秋風 靡くは 紅の花
土産に欲した 君に
摘み取りて 手渡すことも
出来ずに 散り過ぎ 枯れるを見送った
浮の 陽炎 陰ろふ 暮れ際
夢と見違えるような 朱色
揺れた 袖の中 儚くも枝を
離れた 手は 時を止め 地に落ちることも
叶わず 常磐に舞う
泣声 溶かして 秋風に乗せ
遙かな此方の 君へ
“花は君の 気に入りましたか”
届けば 塚 揺らし 返事を下さい
得ても 老いの瀬 死の瀬に流れた
紅色に 初めて人は振り向く
揺れた 椛の枝 縋る手を解き
只唯 看取る眼は 何色を映す
暮れる季節 暮れ六つ時 隣の彼は誰そ
逢魔の頃と言ふのならば 君の名を呼びませう
黄昏に滲む朱い葉は 真か 君の袖か
現と夢の狭間に立ち 白昼夢の続きを見る
月よ 昇るな 緋色の景色を
影の中に鎖すには 早過ぎる
時雨 願わくは 此の時は流さずに
陰ろふ 面影を 映し続けておくれ
空に散りばめられた 手鏡の中に 紅く
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