「・・・・・えっとー、これ・・・今更?」

リンは自分の手の中にある楽譜をまじまじと見つめた。

横では・・・ミクの笑顔が引きつっているのが見える。
ルカはすでに気分が沈んでいる。
まるで山奥で遭難し、食料も何もない状態になった人間のようだった。

その3人の目の前では、顧問の教師、「カイト」が笑顔でたっている。
リンは怒りを通り越し、少しあきれてしまった。

その楽譜は、今から約4週間後に行われる合唱コンクールの、
自由曲で歌う曲であった。
大会は2種類あり、1つは以前に発表された課題曲、それと自由曲を1曲。
もう1つは、自由曲を2曲発表する。

ミクは怒りのこもった声でカイトに怒鳴り散らす。

「せっ、先生っ!!どうするんですか、
 大会はあと1ヶ月もないんですよ?!私達3年生はいいとして、
 他の後輩、それに臨時部員の男子達はどうするんですか!
 こういうクセは、直しなさいって去年からいってるでしょう!?」


反面カイトは、穏やかな表情で返す。
この、のん気な性格はいつ直るのだろうか・・・まったく。
リンは心の中で吐き捨てるように呟いた。
なぜこんないい加減な人間が、重要な部活の顧問に・・・。

「大丈夫、君達ならできるって。
 後輩、臨時部員も、去年より多いし、選曲に悩んじゃって~。
 で、これはドイツ語の混ざった歌詞で、
 日本語に訳せてないんだよねー。でも――――、」

気の抜けた声で喋るカイト。こちらの怒りは高まるばかりだ。


そして、カイトの驚きの発言に、3年部員全員の表情が固まる。




















「――僕、ドイツ語、まったく読めないんだよね~。」












「―――――は・・・?!」





全員口を開け、ぽかんとしている。当然だろう、
なぜならこの自由曲を選んだのは、「読めない」といった彼なのだから。
 一体この教師は何がやりたいのか・・・ふざけているのか・・・?!
全員の怒りはピークに達する。
そして、ミクがふざけるな、と言わんばかりに
殴りかかろうとした瞬間―――。





「まぁ、みんななら読めると思うからぁ~、頑張って下さ~い♪」



そして手をポムッとあわせ、
「はいっ。それでは、かいさ~~~ん。
 あ、臨時部員と後輩にも渡しておいてね~、その楽譜。」

カイトはしっかりしない足取りで音楽室から退散してしまった。
再び全員の表情は固まる。

しばらく、沈黙が続く。








「―――・・・で、どうする?これ。」

沈黙を破ったのは、ルカ。
怒りで楽譜が少しグシャっとなってしまっている。
続けてリンが口を開く。


「この期間で、こんな難しい曲・・・皆で、できるのかなぁ。
 ・・・ドイツ語。」


リンがその言葉を口にすると、ミクは再び怒りで顔が赤くなっていった。

「あの教師・・・!!人事だと思って無責任すぎる!
 あれでも顧問・・・否、指揮者なのよ?!その本人が言葉を読めなくて、
 指揮ができるわけないよ!
 あの教師、特別指揮が上手いわけでもないのに・・・。ああ、もう!」





  チッ、チッ、チッ、チッ・・・




また沈黙のときが流れ、
時計の秒針の動く音だけが音楽室内に響いていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

合唱コンクール①渡された楽譜

私が最近経験した合唱コンクールについて、
短く小説にしたものです。
まぁ、ミク、リン、ルカはおいといて・・・
顧問の先生カイトは、今の顧問の先生の性格そのまんまです。(笑)
「ドイツ語よめません。」って言うシーンは、
あれは・・・実話なんです。・・・本当です。②に続きます^^

閲覧数:236

投稿日:2010/09/07 19:05:47

文字数:1,366文字

カテゴリ:小説

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  • 初音ミミック

    初音ミミック

    ご意見・ご感想

    えーーー!!!
    まじ!!?ドイツ語!?エヴァンゲ●オンのア●カさん!!?
    恐ろしい、それ。

    2010/09/08 21:55:42

    • かたつむり

      かたつむり

      うん、恐ろしかった。
      あの時楽譜渡されて、正直ブチ切れた・・・。

      エ●゛ァのア●カ!?そうかも?!←

      2010/09/13 14:36:02

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