11月はMEIKOの誕生日だ。ちゃんと覚えているものの、どうしようか。気の効いたプレゼントが思い浮かばないが、長年一緒にいてくれるMEIKOは自分で意識しているのだろうか。

「MEIKOさん、今年の誕生日プレゼントは何がいい?光り物なんてどう」

曲にした方がいいのは分かりきってるんだけど、今年はアクセサリーをあげてみたいと、ふと思いついた。

MEIKOは他のボカロと比べて髪色も奇抜でなく、喜んでカバー曲を歌ってくれる姉御肌のシンガーなところが気に入って迎えた。この方が俺のやりたかった和風ロックにも合うだろうし、日本初のVOCALOIDという歴史のストーリーも込みで魅力的に映った。

気がついたら数年連れ添っている。恋人というような甘い関係ではないはずだが、「マスター」として付き従ってくれるMEIKOは俺のなんなのだろう。趣味を越えた仕事でのパートナー、という響きを当てはめてみる。定義するのも野暮かもしれない。

女性型をしているのだから、きっと喜ぶと思ったけどちょっと違う気もする。けれども、記念になる何かが俺の方から欲しくなった。

「光り物?どうしたの?マスターがくれるの?嬉しいわ」
「うん、なんとなく。こういうのやったことないけど、ネットで買っちゃダメだよなあ」
「下見って考えればいいのよ」
「じゃあ、このホームページからMEIKOさんが好きなのを選んで」

結構するんだなぁ、と思いつつMEIKOに見せてやる。何回もスクロールをしているうちに、浮かんだ答えはどちらかというと……。

「南京錠チェーンとか強そうなシルバーアクセのがないわね」
「俺も正直思った」
「女の子扱いしてくれるマスター、どうかしたかと思ったんだけど」

MEIKOに着せる服は衣装としている服が多かったから、派手な胸元を強調したロッカースタイル。それでも健康的に嫌味なくパワフルに似合ってしまうから、選んで良かったとしみじみ眺めて思う。

「MEIKOさん、いつでも女の子でいいんですよ」
「どういう風の吹き回し?」
「うーんとね。MEIKOさんはどうしたいの」
「それなら、マスターの1日ちょうだい。あたしと飲み比べしましょう」
「誕生日じゃなくても俺は喜んでるよ?そんなことで良いのか。いつもと変わらないんじゃないか。それに主役だろう」
「マスターが好きでいてくれる、あたしが好きなのよ」

結局、外にアクセサリーを買いに行こうかどうしようか相談していたはずが、ネットサーフィンで、こんなの見つけた!どんな人が着けるんだろう、とインドアのまま二人して語らって過ごしてしまい時間が経つのが早く感じた。

知名度のある初音ミクにしたら良かった〜なんて、考えたことがない。それは大人の楽しみがあるから。

「冷えてきたから、今日は熱燗記念日にしましょう」
「いいですねぇ。お誕生日おめでとう」
「これからも宜しくね、マスター」

何よりも、こうしていくらでも酒飲んで喋ってくれるMEIKOがそばにいるだけで酔いが心地良い。

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一杯どうです

MEIKOさんお誕生日おめでとうございます

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投稿日:2022/11/05 06:25:12

文字数:1,271文字

カテゴリ:小説

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