電話から30分程経って、私の部屋は実にわいわいと賑やかになっていた。

「緋織ちゃんの家って豪邸ね~良いなぁ。」
「うっうっうっ…ごめんなさ~い。」
「鶴村さん、もう泣かないで。」

どうやら睦希先輩は軽くパニクッて参加者の女の子全員に電話やメールを送ってしまったらしい。自分の携帯に自分でメール送ってる辺り、動揺し過ぎな気もするけど、流石に放置も出来ないし、電話では埒も明かず、ついでに他の人達も話を聞きたがって、結局私の家に集合と言う事になったのだ。

「よーしよーし、萌香お姉さんが聞いてあげるから。」
「そもそも何で泣いてるの?」

涙で真っ赤になってる睦希先輩は、最早びしょびしょになったタオルで顔を拭いて、口を開いた。

「あのね…今日土曜日だったから…私本屋に行ったのね。そしたら…さ、参加者の眼鏡男子の人が金髪の女の子と一緒に居たの…。」
「眼鏡男子って誰?居たっけ?」
「あ、真壁さんでしょうか?私の仮パートナーの。」

彩矢さんの言葉にこくこくと頷くと、鞄からデジカメを出して写真を表示し始めた。皆で画面を覗き込むと、確かに金髪の女の子と私からチョコ代巻き上げた真壁さんの姿が写っている。これって盗撮じゃないでしょうか?と言うツッコミはこの際スルー。

「それでね、私、この女の子緋織ちゃんかと思ったの。髪形似てたし…。」

自分では解らないけど、数名はなる程、と言った様子で頷いていた。

「そしたら、いきなり肩叩かれてね、ビックリして振り向いたらエロ本大量に持った旋堂さんが居たの。」
「それはどうなの?!」
「大量って…中々勇気ある行動ね…。」

休日にエロ本大量買いって…鷹臣さん、何してるんだろう。

「またデジカメ取り上げられるかと思ってね…私つい『漫画の資料集めです!』言っちゃって…まぁ正直間違ってないんだけど。…そしたら旋堂さんやけに喰い付いて来て、私の趣味とか色々 聞いて来て…。」
「腐女子に喰い付くのもどうかとは思うんだけど…それで?」
「話してる内に『試しに彼女になってみない?』って、すっごく自然な流れで言われて、つい『はい。』って返事しちゃった…。」

絶句、と言うか何も言えない…。鷹臣さんも鷹臣さんだけど、つい、でOKしちゃう先輩もどうなんだろう?

「これは祝福した方が良いのかしら?」
「でも私リア充なんてなった事無いし、緋織ちゃん交えて泥沼修羅場とか怖いし、見る分には良かったんだけど…。」

修羅場を期待されていたらしい。微妙な空気の中、ノックの音と能天気なお母さんの声が聞こえた。

「緋織ちゃん、お夕飯出来たわよ~?皆さんの分もあるからどうぞ~。」
「取り敢えずご飯にしませんか?それと睦希先輩、私鷹臣さんの彼女とかではないですから、修羅場を期待されても添えません。」
「え?そうなの?ひお。」

しふぉんまで期待してたのね…。溜息と共に私は皆をリビングに誘導したのだった。

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いちごいちえとひめしあい-27.修羅場を期待した-

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投稿日:2011/09/08 18:46:40

文字数:1,221文字

カテゴリ:小説

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