その日、結局晩御飯まで御馳走になって帰った。


ケータイを見てみると、憐からの着信が幾つかあった。
そのまま文字の羅列を見ていくと、永瀬さんの名前がある。

「私が帰ってすぐじゃん‥」

彼の気遣いに心が緩む。

しかし、私は彼でなく、憐に電話を掛けた。


「あ、もしもし、咲蘭?今日何してた?」


電話口から少し低い彼の声が聞こえた。

「今日は、お買い物行って、すごくいい人に会ったの」



「いい人?」

「うん、私が落ち込んでたら、相談に乗ってくれたの。
最初に会った頃の憐みたいに」



心が渦巻く。
過去の光と今の苦しさが、私の中でざわめく。


「‥そっか。よかった。

あのね、来週咲蘭誕生日じゃん?

その日、絶対会いに行くから。
お前に相応しい男になって、ちゃんと全部伝えに行くから。


待っててくれる?」



私に相応しい‥?


「どういう‥こと?」


「もう、咲蘭のこと悩ませたりしないから。

街で会った変な男なんかよりも、もっと咲蘭の想いに応えたい。



だから、待ってて欲しいんだ」




涙が溢れた。

永瀬さんの姿が少し浮かんで、沈んでいった。



やっと、やっと憐が応えてくれた。

私の想いが報われて、苦しさが光になって消えていく。



「うん‥わかった。


私、待ってるから…!」



電話口の向こうで彼が微笑んで、電話が切れた。





ライセンス

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抱きしめて Ⅳ


めっちゃ遅くなった第四弾。

やべぇ永瀬さん消える←

誕生日までになんかで出させてあげよう。

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投稿日:2012/01/22 01:40:30

文字数:608文字

カテゴリ:小説

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