なりたい自分と、それになれる自分は違うのかもしれない。

              * * * 


お昼ご飯を食べ終わり、レンはゲーム、私は読書をしていた。
私が読んでいる絵本は薄いもので、すぐに読み終わってしまいそうなものだ。
分厚い本も読んでみたいところだけれど、文字ばかりの本はどうも苦手。
前、3ページくらい読んだところで挫折した。


「レンレン!!ちょっとこれ見てよ!」

私は、読みかけの本をレンに押し付ける。
とてもすばらしい場面を見つけたのだ。
レンは訝しげな顔をしながらも、ゲームをしている手を止めて、視線を絵本にやってくれた。

「えっと…。それがどうかしたの?」

「この部分!・・・すっごくロマンチックよね!」

レンは何ともいえない表情で、返事を返す。

「・・・よかったね。」

それからすぐに、ゲーム画面に視線を戻してしまった。
もっと気を聞かせた返事をしてくれるかと思っていたのに、思っていたより冷たい返事でうなだれてしまう。

「もー!乙女心を分かってないでしょう!?」

「なっ・・・『蜜柑が、魔女に魔法をかけてもらい、蜜柑からは足が生えてきました』の文章のどこが乙女心だよ!」

「魔法をかけてもらうところ!」

「ふーん・・・。」

「いいなあ・・・。」

「リン、いっそのこと蜜柑になればいいのに。」

言い返そうかと思ったけれど、やめる。
レンはちっとも分かってない。

「はぁ・・・。」

ため息をつきながらページをめくる。


『足が生えた蜜柑は、友達を作ろうと街に行くのですが、誰にも相手にされません。』

『悲しくなった蜜柑は―――・・・・』


「リン。」

レンに呼ばれて振り返ると、レンはゲームのコントローラーを私に差し出してこっちを見ていた。

「絵本、終わったんだろ?・・・ちょうどこっちも終わったし、二人でやろう。」

私は頷くと、レンの手からコントローラーを取って

「ありがとう」

と微笑んだ。


              * * * 

レンに「構って欲しい。」といえる自分に、なれないけれど。
なれないでいる今は、レンに甘えよう。






ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

なりたい自分。


この後、喧嘩になったりするんですよね。(多分)

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投稿日:2009/08/05 13:56:52

文字数:914文字

カテゴリ:小説

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