鷹臣さんを呼んだ時間が近くなり私は来客用の駐車場で待っていた。背中にはカメラを構えた密佳が張り付いている。
「ねーねー、睦希にゃん、その『旋堂さん』って、どんな人?可愛い系?カッコイイ系?ラテン系?」
「少なくともラテン系じゃないよ…って言うか…やっぱり向こう行ってて欲しいんだけど…駄目?」
「好奇心と探究心の名の下に却下るのです!」
諦めの溜息を吐いた時、見覚えのある車が入って来た。うぅ…何か緊張して来た。と、いきなり携帯が鳴り出し、私は大慌てでポケットから携帯を取り出した。あれ?鷹臣さんから?
「…もしもし?」
「何か背中にくっついてる子が居るけど、俺行って大丈夫?」
「と、言いますと?」
「悪目立ちしてる自覚はあるからさ。」
思わず吹き出してしまった。確かに鷹臣さん目立つよね、背高いし髪長いし、それに…。
「睦希?」
「はいっ!…あの…友達なので大丈夫です…多分。」
「ん、解った。」
電話が切れるのと車のドアが開くのはほぼ同時だった。
「お待たせ、一応事情は海琴から聞いてる。茶道の亭主が居ないんだって?」
「みたいですね…何かすいません、学校に呼び出したりして。」
「気にしないの。で?この固まってるお友達は?」
振り返ると密佳はポカンと口を半開きのまま目をぱちくりさせていた。目の前で手を振ってみるが反応が無い。また落とすといけないので手からカメラを取り上げようとすると、やっと我に返ったらしい密佳が私の両肩を掴んで言った。
「睦希にゃん…君を見くびっていたよ…。」
「え?」
「何ぞや?!この動くお人形さんの様な人は!リアルロンゲ!リアル長身!ちょっとコピーロボットとか居ないの?!」
「随分古いネタ知ってるねぇ。」
「おぉ笑った!睦希にゃん!この人笑ったよ!」
「ぐぇええ…密佳ぐるじぃぃ…。」
10分程して漸く落ち着いた密佳と一緒に講堂へ案内した。気のせいじゃなくて周りの視線がグサグサ刺さる。女の子達は勿論男子生徒まで二度見してる始末だ。居たたまれない気分で居ると向こうから会長がパタパタと走って来た。
「旋堂さん、すいません、急に面倒お掛けして、顧問と部長と更に倉式まで休んでて宛てが無かったもので。」
「随分バタバタいったな、緋織はともかくインフルエンザでも流行ったか?」
「いえ、事故だそうです。」
「事故?…まぁ良い、用具の確認したいけど場所は?」
「こっちです、鶴村、多々良、ありがとう、礼は後でする。」
ピントボケたお礼くれそうだから別に要らない、と心の中で呟きつつ2人を見送った。迷惑掛けちゃったって解ってるつもりだったけど、学校で会えた新鮮さと嬉しさで胸がキュッと温まった。
「キュンキュン中だなぁ~?」
「なっ?!」
「ふっ…睦希にゃん、君が眩しいぜっ!大人の階段を上ったら報告してくれると密佳は嬉しいよ…。」
「無いから!そう言うの全然無いから!」
「え?全く?助手席で転寝して『はっ…今唇に何か…この感触もしや…?!』みたいな記憶は?」
たまに思う、密佳の読んでる本…微妙に古い。
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もっと見る朝の6時過ぎに手を踏まれて目が覚めた。まどろみながら目を開けると、明らかにこそこそと出て行く姿。あの子は確か昨日泣いてた睦希ちゃんよね?トイレかしら?
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電話から30分程経って、私の部屋は実にわいわいと賑やかになっていた。
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「うっうっうっ…ごめんなさ~い。」
「鶴村さん、もう泣かないで。」
どうやら睦希先輩は軽くパニクッて参加者の女の子全員に電話やメールを送ってしまったらしい。自分の携帯に自分でメール送ってる...いちごいちえとひめしあい-27.修羅場を期待した-
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ちくちくと刺さる視線を避ける様に調理室の前を通り掛ると、チョコレートの甘い匂いが漂って来た。
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彩花と一緒に自販機でジュースを買っていると、何やらキャンキャンと甲高い声が聞こえた。見ると鶴村先輩が友達に纏わり付かれている。溜息を吐きながらこっちを見た先輩と目が合うと、何故か先輩は私にバットを手渡した。
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「...いちごいちえとひめしあい-80.蚊帳の外-
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