12月24日、午後5時に優希は玄関の扉を開けて、
「カイト・・・、今から出かけてこい」
開口一番に言った。
「今から、ですか?」
「・・・・・大体、15分くらいだ・・・」
「うーん・・・わかりました。何か買ってきますか?」
「・・・ダッツの抹茶味で。」
 カイトは歩いて2分ほどの、小さなコンビニに入る。少し考え、ダッツのグリーンティ味と雪○大福を購入し、ある広い敷地を持つ、大きなマンションに向かった。
「あ、カイ兄だ!どうしたの?」
「様子を見に来たんだよ。これお土産。調子どう?」
 カイトはビニール袋から雪○大福を取り、金髪の少年少女に手渡す。
「僕らのことは心配しないで。・・・って言っても、信頼できないかな」
「そんなこと無いよ。2人とも、すごく上手になってるじゃないか。後は落ち着いて、分量とか間違えないようにね」
「えへへー、頑張るね!あっそうだ、カイ兄忘れ物だよ」
 少女はカイトに、紙袋を差し出した。
「え・・・あ!プレゼント!」
「カイ兄こそ、落ち着きなよ」
「あはは・・・ありがとう。リン、レン」
 リンとレンから優希に渡すためのプレゼントを貰い、来た道をかけ足で戻る。5時17分には、家に辿り着いた。
 インターホンを押して、しばらく待つ。
 1分待ったが、何も起きない。
「あれ?」
 連続でインターホンを打ち込んだが、扉は何とも反応しなかった。
「いないのかな、でもまさか・・・」
 普段使っている鍵を使って入り、中を見た。全ての部屋の電気が消されている。灯りは点けずに、慣れた足取りで、台所へダッツをしまいに行く。
 その足でリビングまで行って、カイトは状況を理解した。
 部屋には何も仕掛けられていなかった。
制服はハンガーにかけられていた。
 テーブルに1枚の、B5サイズの紙が置いてあった。
 そこには綺麗な細い字で『 18時 にこにこ商店街 』と書いてあった。
 誰が如何見ても、それは置き手紙だった。
「・・・ああ、成る程」
 独り呟くと、カイトはゆっくりと出かける用意を始めた。白のロングコートの上から厚めのジャンバーを着て、毛糸の手袋もはめる。目立つように、最後に青いマフラーを巻き直すまでに、たっぷり3分の時間を使った。
 着込んだカイトは施錠もしっかりと確認して、のんびりとした歩幅で歩いた。やっぱり怒っていたのかな、プレゼントを渡したらちゃんと謝ろうと、そんなことを考えているとすぐ商店街に辿り着き、
「ママ、トナカイの風船欲しい!」「クリスマスケーキいかがですかー?」(カランコロン)「ちゃんと付いて来なさい」「姉ちゃんが殴ったぁ!」『―こちら田中スーパーでは、タイムセールのお知らせを―』「キャハハハッマジでぇ?」(ピリリリリ)「瑛子早くー」「もしもし俺。今広場でさあ、」『―迷子のお知らせをいたします、ただ今―』
 絶句した。

 カイトが普段、夕食などの買い出しに来るにこにこ商店街』は、駅前にあり何でも安く揃うと評判の『甘存デパート』のせいか、人通りの少ない道だ。だが、にこにこ商店街は、イベント時において人口密度約4倍という、特異な数値を叩き出している。異常なレベルの集団興奮状態が発生するこの現象を“にこにこ症候群”と人は呼ぶ。
優希が日常的ここで買い物を済ませていたため、カイトも日常品をここで揃えている。だがまだこの町に住み始めて2ヶ月のカイトがそれを知るには、その年月はあまりに短すぎたのだった。

「・・・え、このナレーション何処から!?て言うか今何時?!」
 カイトは振り返り、時計台を見上げる。かち、と長針が進み、真っ直ぐに7の字を指した。
 現在時刻午後5時35分。にこにこ商店街現在人口2257人。
 優希との約束を守らないとどうなるか、それはカイトが1番よく知っている。
 残された時間は、あと25分。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

聖夜の話【後編】

前バージョンに 続きます。

閲覧数:253

投稿日:2008/12/24 13:54:15

文字数:1,594文字

カテゴリ:小説

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  • 秋徒

    秋徒

    ご意見・ご感想

    時給310円さんへ
    コメントありがとうございます!
    メリクリイヴお疲れ様でした!実は優希の義母と友人の瑛子が名前だけ出演wまさか気づいて下るとは感激です。でも、メインはあくまで優希と兄さん、そして親友のマオ&リンレンです!この5人で頑張りたいと考えています。
    長編は大変だと痛覚。しばらくは短編で細々と潜伏予定ですが、どうかたまに思い出してあげて(図太イ

    ありがとうございました!

    2008/12/24 22:58:10

  • 時給310円

    時給310円

    ご意見・ご感想

    ハッピーエンド最高。やっぱり物語の結末はハッピーエンドがいいなぁ。

    どうもです秋徒さん、読んで幸せになれるイブのお話をありがとうございました。
    個人的にベストシーンは、優希の「ありがとうカイト・・・・嬉しい、嬉しい・・・」
    ここですね! なにこのかわいさ。けしからん(笑)。
    フルメンバー出てくれたのも嬉しいですね。そういえば、六道マオの紹介で何気に使っていただいてどうもでした。
    で、この話、まだ続くんですか? そうですか、続いてくれますか!
    続きも非情に楽しみですが、ひとまずはお疲れ様でした。メリークリスマスです!

    2008/12/24 21:04:06

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