「…ということなの」


私の話を聞いて、レンは困っていた。
そりゃそうだ。無謀な話だ。


「できることなら、君にはやらせたくなかった。
 でもそういうことなら、僕も協力しよう」
「ありがとう」
「あ、でもその前に…」



*



レンの提案により、花畑で花を摘んでおく。
初めてだな、花に触るのは。


「レン。花って、いい香りがするんだね」
「うん。あ、でも逆効果の花もあるよ」
「逆効果って?」
「…においが…」
「あぁ…」
「一応それも摘んどいて」
「おk」



*




『赤ずきん』は、恵まれていた。
いつも仲間がいて、どんちゃん騒ぎ。
狼に襲われても、誰かに助けられてめでたし。

私は嫌われていた。
いつも孤独で、傷つくことに慣れていた。

私は、『赤ずきん』
現代の『赤ずきん』はどんな結末を迎えるのか?


それは、今からの行動にかかっている。





フードを深く被り、静かに扉を叩く。


「すみません」


…正直、自分でもありえないくらい落ち着いた声が出た。

中から、女性が一人出てきた。


「あら…どちらさまでしょうか?」
「林檎、いりませんか?
 おいしい林檎がとれたので、皆さんに配ってるんです」


私は問いには答えず、かごの中から赤い果実を取り出す。


「あら、嬉しい。ありがとう、おいしくいただくわね。
 ところで…後ろの方
「あぁ、こちらは私の兄で、ワインを作っているんです」
「そうなんですか」


その女性に優しい声に若干腹が立ちつつも、なんとか耐える。


「よろしければ、今ここで食べていただけませんか?
 改善すべき点があるかどうか、感想をいただきたいのです」
「あら、そうですか?熱心ですね」


その林檎は、今ここで食べてもらわないと困るんだ。
私がそう望んでる。


「少しでもいい林檎を作りたいので」
「そうなんですか。じゃあいただきます」
「はい…どうぞ」


目の前の女性は、林檎を一口かじる。


「…美味しいです」
「そうですか…それは、よかった」


さぁ、もっと食べて。
そして、感想を聞かせてよ。


「しかもこれ、けっこう甘いんですね」
「えぇ。私、甘い林檎が作りたくて」
「そうなんですか。私も甘い林檎食べたかったんですよ」
「それはよかった。もっと感想はありませんか?」


もっと感想を頂戴?


「見た目も他の林檎に負けないくらい美しいですね」
「そうですか?ありがとうございます」
「私はこの林檎気に入りましたよ」
「そうですか」
「本当にありえないくらい甘くて…?」


目の前の女性は林檎を食べ終わった時、少し倒れかけた。


「おや…どうなされました?」
「何故だか、とても眠いのです…
 あなたの林檎美味しかったから、もっと食べたいのに…」
「そんなによろしかったのですか。
 ということは、美味しい物食べて幸せで眠くなっちゃったのでは?」
「きっとそうね…」


そして蹲った女性に一声かける。


「あぁそうだ、そんなに美味しかったなら奥にいらっしゃる方にも食べてもらいましょう」
「…是非、そうしてあげてください…」


そして、意識がなくなった。


「では、お邪魔して…わーあ、素敵な部屋ですね!」


決してそうは思わないが、とりあえずそう言っておく。


「ん?あんたは?」
「私は林檎売りです。
 おいしい林檎ができたので、皆様に食べていただこうと。
 後ろに控えているのは私の兄です。
 ワインを造るのがとても上手なんですよ」
「そうかそうか。じゃあここに座ってください」
「はい。それでは失礼して…」


近くの男性に挨拶をする。
後ろの彼と共に椅子に座る。


「あら、お客さん?」
「林檎売りのお嬢さんと、その兄だと」
「お邪魔しています」


奥からもう一人女性がでてくる。


「よろしければ、林檎の感想をいただけませんか?」
「すまんな、俺はどうにも林檎は苦手で」
「では僕のワインの感想をいただけないでしょうか?」
「俺ワイン好きなんだ。ありがたく飲ませてもらうぜ」
「私は林檎いただいていいかしら?」
「どうぞ」


二人はそれぞれに手をつける。
そして軽く会話をした後、やはり蹲った。


「…?この林檎、少し変よ…こんなに眠く…」
「このワイン、なっか少し変な味がするぞ…なんだ、この眠気は…」


二人は、違和感に気づいたようだ。
そろそろ潮時か。


「ちっとも変ではありませんよ?」
「よく眠れる、薬が入っているだけで」
「お母様には眠っていただきました」
「…!」
「お前等…何者だ」


私はフードを取り去る。
そして後ろの彼…レンは、マントを脱ぎ捨てた。


「声で気づかないなんて…あれだけ聞いていたというのに、なんて酷い兄様でしょうか」
「やはり、お前等は本当の家族じゃないな」
「お前…『赤ずきん』!?」
「それに…あんたは『狼』ね?」
「ばれちゃあ仕方ない」
「少し、眠っていただこうかしら?」


かごから隠し持っていた花弁を散らす。


「ちょ…これ、ラフレシ…ッ!!」


女性は…姉はラフレシアの臭いに負けて力尽きた。
レン曰く、この森のラフレシアは催眠効果もあるそうだ。


「あんたはしぶとそうだな」


レンは懐から何かを取り出し、兄の眉間に突きつける。


「おま…、それ銃やん!
 てか、銃刀法違反って知ってる!?」
「これ撃ったら、どうなるんだろね?」


バーン、とレンが呟くと兄は気を失った。


「本物なんて持ってるわけねぇし、撃つわけねぇじゃん」


レンが持っていたのは、木を加工し塗りつぶしたものだ。


「さて、復讐は終わったわ」
「じゃあ帰るぞ」


いろいろと調合し、強力な睡眠薬を作った。
きっと一ヶ月は目覚めないだろう。


「せいぜい、夢の中で罰を受けるといいわ」



私はレンと共に、家だったところを後にした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【鏡音リン】赤ずきんと狼サン 5【original】

しばらくほったらかしにしてて申し訳ないです。
ボカロで童話「マッチ売りの少女」はもうしばしお待ちを。

閲覧数:702

投稿日:2013/04/02 18:51:47

文字数:2,464文字

カテゴリ:小説

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  • 雪葉

    雪葉

    ご意見・ご感想

    ちょ、兄さん関西弁になってるwww
    銃やん!ってwww
    大丈夫!リンちゃ・・・・リミナちゃん!
    傷つけられるということは貴方は誰よりも強い人だから!
    次の作品待ってます!

    2012/01/22 13:49:50

    • ゆるりー

      ゆるりー

      あ、関西弁だったんですか。よくわからないまま書いてます。
      リミナは大丈夫です。
      しかも身体能力も並の人間より凄いことになっているとかいないとか。

      ありがとうございます。

      2012/01/22 17:29:29

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