介をしてもらおうか。」
「タイトだ。」
「殺音ワラでーすっ!」
「病音ヤミ。」
皆超個性的な制服を纏っている。もはやコスプレ状態。間違いなく司令デザインだ。というか、殺音ワラと言った少女の何だあのでかいリボン。
「ほら、ちゃんと挨拶しなきゃ。な。」
タイトは自分の後ろに隠れている赤髪の少女に、顔つきから想像もつかないような優しい声でそっと背中を押した。その光景に全員が顔をニヤつかせる。ほんとに軍人かと疑わしくなるような、不抜けた顔。しかし、あの赤髪少女はシャワー室で会った。確か名前は……。
「あっ、うん。呪音、キク。」
「よし。今後彼女らには装備が本土から届き次第、各部隊に配属させる予定だ。もちろん、ミクと同じように、戦闘員としてな。ああ、そういえばお前達にはまだ部屋がなかったな。司令に充電器はもらったようだが。」
少佐のその言葉に皆の視線が鋭くなった。一体、何期待しているのか。
「えっと、あたしとヤミは雑音ミクの部屋に泊まりまーす。いいよねミク!」
「え。あ、まぁ構わないが……いいかな少佐。」
「いいだろう。ミクのベッドは広いしな。」
いいのか?
「キクはひろきの部屋がいい。」
「ああ。そうしようか。頼んでみよう。」
「よし。これで決まりだな。以上で臨時ミーティングを終了する。」
◆◇◆◇◆◇
「うわー結構いいとこ住んでんじゃん! ソファーがーある!」
ワラは私の部屋に入るとはしゃいでソファーに飛び込んだ。部屋の隅には私とワラとヤミのスーツと武器が置いてあった。
「おーテレビがある。二十型かな。どれどれ、あっ! うろたんだーやってる!」
「ワラ。静かにして。うるさい。」
そう言ってるヤミも勝手にパソコン触らないでくれないか……。
◆◇◆◇◆◇
泣きつかれた僕はベットに横たわっていた。
僕は司令の部屋に呼び出され、今日起きたことをじっくり説明された。
ミクに対人戦闘用プログラムをインストールさせたこと、僕の許可なく突然ミクをある事件で兵器として投入したこと、そして防衛陸軍に所属していたキクたちを事件に投入した後ここに配属させたこと。兵器として。
僕は頭に血が上って逆上して罵声を浴びせ続けた。でもあいつは眉ひとつ動かさなかった。
ひとつ気になったのはあいつが僕の戦争に使わない約束だったはずだと言ったとき、これも演習のうちだと言ったことだ。まさかあんな事件が起こることを予測していたと言うのだろうか。しかし、演習とは一体……。あいつは人のいい顔と丁寧語で僕達と接するけど、影でなにをしているのだろうか。
とにかく僕はもうここからミクと逃げ出したい。でもそれはとても無理だ。僕がここから出ることは許されない。もしそんなことをしようとしたら……。
「博士。博貴博士。いらっしゃいますか。」
ドアから声が聞こえた。あれはタイトの声だ。
ベッドから起き上がり、ドアを開けてやるとそこにはタイトとキクが立っていた。
「やあ。どうしたの。」
「ええと、実は……。」
「ひろきー!!」
キクが満面の笑みで、僕の胸に飛び込んできた。
◆◇◆◇◆◇
「さてと。ワラ、ヤミ。もう寝よう。」
「ふぁ~。そーだね。」
「……。」
「いーよねーおっきいベッドで。前のところはホント狭っくるしいとこでさー。」
そういうとワラは司令にもらった制服を脱ぎ始めた。
「ああ、着替えは一応あったかな……。」
「いいよそんなもん。どうせいつも寝るときは下着だし。」
「え?」
私はいつも制服で寝ているが、したぎってなんのことだろう。
「うふぁー気持ちいいー。あんた結構待遇いいねー。あ、充電器借りるよ。コードは持ってきたから。」
そういうとワラは私の充電器にコードをさして手首のソケットにプラグを入れた。
「さ、はやくきなよ。」
「あ、ああ。」
私は部屋の電気を消すとヤミと充電器のコードを手首に挿してべッドの中に入った。
「えっへへー。じゃあさっそくぼでぃちぇーっく!」
「ひゃあっ! お、おいくすぐったいぞ!!」
ワラの手が私のおなかを触ってきた。
「んんー貧乳ってわけでもないみたい。」
「ちょっ、おいそこは……!!」
「ワラ静かにして。あんたこの前同じようなことキクにやってタイトさんに叱られたばかりでしょ。」
「ちぇっ。でもこうやって寝るのってホント初めてー。みんなでひとつのベッドでねるってのもいいね。」
皆がベッドに入ってすこしたって、ワラもヤミももうねたみたいだ。私も少しづつ眠くなっていった。
その時、突然大きなサイレンが基地中になった。その音で私は一気に目が覚めた。
「これは……!」
これは、敵が来たんだ。私はベッドから飛び起きた。格納庫へ急がないと!
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