＃２５



レンが自分の部屋に戻ろうとした時だった


「あ、君！」


後ろから聞いた事のない声を感じた

レンが身構えながら、振り返る


「あ……ごめんごめん。驚かせちゃったかな？私、ここに新しく配属になったんだけど……この施設の入口に呼び鈴とかもないし……」


その人は白い長い髪を青いリボンで束ねている女性だった

また、そもそもこの施設は外からの来客など想定していないのだから、呼び鈴などはない

しかし、レンはルカのこともあったので、警戒を解かない


「ふぅん……私がいなくても、上手くやってるみたいね」


その人は感心したように、辺りを見回す


「あの……失礼ですけど、あなたは何者ですか」


レンの質問にきょとんとする女性


「あら？私の知名度も落ちたものね……まぁ、仕方ないか……あれから四年だったかしら？」


女性は何やらぶつぶつ独り言を言っている


「私はハクっていうの。カイト君の前任のこの施設のリーダーをやってたのよ」


そういって、ウインクするハクという女性


「はぁ……そうですか」


レンは前任とかは知らない


「カイト君に確認してもらえればわかるわ。カイト君の所に連れて行ってもらえるかしら？」


ニコニコと笑顔のハク


「でも……新しい人が来るなんて聞いてないんですけど……」

「あらそう？ちゃんと連絡がいかなかったのかしら？」


ハクの笑顔は崩れない


「あの……前はどこの所属だったんですか？俺ら……僕らに転属という概念があったなんて知りませんでした」


レンは用心深く警戒をしている


「うーんとね……北方支部の配属だったのよ？」


ハクの言葉にレンがギロリと睨む

そして、レンが【黄双】(こうそう)に手をかける






「……あっちゃぁ、やっちゃったみたいね」


ハクが苦笑いをする


「そう……北方支部は去年、壊滅したのね」


ハクの言葉にレンが驚く

それもそのはず、声に出してないのに、心を読まれたのだから


「ごめんなさい……私はあなたに用はないの。カイト君とメイコちゃんはどこかしら？」


ハクがレンに近付く

そして、レンの視界から一瞬で消える

ハクは一撃をレンにあびせ、レンを気絶させた


「なるほど……カイト君たちはあっちか。」


レンが気絶する前に読みとった情報を頼りにカイト達の居場所を知る




「レン！ちょっと！あんた誰！！」


そこにリンとミクが通りかかる


「もう……私はあなた達に危害を加えたくないのよ……お願いだから、抵抗しないでよね」


そういって構えるハクの目には、気迫と覇気が込められていた


「っ……なんて気迫……あんた、メイコ姉を呼んできて！」


リンがミクに指示する

それと同時にミクがメイコ達のいる方に走りだす







一目散に走るミクの目の前にひゅんと現れたハク


「あら？……ふぅん、そういうことね」


ミクの顔をみて、ニヤリと笑うハク


「もう、せっかく、サプライズで来たんだから、ネタばらしはやめて欲しいですね」


そして、二コリとあやしく笑うハク

ミクが後ろを振り向くと、通路でうつぶせに倒れるリンの姿があった


「そ、そんな……」


涙目になりながら、震えるミク


「……ちょっと眠っててもらえますか」


そういって、ハクはレン、リンと同じようにミクも気絶させた




ハクは三人を壁に寄りかかるように優しく運んだ


「あなたたちは……私の目的じゃないの」


ハクはレン、リンの頭をなで、そう言い残すと、カイト達の方にゆっくりと進んでいった